ミリアちゃん 王城へ行く
連休ということで、連投してみました。
ちょっと展開早いかなと思いましたが、バルトコル伯爵編でもたついた反動だと思ってください(笑)
やっぱりテンポが速いと気持ちよく書けます。
大はしゃぎの神官様と、親ばか全開で娘凄いを連発しているニーナ母さん。王城パスして王都観光に行きたいとは言えませんでした。トホホ。
王城から差し向けられた馬車に乗って、トコトコ揺られながら貴族街を移動中。侯爵家から乗って来た馬車が後ろから付いて来ている。帰りの足を確保しとかなきゃだからね。
なんかもうね、軽自動車の後ろから高級乗用車が従っている状態なのよ。末端の役所が普段使いする馬車と侯爵家が普段使いする馬車って、それぐらいグレードに差があった。
神官様が申し訳なさそうにしてたけど、好意で用意してくれた馬車に乗らない訳にはいかないんだって。遠慮したら、高位貴族が「そんな貧乏くさい馬車に乗れるか」って、行政府を侮辱することになってしまうとか。
これはこっちが悪い。私とニーナ母さんじゃぁ、逆立ちしたって高位貴族には見えないもん。相手がリアーチェ伯母様だったら、神官様だってちゃんと対応できたと思うよ。全然気にしなくて良いです。むしろ迷惑かけてごめんなさい。
王城の敷地内に入るのは、ニーナ母さんも初めてだって。馬車の窓から見える建物を、神官様が案内してくれた。
「左手にあるのが国土保全省、隣がゴウドウチョウシャと言って、色々な省庁が入っている建物です。奥に行くと、国軍総司令部がありますよ。右手側の奥に文部省という建物があって、その中に教育庁が入っております」
ふーん、官庁街なんだ。省庁の名前は、モロ、日本の影響ですね。
文部省の玄関で出迎えてくれた神官長様は、髭を生やしたお爺さんだった。雰囲気は校長先生。にこにこしながら、神様にご報告しましょうって言って、建物の中へ案内してくれた。
神官様とはここでお別れ。まだ街角の教会のお仕事が残ってるんだって。わざわざここまでありがとうございました。
神官長様について歩いた廊下は長かった。あとで聞いたら、文部省の建物から王宮内の礼拝堂まで続いていたんだそうだ。
礼拝堂は綺麗だった。神様の像が壁に並んでいて、中央に机があった。演台というのかな。学校の体育館のステージの中央に置いてあるようなやつ。その前に立つように言われて、アレって思った。
机の天板がせり上がって、そこにタッチパネルのようなものが嵌まっていたの。
「この祈りの場は、特別なのですよ。神の御言葉がいただけます。恐れることは何もありません」
神官長様がそう言って、ニーナ母さんと一緒に壁際へ下がられた。
ポーンと音がした。天井からスピーカー越しの声が振ってきた。
『国歌斉唱。皆様、前奏に引き続き、御唱和下さい』
……日本語だった。しかも聞き覚えのある声だった。これって、大相撲の表彰式で流れるアナウンスじゃん! どっからデータ引っ張って来てんの!
重々しい前奏が流れる。多分、賛美歌扱いなんだろうな。教会に入ると、歌わされるんだろーなー。
このメロディー聞いといてダンマリってのは、元日本人として落ち着かんわ。しゃあない、歌うか。
君が代って、短い歌詞をスローテンポで歌うから、間違える方が難しい。懐かしさをかみしめながら歌いきったら、タッチパネルが明るくなった。
浮き出て来たのは日本語で書かれた入力フォーム。上から順に、氏名、住所、性別、生年月日。分割画面にキーボード出てたからポチポチ入力した。
画面が切り替わって、今度は暗証番号の設定。ご丁寧に確認入力もあった。電話番号とメールアドレスは持ってません。ていうか、この社会には存在してないと思うんだけど。何々、確認コードの入力って、ああこれね。ポチポチっと。
確認画面に切り替わって、「次へ」をタッチして、最後に実行を押して完了。
天板の傾きがゆっくり水平に戻っていく。タッチパネルも収納されていった。
はて、これって何の登録だったんだろう。
神官長様に聞こうと振り向いたら、驚愕って顔でこちらを見ていた。あれ、私、何かやらかした?
スピーカーから声が振ってきた。
『天津箱舟乗員登録完了しました。現在、最先任と認めます。欠員補充優先順位第一位、天津箱舟船長と認定致します』
あー、こんなファンタジー読んだこと有ったな。古代の遺物を見つけたら、御主人様認定されるやつ。
ちょっと現実逃避して良いですか。
良くあるSFのテンプレです。ミリアちゃん、馴染みのある入力フォームに、ついつい後先考えないで入力してしまいました。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。楽しんでいただけたら嬉しいです。




