ちょっと整理しようか
分かりにくいと感想いただきましたので、ちょっくら整理してみました。
家系図、載せられると良いんですけど、図形って、どうやれば載せられるのかな。おばちゃんにはちょっとハードル高いです。
「ここまでだな」
王弟殿下の一言で、バルトコル伯爵は顔を上げた。
「国王陛下の御前で、バルトコル伯爵がランドール子爵に要望を伝えた。立会人として承認し、会談の終了を宣言する。双方、異存ないか」
伯爵はまだ何か言いたそうにしていたが、黙って王弟殿下に向き合った。貴族の儀礼に則った会釈をする。
俺? 異議の有るはずがない。いい加減疲れたし、伯爵の話を整理する時間が欲しい。
「ランドール中将、軍務大臣として命ずる。無期限休職し、此度のバルトコル伯爵の要望について決着させよ。結果報告を貴族院に提出し、各種手続きの終了をもって復職を許可する。休職に伴い中断する任務については、こちらで調整しておく。以上だ」
軍人として命じられたからには、軍人として振舞わなければならない。さっと直立して敬礼する。
「御意」
上意下達の軍人に、『御意』以外の返答は有り得ない。人を殺せと当たり前に命令するのが軍という組織だ。どんなに理不尽な命令でも、拒否はできない。できないんだけど。
これって、軍の命令に相応しいのか。
「まあ、落ち着け。軍服じゃあ無いんだ、敬礼は要らん。この問題に集中しろと言ってるだけだ。どう決着するかは、陛下のお言葉通り卿の自由だ。伯爵もそれで良いな。陛下に直訴するほど焦っているようだが、今日明日という話でもあるまい」
陛下に直訴、か。公式な国王召喚命令を取り付けたってことだよな。なんでこんな大袈裟なことになってるんだ。聞いてみたいが、今伯爵に尋ねたら、絶対、めんどくさい話が続くよな。
ちらりと後ろを見た。テイラムがニンマリと笑った。
あ、これ、丸投げオッケーの顔だ。
衝撃の会談から三日後。場所をデイネルス侯爵邸に移して、家族会議が開かれた。
領地から馬車を飛ばして来てくれたランドール子爵家、総勢七人。
前当主夫妻の父さんと母さん、俺の第一夫人キャサリン義姉さんと、第二夫人のニーナ・ランドール。
上の兄貴の忘れ形見で今は俺の養子になっている長男マーク・ランドール。
ニーナの子供たち、長女のミリア・ランドールと次男カーク・ランドール。
下の兄貴のエザール・デイネルス侯爵と、リアーチェ・デイネルス女侯爵。それに俺の副官のテイラム大佐がオブザーバーとして参加している。
「まず、情報の共有から始めましょう。本官が説明させていただきます。資料の一枚目をご覧ください」
第三者として司会を買って出たテイラムが、話し出した。
一枚目に載っていたのは、公爵家の家系図。子供のいない公爵が、妹が生んだ甥っ子を養子にしたと図解してある。ちなみに、甥っ子にはAと記号が振ってあった。
二枚目。侯爵家の家系図。第一夫人の息子二人にA、B、第二夫人の息子にCと振ってあった。それぞれ備考が書かれてある。
A 長男。公爵家の養子となる。侯爵家から除籍。
B 次男。サリテムル騎士団中隊長。戦死により除籍。
C 三男。侯爵家後継となる。
三枚目、伯爵家の家系図。第一夫人にD、第二夫人にE、第三夫人にFと振ってある。
D 女伯爵。長女を産む。長女は侯爵家に嫁ぎ、Cを産む。Cは侯爵家後継者。
E 第二夫人。二女、三女を産む。それぞれ伯爵家に嫁ぐも子供は無し。
F 第三夫人。先代伯爵の庶子。四女キャサリンを産む。四女はランドール子爵長男に嫁ぎ、嫡男マーク・ランドールを産む。長男と死別後、子爵家三男オスカー・ランドールと再婚。
「ざっとですが、相関関係はご理解いただけたかと……」
「よろしくてよ、テイラム。ここは身内ばかりです。いつもの調子で話しなさいな。貴方の敬語はかったるくてゾワゾワするわ」
テイラムの言葉をぶった切って、リアーチェ義姉様がおっしゃった。家の家族はみんなびっくりしてるけど、兄貴は諦め顔だ。
「あー、はいはい。じゃあ、失礼してさくさく行かせていただきますね。資料の通り、現在のバルトコル伯爵家には、後継者がいないんですよ。娘四人を全員嫁に出して、生れた外孫は二人だけ。大本命の女伯爵の孫息子は侯爵家に持ってかれてしまって、慌ててランドール家に話を持ってきた訳です」
まあ、ぶっちゃけるとそうなるよな。
「女伯爵としては、侯爵家の孫息子Cの子供に期待したいんでしょうけどね、何しろ孫息子はまだ結婚していないし、子供が生まれても長子は侯爵家の後継確定だから、次子以降になるでしょう。それまで女伯爵の寿命は持たないでしょうね」
「それは分かるが、キャサリンさんには、まだお二人姉君がいるだろう。そちらに期待はできんのかね」
俺もそう思うよ、父さん。でもな。
「残念ですが、無理でしょう。お二人とも、もう四十代ですから」
女伯爵はすでに七十を過ぎている。体が弱いのは相変わらずで、専属医師の治療を受けられる伯爵家に生まれていなかったら、ここまで生きられなかっただろう。
テイラム情報によると、それもそろそろ限界らしい。
「バルトコル伯爵は婿養子で家督を持ってません。後継者がいれば、その後見人として伯爵家に残れますけどね。今のままでは女伯爵死去とともに、ランデス男爵の次男に逆戻り。伯爵家は爵位と領地を国に返上して消滅、領地は王領になるでしょう」
「なぜだね。ランデス男爵家は、バルトコル伯爵家の分家だろう。伯爵自身が後継者に成ればいいのではないか」
「そうもいかないんですよ。家督を持っていない配偶者は、後継者に成れません。お家乗っ取り防止のために禁止されています。配偶者を出した家の者も同じく。ランデス男爵家と第二夫人の御実家がこれに当たります。伯爵家の分家はこの二つですからね」
それにと、テイラムが続ける。
「血筋以外から養子を取るとなると、貴族院の厳しい審査があるから時間がかかり過ぎる。そもそもキャサリン夫人やマーク君が居るんだから、他人は審査に通りませんよ。遠い親戚になるランドール家からなら養子を取れますけどね、エザール卿とオスカー卿は、すでに当主でしょ。他家の当主を養子にするのは、さすがにねぇ」
その無理を通すための国王召喚だったらしい。テイラム情報だけど。
いや、なんで。そこまでしてキャサリン義姉さんと俺にこだわる必要あるか。マークを養子に欲しいって言えばそれで済むんじゃないか。
差し出すつもりは無いけどさ。
今日、花見に行ってきました。天気は良いし、バッチリ満開で桜吹雪が綺麗だし、人は少ないし(笑)
早くコロナが収束して、花見の宴会できると良いな。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。次話、ニーナさんが突っ込みまくる予定。




