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貴族階級基礎講座 ミリアちゃんとオスカー父さん

お待たせしました。待っててくださってますよね(;^_^A


今回は薀蓄たっぷりでお送りします。

「さあ、お勉強の時間ですよ」

 キャサリンお母さまがにこにことおっしゃった。

「はーい」

 良い子のお返事をしたのは、マークお兄様と私。そして付き添い役のニーナ母さんが同じテーブルに着いてます。


 これから始まるのは子供向けの勉強会。何で母さんがノートと鉛筆広げて、めっちゃ真剣な顔をしているのかな。付き添いですよね、母さん。



 高位貴族は公爵、侯爵、伯爵の三つ。子爵と男爵は中位貴族になる。合わせて五つが世襲できる爵位貴族。この辺は常識だね。

 準男爵と騎士爵は下位貴族で一代限り。爵位を継げない貴族の子弟や功績を上げた平民に与えられる名誉職で、貴族の特権はほとんど無い。父さんも騎士爵だったんだって。

 一代限りの爵位には、王族だけが授けられる大公位がある。大公は王族と貴族の中間で、ぶっちゃけ、どちらでもない中途半端な名誉職。だから世襲は許されないんじゃないかなって思う。


 国王陛下に叙爵されたのが直参。爵位の上下はあるけれど、陛下直属という点で法律上の権利は同等らしい。

 あれよあれ、江戸時代の旗本が、将軍の直参だから大名と同格だって無駄に高いプライド持ってたやつ。大名の重臣はどれだけ力があろうが、将軍から見たら陪臣だから、格下あつかいされても文句を言えなかったって前世で読んだ覚えがある。


 従属貴族は、上位貴族が陛下の許可を得て創る爵位。

 任命権は上位貴族が持っていて、自身が幾つも掛け持ちしたり、分家に与えたり、理由があれば取り上げたりできる。領地は上位貴族が自領から割譲するんだって。

 前世で言うと、親会社と子会社の関係かな。一応、独立した会社だけど、資本を出してる親会社が人事権握っていて、社長を送り込んだりするような。

 あ、そのたとえだと、直参は自営業になるかも。ちっちゃな個人商店だって、社長は社長だもんね。


「我がランドール子爵家は、元々はバルトコル伯爵の次男が分家してできた従属貴族ランデス家でした。四代目の五男に当たる方が戦功を立て、陛下直々に子爵に叙爵されて、直参になりました。残念ながら本家は後継が絶え、バルトコル伯爵家へと返上されました。改めて別の親族の方が従属貴族として叙爵されたのが、今のランデス男爵家ですわ」


 えーっと、ランデス男爵家と我が家の関係はなんて言えば良いんでしょうか。本家と分家かな。でも、直参と従属貴族だし、直接の血統でもないから縁は切れてるのかな。


 遠い親戚には違いないけど、貴族社会って、ややこしくて嫌になりそうです。



 


「一口に高位貴族と言うけど、やっぱり二通りある。王位継承権を持っているかどうか。言い換えると、ご先祖様が天津神かどうかだよ」

 馬から降りて、腰を下ろしたテイラムの第一声がこれだった。周囲は、思い思いに休憩したり、食事の用意に取り掛かったり、こちらを見ている者は誰もいない。


「え、いきなり神話に飛ぶのか」

「そうそう。由緒正しい氏神様の系譜は覚えておけよ。王家の始祖は、天津箱舟の船長。公爵家は役職付きの管理職船員、侯爵家は一般船員だから」

 

 神々の事を管理職とか一般船員とか、その言い方はどうなんだ。


「天津箱舟はこの地に降り立った。大気組成が生存に適さず、しばらくはテラフォーミングに専念しなきゃならなかった。できる限り生態系を再現して酸素濃度を上げたけど、まだテラフォーミングは完成していない。継続的に天津箱舟の機能を投入しないと、徐々に元の死の星に戻ってしまう。そのため、天津箱舟はこの地を動けないし、定期的なメンテナンスが必要なんだ」


 テイラムが謎の呪文を唱えた。意味の分からない言葉がたくさん出て来て、何を言っているのかさっぱりだ。


「天津箱舟は、天津神、つまり船長と船員しか受け付けない。世襲で受け継がれるけど、遺伝子情報が登録されているから、血が薄くなりすぎると拒否されてしまう。血統を保存するために貴族制度を作り、貴族制度を維持するために封建社会を作った。血が濃くなり過ぎたのは副作用としか言えないな」


 ええと、何を言っているんだ。天津箱舟は、子供の絵本になってるおとぎ話だよな。


「一応、説明したからね。訳わかんないだろうけど、覚えておかなきゃいけないのは二つだけ。神話の「アマツハコブネ」が実在すること。王位継承権を持つものは、天津箱舟の手入れをしなきゃいけないってこと」


 ポンと、肩を叩かれた。いつの間にか近衛騎士のお二人が後ろに居た。


「手入れそのものは祭祀という形で儀式化されているし、王家だけで行われる神聖な秘儀とは別に国を挙げての盛大な祭りになっているから、まず(すた)れることは無い。安心して良いよ」

「楽屋裏の話は、他言無用。まあ、話しても誰も信じないだろうけどね。そのためにわざとおとぎ話にしたようなものだし。なに、天津箱舟の実物を見れば嫌でも信じられるから。楽しみにしてくれ」




 あの、お二人の笑顔がうさん臭くて、信じられそうにないんですが。

 

 俺は何を聞かされてるんでしょうか。


 












 お読みいただき、お疲れさまでした。SFテイストでお届けしました(笑)


 これだけフカシとけば、なじみのある日用品や食品が出て来ても不自然じゃなくなりますよね。いちいちナーロッパ風の物を考案しなくても良いですよね。

 楽をするためには手間を惜しまない怠け者のお冨でございます(笑)


 お星さまとブックマーク、いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] すごいSFっぽい話してる
[一言] ミリアちゃんサラッと旗本とか言ってるけど転生者か文明一巡後とか…?
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] タイヤその他でお馴染みのダンロップは、元々はイギリスが本家でした。 日本のダンロップは住友系列の子会社というかフランチャイズ?でした。 しかし本家?本社?であ…
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