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バルトコル伯爵の諦め

 何故、バルトコル伯爵がマーク君を養子にと言わなかったのか、答え合わせです。

 ランドール子爵家の家族会議で決定したこと。バルトコル伯爵の要請をきっぱり断る。

 ずっと絶縁状態だったのに、キャサリン義姉さんに女伯爵としてバルトコル伯爵家へ戻って欲しいというのが、そもそも厚かましい話だ。

 テムニー侯爵夫人の話を聞いて、情状酌量の余地があることは認めるけど、ここは拒否一択しかない。


 スッキリした気分でバルトコル伯爵邸へ訪問の先触れを出そうとしたら、兄貴からストップがかかった。

「ランドール家とバルトコル家の問題だからな。僕も当事者だ。同席する」


 公式な家と家の話し合いの場合、格下の家が格上の家を訪問するのが礼儀だ。

 ランドール家は子爵、当然バルトコル伯爵邸を訪問することになる。そこにデイネルス侯爵である兄貴が同席するとなると、逆にバルトコル伯爵を呼びつけるのが正しい。

 ただし兄貴は婿養子、デイネルス侯爵家の家督を持っていない。持っているのは女侯爵のリアーチェ義姉様だ。兄貴はランドール子爵家次男の資格で同席するから、伯爵を呼びつけるのは礼儀的に問題ありとみなされかねない。

 リアーチェ義姉様に同席してもらえるなら伯爵を呼びつけて問題ないけど、今度はデイネルス侯爵家が地位を笠に着てゴリ押ししたと悪評を立てられる恐れがある。


 ここまで、テイラム情報です。解説ありがとう。

 高位貴族は礼儀一つで弱みになるから細心の注意が必要って、ああもう、関わりたくないけど、そうも言ってられない訳で。


「でしたら、お隣のテムニー侯爵邸をお借りすればよろしいわ。侯爵夫人は立派な当事者ですもの」

 さすがリアーチェ義姉様。そうですよね。バルトコル伯爵邸とデイネルス侯爵邸、どちらも選べないなら、どちらでもない選択肢を作っちゃえば良いんですよね。


 


 当事者だけということで、テムニー侯爵邸で顔を合わせたのは、カレスン・バルトコル伯爵、テムニー侯爵第二夫人、兄貴とキャサリン義姉さんと俺、合わせて五人だった。


「そうか。仕方のないことではある。今までが今までであるし、無理強いはせぬよ」

 もっと食い下がって来るだろうと覚悟してたのに、伯爵は拍子抜けするほどあっさり引き下がった。


「陛下にな、釘を刺されておったのだよ。チャンスは一度だけだと。断られたらすぐに受け入れろとな。それが王命でオスカー卿を召喚していただく条件だった」

 そうだったのか。だから陛下は、俺に判断を(ゆだ)ねて下さったのか。


「すまなかったな、キャサリン。今更謝罪したところで、私の自己満足にしかならないと分かっておる。過去を許してくれとは言わぬ。ただ、そなたの幸せを願うことだけは許してほしい。もう、バルトコル伯爵家は終わる。寂しくは有るが、肩の荷が下りたのも事実。望むなら、そなたの実の父と連絡を取ることもできるが、どうする。ああ、答えは急がぬゆえ、会いたくなったら言ってきなさい」


 カレスン卿、一息に言い過ぎです。キャサリン義姉さんが目をシロクロさせてるよ。


「それにしてもエザール卿、デイネルス侯爵家はマーク・ランドール君を養子に迎えなくて良かったのかね」

 伯爵が爆弾発言を落とした。何ですと。

 斜向(はすむ)かいの兄貴を見たら、苦笑しているじゃないか。どういう事だよ、キリキリ説明してもらおうか。

「そんな顔をするなよ、そんなつもりは無いから。ただの可能性の話だ」



 バルトコル伯爵は婿養子だから家督を持っていない。持っているのは女伯爵。乗っ取りを避けるため、配偶者と配偶者の実家は後継者に成ることを禁止されている。

 これをデイネルス侯爵家に当てはめると、兄貴と兄貴の実家のランドール子爵家が侯爵家の後継者に成れないことになる。


「キャサリンがバルトコル伯爵家に戻ってくれば、実子のマーク君はマーク・バルトコル伯爵令息だ。エザール卿の実家、ランドール子爵家とは別家になるから、問題なくデイネルス侯爵家に養子に入れるのだよ」


 だからマークを養子に欲しいとは言わずに、キャサリン義姉さんに女伯爵になってくれと迫ったんだそうな。デイネルス侯爵家の後押しを期待できると計算したのに当てが外れたと笑う伯爵は、すっかり吹っ切れているようだった。


「ご心配いただかなくても、デイネルスは侯爵家ですよ。実子が産まれなくても、後継者候補はいくらでも湧いてきます。何なら、王子殿下に臣籍降下していただくことだって可能です。高位貴族の血の濃さは御存じでしょう」

 さらっと言う兄貴は、結婚して長い。今年十二歳になるミリアが生まれる前だから、十四、いや、十五年か。

 昔、宰相閣下が言っていた王家の血を薄くする計画は頓挫だな。もう、無理に出世させられることも無くなるだろうし、王家の姻戚(いんせき)にならなくてすんだのは良いことだと思っとこう。


「キャサリンが女伯爵になれば、オスカー卿はバルトコル伯爵。遠いが血縁も有る。マーク君が居なくとも、第二夫人の子を伯爵家の後継者にすれば良い。すべてが丸く治まる名案だと確信したから、国王陛下に直訴したのだ」 


 いやいや、丸く治まらないよ。カークはツオーネ男爵家の跡取りだし、ランドール子爵家の後継はマーク・ランドールに決まりだ。伯爵家と侯爵家まで手が回りませんから。


 本気半分の雑談を続けていたら、人払いしてたのに、テムニー侯爵家の執事がやって来た。



「ランドール子爵閣下、只今、王家からの使者が到着されました。至急、閣下に面会を求めていらっしゃいます」






   はい? 何事ですか。


 














 姻戚とは、血縁ではなく婚姻により成立する親戚関係です。念のため。


 さて、王家の使者の用件は何かなぁ(笑)




お星さまとブックマーク、嬉しいです。更新、頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 色々前提が崩れる情報来ちゃうのかあ(目反らし
[良い点] 王家からの使者キターーーーー! 兄を介しての姻戚よりも重いことがこれから待ってるとは思うはずもなく…… 出世しといて(させといてby王家)よかったね!!! [気になる点] あっらーー ひ…
[気になる点] いろいろ狙われているのはミリアちゃん、リアーチェ様がどこまで仕組んでいたのか。。。 これで閑話の筈の正月特番に繋がる? [一言] 過去話ちょこちょこ改稿しているんですね。
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