ミリアちゃんと王様
あああ、やってしまった。上書き保存してなかったところがごっそり消えてしまいました。がっくり。
なんとか泣き止んだ小父さんたちは、近衛騎士でした。王宮に似合う煌びやかな軍服は近衛騎士の制服だそうで、礼服になるとさらに煌びやかになるんだそうな。
そんな雑談を交わせるくらいに落ち着いてくれてほっとしたけど、私に敬語は勘弁してほしい。切実にそう思います。
何しろ前例がない事態なので、陛下にご報告しなければならないとのこと。納得です。でも、何でわざわざ私の承諾を求めるんでしょうか。前世の記憶有りとは言え、本当に記憶だけで意識は十二歳の小娘なんですが。
とにかく場所を変えようということで、王宮の廊下を歩きだした。私とニーナ母さんと神官長様を囲むようにして、近衛騎士の小父さんたちが護衛してくれたんだけど。
護衛というより、護送だよね、これ。
体格のいい小父さんたち、ヒザ下まであるマントをバッサバッサ翻しているもんだから、視線を遮るバリア状態。廊下ですれ違う人たちは、サッと壁際に寄って頭を下げて、すれ違うまでそのまま動かない。
多分、隊列の内側に私がいると気付いてないんじゃないかな。頭二つ分は背が低いので、完全に隠れてしまっているし。
曲がるたびに廊下の幅が広くなり、照明のシャンデリアが大きくなった。
通された部屋の第一印象は一流ホテルのラウンジ。広々とした明るい空間に、座り心地の良さそうなソファセットが余裕をもって配置されている。
「こちらは近衛騎士団の休憩室です。違和感なく騎士が集合できる場所ですので、こちらでご容赦ください」
ご容赦も何も、場違いなのは私の方だと思うんですが。
中央のソファに、神官長様とニーナ母さんと並んで座った。休憩室の備品だから毒見は済んでいますと物騒な断り付きで、紅茶と焼き菓子が出てきた。
ご希望があれば何でも取り寄せますと言われたけど、おもてなしは十分伝わっております。
それから三々五々、近衛騎士の皆様が集まって来た。特筆すべきは、国王陛下や王弟殿下、王太子殿下までいらしたこと。
慌てて立ち上がろうとしたけど、そのままでと言われてしまった。
「気にすることは無い。近衛騎士の表向きの任務は王族の警護だからな。我らが動かねば、ここに来られぬ騎士が出てしまう。それでは後で恨まれるからな」
表向き、ですか。聞きたいような聞きたくないような。
緊張しながら待つこと二時間。第二王子殿下が五人の近衛騎士を引き連れて到着した。
「遅れて申し訳ございません。できれば騎馬で急行したかったのですが、騒ぎになると自重いたしました。この者たちを抑えるためにも、馬車で移動いたしました」
そうおっしゃって頭を下げられたけど、何で相手が私なんでしょうか。王族に謝罪されるなんて、心臓に悪すぎます。
「全員そろったようだな。神官長、事の次第を述べよ」
陛下の御下問に、神官長様が礼拝堂での一幕を説明したんだけど。
君が代、歌っちゃ駄目だったんだね。
歌わなきゃ、タッチパネル反応無しで終わってたんだね。
あのタッチパネル、神の意志を伝える聖なる表示板ですか。
駄目押しで神の御神託を受けたから、聖女様ですか。
知るかそんなの。国歌斉唱ってアナウンスしてたじゃないか。あー、卒業試験で満点取るんじゃなかった。王都観光行きたかったのにっ。
「ご苦労であった。事は国の大事、改めて公式発表するまで、ランドール子爵令嬢については他言無用。その日まで、政務に励むように」
「ははっ」
陛下に直接お声を掛けられて、神官長様は感激しきりで下がって行かれた。
「さて、ようやくご挨拶申し上げられますな」
おもむろに立ち上がられた国王陛下。すっと私の正面に移動してこられた。後ろに従う王族の皆様。ぐるりと取り囲む近衛騎士の小父さんたち。
嫌な予感ほど当たると言うけれど、当たって欲しくなかったです。
「天津箱舟の船長就任、心からお喜び申し上げます」
一斉に平伏する皆様方。国王陛下のつむじが見えます。
時代劇じゃ無いっつうの!!
ちょっと短いです。ええん、消えたデーターがぁぁぁ。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




