王宮訪問 再び
誤字報告、ありがとうございます。
王都の中心、王城の敷地内には、王宮を中心にして様々な公的機関が軒を並べている。国軍総司令部もその一つで、独立した大きな建物だ。
こまごまとした機関が入っている建物もある。ちなみに建物の入り口には、『ゴウドウチョウシャ』という看板が架かっているけど、どういう意味なんだろう。他では聞いたことが無い。
総司令部付きになっている俺の正式な勤務先は総司令部の建物だ。無任所の俺が出向くのは、新しい赴任先の辞令を受領する時と任務完了の報告をする時だけ。あ、昇進の時も顔出ししたな。
王宮には軍務大臣執務室と国軍総司令官執務室があるけど、わざわざ俺が王宮に伺候する理由も必要も無かった。
正面から正式に王宮へ入る。戦勝報告の謁見以来、二度目だ。黒旗で来たこと有るだろうって? あれは緊急事態の軍務で、正式なものじゃないからノーカウント。
入り口で警備していたのは、若手の近衛騎士だった。王宮警備を担当していた近衛兵の姿は一人も見かけない。
そりゃ、いつ本格的な戦争が始まるか分からないのに、平時の片手間仕事をしてられないよな。近衛兵の本分は領地の自領軍の指揮官なんだから。
今まではただの建前だったけど、戦時が迫ってるんだ。奮起するか逃げ出すか、どちらにしろ王宮には残っていないか。貴族街の警備も、今は王都警備隊が担っているらしいし。
テイラムと二人、通されたのは初めての部屋だった。王宮らしい装飾はそこそこで、こぢんまりした(王宮基準のこぢんまりだから、俺の感覚だとかなり広めの)応接室だ。
中央のソファに座り、テイラムはソファの後ろで立ったまま。今日のテイラムの立場は子爵家当主の護衛だからな。
待つことしばし、五人の男性が入室してきた。
二人は近衛騎士で、入り口の左右に分かれて直立不動、護衛、ご苦労様です。
国王陛下と軍務大臣、ちなみに軍務大臣は陛下の弟殿下であらせられます。さすがの貫録。
最後に年配の高位貴族と思しき人物。見るからに高級な服装を、自然に着こなしていらっしゃる。あれ、初対面のはずだけど、なんだか見覚えがあるような。
「子爵、オスカー・ランドール、御前に参じましてございます」
形式的な挨拶を王族お二人にしたところで、侍女の皆様がお茶と茶菓子をサーブして下がって行った。おそらくそれなりの家の二女、三女以下。行儀見習いという名の花嫁修業中なのは、貴族の常識だ。俺でも知ってるくらいなんだから。
「楽にせよ。今日、召喚したのは、これに控えるバルトコル伯爵の要請あってのことだ。伯爵、発言を許す」
上座に座られた陛下が、俺の正面の高位貴族様に話を振られた。
「お許しいただき、ありがとうございます。初対面であるな、私はカレスン・バルトコル、バルトコル伯爵家の当主であり、キャサリン・ランドールの父である。初めまして、婿殿」
ああ、キャサリン義姉さんの面影があるんだ。納得した。でも、今更何なんだ。ずっと絶縁状態だったし、親戚付き合いなんか一度もしたことなかったじゃないか。
陛下の御前で面会ってことは、下手に言質取られたら最後だよな。
思いっきり、顔がこわばった。いったい、何が起きてるんだ。
ワクチン三回目の副反応でヘロヘロです。短くてご免ない。
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