神官長は驚愕する
おまけです。ミリアちゃんと神官長様とのギャップをお楽しみください(笑)
神官長。その役職は、全国の神官の取りまとめだ。細々とした行政手続きや卒業試験の実務は現場に任せて、一日中報告書の山を決済する日常が続く。
執務机を離れるのは、不祥事の後始末や現場では手に負えない事態の収拾がほとんど。あまり有難くはない。例外は、卒業試験の成績優秀者との面会だ。
満点を取るとグレードアップした問題に進む卒業試験で、全問正解して「上がり」になるのは、ほとんど高位貴族だ。きちんとスケジュールに組み込んであるので、驚きはない。王城の行政機関に勤める平民の子弟も同じく。
それでも年に数回はサプライズで「上がり」の報告がある。将来有望、大抵は中位貴族だが平民だとていないわけではない。希望すれば特待生として王都の中央学園、通称貴族学園への入学が認められる人材だ。
その日、神官長は、久しぶりに「上がり」の報告を受けた。しかも王都の教会で、今からすぐこちらへ来ると言う。
機嫌良く待ち受けた彼は、母娘を引き連れて、王宮内の礼拝堂へと進んだ。
少女が特別な祈祷台の前に立つと、厳かな神の御宣託が下された。子供の将来を寿ぐ神代古語に続いて、いつもながら荘厳な楽の音が響く。
人の世の楽器では再現不可能な音色が、短い旋律を二度繰り返して終了する。その筈だったのだが。
一度目の旋律の後、少女が歌いだした。それも今まで聞いたことが無い旋律を。さらに驚くべきことに、少女の声とぴったり合わせて、複雑に変化した楽の音が響き渡った。
驚きはそれで終わらない。
かつて神の意志を伝えたという聖なる表示板が光を放った。少女は躊躇なく、神聖なその表示板に手を伸ばした。そこで何が為されたのか、彼には良く理解できなかった。
やがて少女の手が止まり、こちらを振り向いた時。
再び、神の宣託があった。
今まで聞いたことのない神代古語。聞き取れたのは、天津箱舟という言葉だけ。
内容を理解できない自分が歯がゆく、そして神との対話を為した少女への畏怖が膨れ上がった。
気が付けば、彼は跪いていた。
それが神に対してか、それとも少女に対してか。彼自身にも分からなかった。彼に分かっていたのは、自分が神の奇跡に立ち会ったという事実だけだった。
「聖なる乙女よ。聖女様に拝謁いたします」
いやー、短いです。でも、これ以上は蛇足かなと。神官長様の驚愕の理由を解説しました(笑)
神代古語は、お経のイメージです。結構メジャーで耳コピで唱えられる人も多いけど、中身をどれだけ理解しているかというと心許なかったり。ネイティブなのはミリアちゃんくらいですからね。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。総合評価21000超えました。やっほい(笑)




