ニーナさん、怒る
胃カメラ飲んで、大腸がんの内視鏡検査を受けました。結果はオールオッケー。下剤飲んで大腸空っぽにしたら、体重しっかり減ってました(笑) 明日からまた仕事です。
「現状が分かったところで、ランドール家としてどうするかですが、ここからは、皆さんで話し合って下さい。まずは、バルトコル伯爵の申し出を受け入れるか断るかですね」
テイラムがそう締めくくった。
「そもそも。バルトコル伯爵は信用できる方なのかしら。マークのお父様が亡くなった時、弔辞を頂いた覚えが無いのですけれど。有りましたか」
待っていたように、ニーナが言い出した。
そうなんだよ。今まで家は伯爵家と絶縁状態だったんだ。普段いくら疎遠でも、冠婚葬祭の時は使者の一人、手紙の一つぐらい寄こすのが親戚付き合いだろう。それが無かった。
実の娘が嫁ぎ先で寡婦になったんだ。家に帰ってこないかって声を掛けるのが普通じゃないか。そうじゃなくても、これからどうするか相談に乗ったり、援助の申し出したりするもんだろ。
「有りませんでしたわ。私が最後に父と顔を合わせたのは、嫁ぐために家を出立する前日でした。絶対に戻って来るなと言われて、当日の見送りも有りませんでした。マークの顔を見たことだって無いはずです」
キャサリン義姉さん、感情が無い声って、怒鳴り声より怖いです。
「そうでしたの。では、お言葉は守らなくてはいけませんね。絶対に戻って来るなですか。フフフフフ」
ニーナ、笑顔が怖いよ。
とりあえず、伯爵から聞かされた夫人たちとの馴れ初めを俺の口から説明した。子育ても伯爵家の流儀に従っただけで、乳母と使用人に任せきりにしたのは悪意があった訳じゃないと伝えたし、キャサリン義姉さんの母親には幸せになって欲しくて手放したと伝えた。
「ふーん。それがバルトコル伯爵の見解と言う訳ね」
そこからの、ニーナの怒涛の追及はすごかった。俺、絶対ニーナとは夫婦喧嘩できないと思う。精神的負荷は戦場以上だと断言できる。戦場を知ってる俺が言うんだから間違いない。
「そもそも、女伯爵と第二夫人の確執を仲裁できなかった甲斐性なし」
「第二夫人にそっぽを向かれた甲斐性なし」
「一目ぼれしたですって。二人も正妻が居るのに不倫したってことでしょ。第三夫人に迎えたから問題ない? 平民暮ししてたのにいきなり伯爵夫人にして、相手の負担をどう考えてるの。周囲の風当たりからちゃんと守ってあげてたんでしょうね」
「真実の愛を見つけたなんて、伯爵はそうでもお相手はどうだったの。平民がお貴族様に口説かれて穏便に断れると思ってるの」
「先代伯爵も先代伯爵よ。平民として平穏に暮らしてた娘なら、最後まで平穏に暮らさせてあげなさいよ。伯爵家に迎えるなら、ちゃんと生まれた時から貴族として育てるべきだわ。中途半端な事してるんじゃないわよ」
「挙句の果てに、本妻と撚りを戻すからお前は用済みだって追い出したのよね。伯爵家とは関係ないところで幸せになって欲しいでしたわね。つまり、伯爵家じゃ幸せにできないってことよね。だったら最初から真実の愛なんて嘯くんじゃないわよ」
「自分が幸せになりたかっただけで、相手の幸せはどうでもよかったのかしら。それは愛とは呼ばないわ。自己中心的な独占欲は、恋って言うのよ。はた迷惑な恋情振りかざして、愛してたなんて言わないで欲しいわ」
私はミリア・ランドール。ひょっとして、私、乙女ゲームの世界に転生したんでしょうか。
いくら家族会議だからって、未成年の子供を同席させるのはどうかと思うけど、マーク兄さんの将来に関わる事だしここは聞いておいた方が良さそう。そう思ってたんだけどね。
今、目の前でニーナ母さんがバルトコル伯爵をこき下ろしているところ。ここに伯爵本人が居なくて、本当に良かったと思います。居たら、HPはゼロになっていることでしょう。それくらいニーナ母さんの攻撃力はすごかった。
娘婿が本妻ほっといて、本妻の異母妹に入れあげたんだよね。それで今、異母妹の娘を跡継ぎにしたいって、横車押してるんだよね。自分の娘に姉妹格差して虐待してたんだよね。虐待までいかなくてもネグレクトしてたのは確定だよね。
え、娘全員ネグレクトしてたの。そっちの方が酷いわ。
設定山盛りなんだけど、確実なのは、バルトコル伯爵が信用できないってことよね。真実の愛を叫ぶ不倫男って、乙女ゲームじゃ頭空っぽのクズ男だし。ざまぁされても仕方ないよね。
ゲームだと不倫相手とその娘だってざまぁ対象になる悪女だよね。
うーん、キャサリンお母さまは絶対悪女じゃないし、ゲームと現実は違うもんなんだ。考えたら当たり前だよね。ひょっとして、伯爵もクズ男じゃ無かったりするのかな。
「大体、どうして娘四人を全員嫁に出したの。一人だけでも家に残して婿を取れば良かったのに」
もっともな疑問を最後に、ニーナが口を閉じた。
言われてみればだ。どうしてなんだろ。
ニーナさんの突っ込み、いかがでしたか。
伯爵の第三夫人、果たして被害者だったのか、それとも悪女だったのか。どちらのパターンでもストーリー作れそうです。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。次回は、ニーナさんの疑問の答から書きまーす。




