ミリアちゃんのお父さん
いよいよ伯爵編です。いろいろ面倒なので、数年スキップします。
でもその前に、感想で次男との初対面シーンはと書いていただきましたので、ミリアちゃん視点で書いてみました。短いですが、キリが良いので、投稿します。
誤字報告ありました。負傷兵の後送を、負傷兵の護送ではないかとご指摘いただきました。
これは、ゴソウではなく、コウソウと読みます。前線から安全な後方へ下げるという意味です。誤字ではありませんので、ご了承下さいませ。
私の名前はミリア・ランドール。ランドール子爵家の長女です。ちなみに前世の記憶持ち。銀河系、惑星地球の日本国の住人でした。
感覚としては、大人になってから子供のころを、そんなこともあったわねって思い出してる感じ。
確かに自分の事だけど、今更子供には戻れないと言ったら分かってもらえるかな。今の私は子供で前世の大人に戻れないだから、年齢的には逆だけどね。
そんな前世の記憶の中に、『父、帰る』という言葉があった。わりと有名な戯曲で、何度か映画にもなってたはず。実際に観たことは無いけれど、一般常識レベルで知っている。
ずっと行方不明だった父親が突然帰って来て、蒸発した理由の説明もない。子供たちは、見知らぬ男を父親として受け入れるか反発して追い出すか、あれやこれやの家族劇、だったはず。
はずはずばかりで済みません。なにしろ前世の話で、今となっては確認も出来ないし。
父帰る。この言葉を思い出したきっかけは、父さんが帰って来たから。我ながら安直だけど、仕方ないと思う。二年間音信不通だったんだから。
理由ははっきりしてます。戦争で出征してたんです。
怪我をしていないこと、無事に働いていることだけは、伯父様から伝えてもらってた。でも、父さんからは一度も連絡を貰えなかったので。
キャサリンお母さまは、「手紙も書けないなんて、お忙しいんですね」と心配してました。ニーナ母さんは、「元気だの一言ぐらい寄こしなさいよ」と呆れてた。
ランドール子爵領は王都の南、馬車で一日の距離にある。夜明けに出立すれば、日没までに着くことができるという意味。
父さんは軍人だから、馬を飛ばして半日で帰って来る。すぐにとんぼ返りするか夜も馬を走らせれば、日帰りだって可能だよ。なのに、ずっと王都に留め置かれていて、やっと今日、帰ってこれた。
二年半ぶりの再会は、それはもう、大変だった。前世から修羅場って言葉が浮かんできたくらい。涙、涙で言葉にならず。抱き着いて座り込んじゃった。
父さんが。
大の男が玄関ホールで大泣きしてるんだよ。威厳も何もあったもんじゃない。母さんにしがみついて、「ニーナ、ニーナ」と繰り返すだけ。
あ、母さん、嬉しそう。よしよしって、頭撫でてる。
我が家の力関係を、はっきりと再認識した一幕でした。
ようやく父さんが落ち着いて、お帰りなさいと言えました。マーク兄さま、わたし、そして舌足らずな弟が。
「とうさま、かーく・らんどーるです。おかえり、なさい」
あ、父さんの涙腺がまた崩壊した。
後で話を聞いて、ドン引きした。
いくら戦時とは言え、二年以上、一日も休日が無かったって、どんだけブラックなの。
しかも、臨時の手伝いだったはずなのに、いつの間にか兵站統括に任命されてたって、なにそれ。
最初の輸送隊の部下だったデイネルス侯爵家の領兵は負傷兵の後送でいなくなるし、自分で部下を調達する羽目になったって、うわあ。
最終的に五十人で三万人の補給してたって、一人で六百人ですか。無茶すぎませんか。社員六百人の会社の総務を一人でこなす以上だよね。衣食住全ての面倒見るんだから。
そりゃ過労死レベルだわ。手紙出してる余裕なんて無いと納得するしかありません。
改めて、お帰りなさい、お父さん。ご苦労様でした。
これで下準備は終わったよね。書き残しは無いよね。まあ、有ったら後から回想シーン挟めばいっか。
さあ、伯爵編にレッツゴー(笑)
感想ありがとうございます。しっかり読ませて頂いております。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。頑張ります。




