王都へ
更新、遅くなりました。今日は北京パラリンピック閉会式でした。
キリー・オートル侯爵家三男様とゼルム・カース公爵家次男様。なんで近衛騎士のお二人がこの場にいらっしゃるんでしょうか。
そもそも近衛騎士は、国王陛下の私兵にして側近、国の上から数えた方が早い誉ある超エリート、全員が王位継承権を所持している高位貴族の皆様、ですよね。
「久しぶり。活躍は聞き及んでいるよ。各地の騎士団を魔改造して回ってたんだって」
相変わらず軽いですね。今は楽屋裏ってことですね。ところで、マカイゾウって、何ですか。
国王陛下直々の召喚なので、近衛騎士が送迎しても問題ないそうだ。
リタシンテ騎士団との折衝は、ゼルム卿にお任せした。国王陛下からの召喚状を見せたら一発OKだった。
元々近衛騎士は護衛対象の代理権限を持っている。あくまで形式だけど、ゼルム卿が国王代理として召喚状を読み上げている間、団長閣下は下座に控えて膝をついていた。
どこかで見たような気がして、謁見の間の作法だと思い出した。壮麗な謁見の間と手狭な騎士団長執務室の落差が大きくて、なんだか芝居の稽古に見えた。
騎士団長閣下、来たばかりなのに、まことに申し訳ありません。まだ任務を開始していなかったのは、中途半端にしなくてすむだけましでしょうか。
子爵家当主に対する召喚だから、本来は貴族仕様の馬車で余裕ある旅程を組むところだけど、テイラムと俺と近衛騎士二人、全員軍人だし手間と時間がもったいないので騎乗して行くことになった。
「何なら近衛権限で黒旗扱いできるけど、どうする?」
謹んでご辞退申し上げます。国家の非常事態扱いされてたまるか。
王都までの道すがら、幾つかの街を経由した。
戦争景気に沸く街も有れば、壮年の男の姿が見かけられず老人と女子供ばかり目に付く街もあった。街道脇の畑では、どう見ても駆り出された街の住人が、農夫に混じって作業していたりする。
トマーニケ帝国との停戦からこっち、戦争未満、小競り合い以上の戦闘があちこちの国と起きている。まだ全面戦争になっていないだけで、じわじわと戦死者が増えてるし、なんだか戦乱の時代へ逆戻りしそうで嫌な感じだ。
「変に張り切ってる領主が居ると、領民は苦労するよねぇ。戦争なんて、国全体で見たら不経済なだけなんだけどさ、どっかの誰かさんがメチャメチャ出世してるから、二匹目の泥鰌、狙っちゃうんだろうねぇ」
どっかの誰かって、目が笑ってるぞ、テイラム。俺は別に出世したくてした訳じゃないからな。それと、ニヒキメノドジョウって、何の呪文だよ。
「悪いばかりではありませんよ。平和ボケしていた領地軍が使い物になってきましたからね。トマーニケ帝国の政情も一応安定してきたし、そろそろ国内の不満をそらすために外征を再開しそうですし。まあ、いろいろと」
あー、あー、聞こえなーい。そんな国家機密っぽい話題、俺に聞かせないで下さい。
王家の直轄地の行政府や国軍の施設で宿を借り、馬を乗り換えて十日、王都に到着した。
軍人としてではなく子爵家当主の立場で召喚されているのに、国軍の施設を利用って良かったんだろうか。
「これは公務ですから問題ありませんよ。それに、近衛騎士はそれくらいの権限持ってます。それとも、高級馬車を仕立てて、行く先々の領主の館で社交をしながらがご希望でしたか」
分かってておっしゃってますね。それくらいなら、黒旗の方がましです。
王宮へ公式に伺候するとなると、礼服は必須。軍人だから軍の礼装で問題ないんだが、あいにく、昇進してから日が無くて、まだ中将用の礼装を準備してない。
尉官や佐官なら同じ階級の同僚から拝借できるが、中将では無理だ。絶対数が少ないし、俺みたいな若造が軍の重鎮の皆様に気軽に頼めると思うか。
しょうがないから兄貴の所に寄って、貴族の礼服を用意してもらった。王宮に相応しい装いなんて、俺には判断できないから全部お任せだ。
「はー、馬子にも衣裳だね。れっきとした貴族様に見えるよ」
大佐の軍礼服を着こなしたテイラムが、いつものように茶化してきた。
ありがとうな、緊張ほぐしてくれて。それとマゴニモイショウって誉め言葉なのか。なんだか揶揄われてる気がするんだが、気のせいかな。
「そんなに凄まないで欲しいなー。ほらほら、ご免って。」
しょうがない、ま、テイラムだからな。
さて、王宮へ乗り込みますか。
なんだか不穏な世情。王宮内で待ち受けるオスカー君の試練(笑) 次話こそは、伯爵様と御対面シーンへ行きたいな。
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