表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/119

行軍開始

 やっとこ出発できました。戦神ミリオタ、色々影響を残してます(笑)


 昨夜、ケーブルテレビでロード・オブ・ザ・リングを見ました。

 いやー、ホビット目線の敵の軍馬って、でかいわ迫力あるわ、これを文章に落とし込めるだけの筆力が欲しいと切実に感じました。

 あと、映画のスケールとそれを可能にした製作費。原作のパワーあってのものだろーなー(笑)

 さすがに軍務となれば、ぐずぐずしていられない。その日の内にパレードをこなし、デイネルス侯爵領へ向かった。

 王都の住民は何のパレードだろうと首をひねっていた。

 何しろ馬が違う。パレード用のスマートな軽馬種じゃない。バリバリの軍馬で、軍仕様の馬具で、威圧感が半端ない。寄り子の近衛兵用に、デイネルス侯爵の屋敷の厩舎で用意されたものだ。

 俺は俺で、何でパレードの先頭を進んでいるんだろうと首をひねっていた。あ、馬は侯爵家で用意してもらいました。


 ちなみに俺の軍服は王都警備隊のままだ。肩に縫い付けてある戦神ミリオタの護符だけ大尉から少佐に替えて、そのまま流用している。子爵家当主の資格で今回の任務に立候補したことになっているから、本来は子爵家の軍服を着なきゃいけないんだが。

 (うち)は地方の弱小子爵家。領地軍なんて持ってません。子爵家の軍服なんて存在しません。

 警備はどうしてるって? 

 領民の自警団頼りだよ。予算の補助はしてるけど、あくまで民間組織なんだよ。軍服じゃなくて制服なんだよ。俺が着る訳にはいかないんだよ。


 東城門を、目を丸くしている部下たちに見送られながら通過した。街道に出てしまえば、後は人目を気にせず馬を走らせるだけだ。


 定期的に休憩を取り馬を休めれば、一番効率的に巡行速度を維持できる。戦神ミリオタの神託が元だと言われてるけど、ちゃんと経験則に裏打ちされた行軍規定だ。

 最初の休憩で、ようやくまともに話ができた。出立の前は簡単な挨拶しかしていない。慌ただしくて、それどころじゃなかったんだ。


 同行してくれた近衛兵のまとめ役は、王宮の入口で案内してくれた大佐だった。デイネルス侯爵家の寄り子の中で最年長だから任されただけだと笑ってくれた。なんでも近衛兵の階級は年功序列で、勤続年数に従って昇進するんだそうだ。

「まあ、ほぼ全員が伯爵家の次男以下の男子だから。爵位で差がつかないし、年齢で差をつけているのが実情だね。警備の任務で功績を上げても、寄り親への恩返しができただけで、公式の戦功にはならないから昇進に結びつかないんだよ」

 

 そうなるのかと納得した。建前は領地軍の指揮官だもんな。自領軍を指揮して戦場で活躍しないと、戦功にならないって、世知辛い。


 翌日の夕方には、デイネルス侯爵領に入った。領境に近い街ですでに幌馬車隊が準備を整えて待機していた。カロテタリア騎士団のホーネット中佐とも再会できた。しっかりお礼を言われたよ。

 そこで近衛兵たちとは別れた。それぞれ役目があるとかで、乗って来た軍馬ごと解散して行った。

 どんな役目かとは聞かない。聞けるわけがない。触らぬ神に祟りなしだ。




 輸送隊の速度は、一番足が遅い幌馬車が基準になる。護衛任務だから当然だ。幌馬車を置き去りにして先を急ぐ理由がない。

 休憩を挟みながら夜はしっかり野営して、軍馬にあるまじきのんびりした歩みを進める。おかげで、行軍しながら言葉を交わす余裕ができた。


「卿は子爵家当主だ、望めば近衛兵に成れるが、どうする」

 俺の隣を馬で並走する近衛騎士、ゼルム・カース公爵家次男様が雑談のついでとばかりに聞いてきた。

 はて、近衛兵は伯爵家でなきゃ、成れないんじゃなかったっけ。それに家には領地軍無いし。


「そんなことは無いさ。領地軍の規模は極端な話、兵士一人でも構わないんだ。領主の裁量に任されているからね。要は自領軍を指揮して独自行動できる階級が有れば良いんだよ。つまり佐官以上だ。中位貴族の当主は、誰でも成れる。まあ、当主なら領地経営や王宮の文官を選ぶか、軍人なら騎士団に所属することが多いけどね」

 ああ、うん、近衛兵って、中途半端な地位というか、伯爵家の冷や飯食らいの受け皿だもんな。


「止めといた方が良いよー。今は平時じゃないっしょ。いざ戦場ってなった時、名目だけの近衛兵じゃどうしようもないと思うなー。大体、どこを寄り親にすんの。ランドール子爵家って、元をたどればバルトコル伯爵家の次男が始祖だけどさ、今はデイネルス侯爵家にどっぷりじゃない。伯爵家と侯爵家、遠い血縁と近い姻戚、絶対もめるよ」

 そうだったんだ、俺の家、キャサリン義姉さんの実家の分家だったのか。

「正確には、分家の分家ね。その縁でキャサリン子爵夫人を娶ったんじゃなかったの」

 テイラムに言われても、知らないものは知らないんだ。その辺は親父と兄貴たちに全部任せてたからさ。


 俺の返事に、テイラムはうーんと唸った。

「この際だから、時間があるうちに、しっかりレクチャーしておいた方が良さそう。どこを理解してないか確認するのも手間だから、初歩の初歩からやり直そう。覚悟してねー」




 どうせ、俺に拒否権はないだろうなぁ。


 お手柔らかにお願いします。





 



  

 次話は、楽しい薀蓄回。


 今日、スマホデビューしてから初めて、PayPayを使いました。この年になっても、初体験ってものはワクワクするもんだと実感しました(笑)



 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 北海道のばんえい競馬を直に見れば軍馬と言うものが どういうものかわかると思います サラブレッドをバイクとするなら ばんえい競馬は重機です
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 何事も最初は分からない事だらけで、何を聞けばいいのか分からないです。 一つ一つ分かる事を増やしていくしかありません。
[一言] 彼は彼の世界の「わらしべ長者」になるのかな?と思いながら拝読しています。 今日も寒波到来。 この季節の国道八号線は冬用タイヤ無しには走れない道、というイメージがあります。 いろいろ気を付け…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ