陛下の焦りの正体は
ちょっと短いですが、綺麗にまとまったので。
ミリアちゃんの言葉に国王陛下が焦った理由です。
ミリアの王宮通いは、三日で終わった。元貴賓室、現聖女執務室で用意された資料を読破すると、後は都度御神託を利用すれば良いから不要だと言って。
王宮に伺候する必要が無いなら、無理に聖女に祭り上げなくて良いんじゃないかとミリアが言うし、俺も全く同感だ。さっさとランドール子爵領に帰りたかったんだが。
「船長閣下は唯一無二、護衛が居ないなど言語道断。聖女として準王族扱いならば、我ら近衛騎士を置くことができます。何なら聖女専任の聖騎士団を創設いたしましょう。聖女という建前が無いなら、我らは爵位を返上し平民となってランドール子爵領の自警団に入隊いたします」
近衛騎士は王国きってのエリート、陛下の私兵で全員が王位継承権をお持ちの方々ですよね。それが地方の中位貴族の領民に成ったりしたら、どんな騒ぎになると思うんですか。
脅迫してるんですか。脅迫ですよね。ふざけないでいただきたい。
「オスカー卿、彼らは本気だ。余にも止める理由は無いな」
国王陛下、疲れた顔で何おっしゃっているんですか。
「そもそも船長閣下は、しがない子孫でしかない国王よりはるか上の存在。その御意向に従うは当然。そして忠誠を捧げた相手を護衛するは騎士の本分。どこに問題が有るのだ」
問題だらけでしょーが!
「大量に乗員登録ができたのだ。三親等先まで乗員候補に成れる。欠員については全く心配いらぬ。そもそも登録方法が解明された今、血統による乗員候補にこだわる必要は無い。船長閣下は高位貴族を断られ、平民になって恋愛結婚したいと言明された。その意味が解るか」
え、意味って。
「血統にこだわる必要が無い。つまり、貴族制度や王制を続ける必要が無いということだ。国民全員が平民で構わないということ、つまりは階級社会、封建社会の否定だな」
……正直、理解できません。ホウケンシャカイって何ですか。国民全員が平民って、そんな国、国として成立するんですか。想像できないんですが。
「解るか。このまま王家の統治を続けるか、それとも王国が滅ぶか。その決定権をお持ちなのが船長閣下。どちらにしろ、ミリア嬢をただの子爵令嬢扱いにはできぬ。最も納まりが良い立場が聖女だ。王命で強制はできぬが、考慮していただきたい」
陛下がガバッと頭を下げられた。近衛騎士の皆様も後に続かれた。
国が亡びるって、それがミリアの胸先三寸って、いくら何でも話が飛躍し過ぎだろ。
頭がくらくらしながらデイネルス侯爵邸に戻って、ミリアとテイラムに話したら、テイラムは呆れて、ミリアはぷりぷりと怒り出した。
「ちょっとお話してくる」
軽く言って王宮へ出かけていくミリア。
「まあ、任せておいて。悪いようにはしないからさ。行ってくるねー」
頼むテイラム。貴族関係というか、王宮内の話は俺の手に余るよ。
その日の内に帰って来たミリアは、溜息をつきながら正式に聖女認定を受けることになったと報告してきた。
「さすがは国王陛下ね。相当な狸だわ。一国の主だけあるっていうか、私じゃまだまだ太刀打ちできないわ」
いったい何を話してきたんだろう。聞きたいような聞きたくないような。
とりあえず、ニーナ母さんへの報告はミリアの口からしてくれるかな。父さんも付き添うからさ。
おかしい。近衛騎士に操縦させて、塔載艇で天津箱舟に乗り込むはずだったのに。相変わらず話が進みません(;^_^A
封建社会は終了するのか、代わりの国家体制は用意できるのか。ふふふ、内政パートはもうすぐです。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。薀蓄大好きとスピーディーな話のテンポ、両立がんばります。




