戦争準備 まずは打ち合わせ
お読みいただき、ありがとうございます。今回から、本編に戻ります。更新頑張ります。
テイラムというイレギュラーがあったものの、予定通り打ち合わせが始まった。
手回し良く、デイネルス侯爵の領地に物資を積んだ荷車と馬が用意されているらしい。俺の仕事は、輸送部隊の通行証兼、護衛部隊の隊長らしい。
お膳立ては全て完了済みで、後は部下に任せて先頭を歩くだけ。誰でもできる、簡単なお仕事です。
「なんだかな。王都警備隊を一時休職してまでする仕事かなぁ」
「いやいや、大事なお仕事でしょ。しっかり撒き餌になって、貴族の皆様から兵糧集めするんだから」
口ではおちゃらけながら、テイラムの両手はせっせと書類の整理をしている。副官と庶務官を兼ねて、今度の輸送部隊に同行してくれるんだそうだ。
俺抜きで色々決まっていくのはいつもの事です。しょうがないだろ、下手に俺が手を出すと、かえって邪魔になるんだから。
「いやホント、オスカー隊長が上司で助かってるからお互い様でしょ。どんどん丸投げしてくれて良いから。文句言わずに好きにやらせてくれる上司って、ホントにホント、貴重なんだよ」
「そりゃどうも」
「馬が合うとは聞いてたけど、破れ鍋に綴蓋かな。そら、これとこれにサインしてくれ。これで今日の仕事は終わりだから」
兄貴が追加で差し出してきたのは、爵位継承関連の書類だった。両手で持って睨みつけても、俺は悪くないと思う。
そりゃあ、仕方ないというのは分かる。子爵家当主になれば自動的に少佐に昇進するから、無理なく輸送任務を拝命できるようになるし、そもそも王命じゃ逆らえない。
だ、け、ど。
気にくわないものは気にくわないんだ。
親父だって、事後承諾でいつの間にか隠居させられるんだぞ。酷くないか。爵位継承ってのは、当主が貴族院に申告するのが筋だろ。
筆圧高めでサインして、テイラムの気の抜けた「終わったよー」の声を聞いて、それから食堂への移動になった。こうなったらやけ食いしてやる。
この館基準の「こじんまりした食堂」は、街で営業している酒場兼食堂のサイズだった。一度に二十人は入るんじゃないかな。
で、何故、皆様方がここにいらっしゃるんでしょうか。
「やあ、さっきぶりだね」
「お邪魔しているよ」
俺の左右を固めていた近衛騎士お二人が、優雅にティーカップを傾けていらっしゃる。
「あ、ご無沙汰してます。その節はお世話になりましたー」
あれ、テイラム、知り合いか。
「そんな不思議そうな顔しないで欲しいなー。言ったでしょ、俺、影武者してたって。お二人は本物の殿下の護衛騎士だったの。学園と学園近くの離宮の送り迎え、ローテーションで三日に一度は顔合わせてたんだよ」
ん? 貴族学園は全寮制じゃなかったっけ。
「いやー、さすがに寮に入ってまで王子様してたら、絶対ボロが出ちゃうって。病弱設定だったから、療養のために設備の整った離宮へ戻れたんだよね。そこらへんは阿吽の呼吸って言うか、学園側のサポートが万全でした」
いや、もう良いから。これ以上、ヤバい情報は要らないです。
さてさて、近衛騎士のお二人はどんな御用でいらしたのでしょうか(笑)
もちろん、女傑様もご在宅ですよね。
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