近衛騎士は驚愕する
おまけその二です。連休明けから、週末更新に戻ります。
感想ありがとうございます。すべて読ませていただいてます。なかなか返信できなくてごめんなさい。
その日、天津箱舟の操縦シミュレーターにて訓練していた近衛騎士は五名。表向きは非番のはずの第二小隊のメンバーだった。
いつものように地上から離陸する手順を操作してると、突然、正面の壁一面に表示された映像がフリーズした。すわ操作ミスかと身構えた彼らの耳に、大音量のアナウンスが響き渡った。
『天津箱舟乗員に、新任登録者一名。最先任と認められました。欠員補充優先順位に基づき、天津箱舟船長に就任されましたことを通知します。乗員候補者のシミュレーション訓練の許可を船長に申請してください。許可されるまで、訓練を中止いたします。繰り返します。天津箱舟乗員に、新任登録……』
近衛騎士は血統により乗員候補となった面々だ。今までは正式に乗員登録できる当てもなく、ひたすらシミュレーション施設で技能を継承するしかなかった。そこに天津箱舟の船長が誕生したのだ。
乗員登録の方法を解明できる希望が見えた。シミュレーションではなく、本物の天津箱舟を操縦できるかもしれない。
先祖代々の悲願が叶う!
大騒ぎにならないはずがない。映像が消えて白一色に戻った壁を背に、五名はシミュレーション室を飛び出した。
表向き礼拝堂と呼ばれている乗員登録施設に急行した近衛騎士たちが見たものは、拝跪している神官長と、何とか宥めて立ち上がってもらおうとしている二人の女性だった。
近衛騎士たちにとって、新任船長となった少女は文字通り救世主。神官長の聖女様という呼び名では到底足りない。そもそも国王は天津箱舟の船長の子孫、ならば少女は国王より上、文字通り女神だ。
誰言うともなくその場で一斉に平伏した。
「我らが主、船長閣下。どうかご尊名をお聞かせください」
「あの、はい。私はランドール子爵家長女、ミリア・ランドールと申します」
これが、今代の天津箱舟の船長と乗組員の邂逅である。
いきなり押しかけて来た小父さんたち(こっちは十二歳なんだから、大人はみんなオジサンで良いよね)が、がばっと土下座した。皆さん、いかにも王宮仕様のきらびやかな軍服を着てた。船長と呼びかけられたから、私で間違いないだろうと返事したら、小父さんたち泣き出しちゃった。
どうすんのよこれ。私は王都観光に行きたいんだけど、今日はもう無理かも。どうしてこうなった。
いい大人が小学生にすがって泣いてます。大人の記憶がある転生者じゃなかったらトラウマ物かも。
多かれ少なかれ、社会構造の地殻変動は避けられません。どう軟着陸させるか、王宮首脳部の手腕が問われるのはこれからです。
ここまで投稿して、66666文字でした。わーい、ぞろ目だー(笑)
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。嬉しいです。




