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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第四章 ミリア・ランドールと天津箱舟

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国歌斉唱は国家事業

 ミリアちゃん、天津箱舟の船長、初仕事です。

 皆さん忘れているようですけど、ここには私の母が居ます。国王陛下の土下座なんて、子爵家第二夫人に見せて良いもんじゃないでしょう。

 求む、自重!




「皆様、(おもて)を上げて、着席なさってください。話はそれからです」

 ここは強気で主導権取らないと。天津箱舟(あまつはこぶね)の船長就任なんて物騒な案件、どう考えても権謀術策に巻き込まれる厄介事だよね。国王陛下が形だけでも下手(したて)に出ている間に、上手(うま)く妥協点を(さぐ)らなきゃ。


「これはこれは、なかなか肝の据わったお嬢さんだ。さすがと言わせていただこう」

 陛下のすぐ後ろで平伏していた王太子殿下が、爽やかな笑顔でおっしゃった。良いからさっさとソファに座って下さい。

 近衛騎士の小父さんたち、王太子殿下を睨まなくて良いから。王族と中位貴族なんだから、上から目線で対応していただいた方が自然でしょ。(かしこ)まられるよりよっぽど気楽です。

 小父さんたちも座ってね。ぞろぞろ立ちんぼされたら、威圧感が半端ないんですってば。


「さて、ランドール子爵夫人、理解が追い付いていないとは思うが、しばし御息女をお借りする。この場はあくまで非公式、無体を働くことは無いと国王として誓約しよう。詳しい説明は後程、ランドール子爵を交えて行うが、まずは取り急ぎ確認せねばならぬのでな」

 陛下のお言葉に、ニーナ母さんが蒼い顔で頷いてる。

「畏まりました」

 声が震えてるよ、母さん。



「ミリア・ランドール子爵令嬢。まずは、乗員登録の手順を教えて頂きたい。ここに居る近衛騎士が登録可能かどうか、早急に試したいのだ」

 陛下の御下問に、そう言えばと思い当たる。

「私が船長就任したのは、最先任だからですよね。私以外、乗員登録した人は居ないんですね」


 陛下が苦い顔になった。

「その通り。天津箱舟についての情報は様々伝わっている。乗員の心得もしかり。登録さえできれば、出来る事が格段に広がる。なのに、肝心の登録方法が失伝してしまったのだ。幸い、登録施設は残っている。先ほど子爵令嬢が登録した宮中礼拝堂がそうだ。ところで……」

 陛下の視線が強くなった。真っ直ぐ私の目を見つめてくる。

「貴女は神代古語を理解しておられるのだな。船長就任も、最先任も、きちんと意味が解っていらっしゃる」

 

 そりゃあ、日本語でしたから。でも、どう説明しよう。神代古語ですか。

 転生とか前世の記憶とか、信じてもらえるのかな。


 困惑した私の沈黙をどう取ったのか、陛下が謝罪してきた。

「申し訳ない。詮索はしないと約束しよう。だからどうか、『コッカセイショウ』を教えて頂きたい。神官長の話から歌唱だと推察できるが、どのような歌なのだろうか」

 はいはい、君が代ですね。詮索無しは助かります。問題を先送りしただけとも言うけど。


 残念ながら手元に楽譜は無い。アカペラで歌って音が外れていたらまずいだろうし。

 メロディーラインを伝えるなら、鍵盤楽器が欲しい。キーを押しさえすれば、ちゃんと正確な音が出るからね。

「ホテルのラウンジなら、グランドピアノが有ったりするんだけど」

 キョロキョロ見回したけど、ここは近衛騎士の控室。有る訳ないか。


「楽器が欲しいです。出来ればピアノ、有りませんか」

 前世で校内の合唱コンクール、クラスのピアノ伴奏してた記憶がある。一本指奏法なら、なんとかなるだろう。

「ぴあの、ですか」

 陛下が怪訝そうに言ったとき、天井から礼拝堂で聞いたアナウンスが降って来た。

『グランドピアノ、メーカーの指定を願います』

「え、メーカーって、ヤマハとかカワイとかスタンウェイとか?」


 

 進み過ぎた科学は、魔法と区別が付かないそうだ。

 床に光のサークルが表れて、その上にドーンとグランドピアノが出現するって、どこから転送してきたの。まさか無から作ったなんて言わないでしょうね。質量保存の法則どこ行った。


「おおお」と感動の雄叫(おたけ)びを挙げる小父さんたち。

 コンサートホール用のフルサイズのグランドピアノ。それもヤマハとカワイとスタンウェイの三台。

 ポカンと口を開けている母さん。


 試しに君が代の楽譜が欲しいと口に出したら、ピアノの譜面台に広げた状態で出てきた。演奏用の椅子を追加オーダーして、試し弾きして、即席の音楽教室開催にこぎつけたけど、問題発生。

 なんと、近衛騎士の小父さんたち、日本語の読み書きができないと判明。

 リスニングはできるよ。でも、喋るのはカタコト。君が代の歌詞カードはさっぱり読めず、しょうがないから私が音読して現代語で書き留めてもらった。


 ちょっと待って。読み書きできないってことは、登録用の入力フォーム、私が打ち込まなきゃいけないの。本人入力じゃなくても、認めてもらえるのかな。つきっきりで横から教えるのは有りなの。




 悩むのは後だ。とにかく小父さんたち、君が代歌えるようになって。




 爽やかな笑顔の王太子殿下、テイラム君が影武者してた第三王子のお兄さんだから、アラフォー以上だよね。ということは、国王陛下は還暦より年上かな。

 うーん、もうちょっと若いイメージなんだけど。


 うん、世代交代があったことにしよう。国王陛下は亡くなった第三王子のお兄さん。第二王子は軍務大臣。第三王子が今生きてたら、王弟殿下。

王太子殿下の年齢はミリアちゃんと釣り合いそう。いやいや、遅れて来た第二王子の方が近いかな。


 欲しいと口に出したら、天津箱舟が現物を出してくれます。条件や制限は要確認。これって最強のチートでは(笑)

 ちなみにこの世界、鍵盤楽器が存在してなかったりして。



お星さまとブックマーク、ありがとうございます。次回、オスカー君に連絡がいくかも。

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― 新着の感想 ―
[一言] 君が代には声域トラップと さざれ石トラップが仕掛けられているんだよなあ。成人男性には案外と難しい歌。
[一言] 公爵どころか星の女王の父になるな
[良い点] ミリアちゃん頑張ってますねー 転生抜きにしてもその度胸は只者ではないよ [気になる点] そっかー 王太子殿下は年回りが近いのかー ふーん [一言] ピアノ…というものらしいな…
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