正月特番 契約結婚の影響力
明けましておめでとうございます。
今回は、特番ということで、ずーっと未来のお話です。
ツオーネ男爵家当主が死去したという情報は、ひっそりと貴族院に届けられた。
享年九十八歳、大往生である。隠居せずにその年まで当主であり続けたというのは珍しいが、地方の吹けば飛ぶような弱小男爵、誰も話題にしなかった。
大事になったのは、翌日のこと。故ツオーネ男爵の一人娘の契約結婚が明らかになったからである。
『男爵家の後継者は、ニーナ・ランドールの血を引く男子に限る』
条件に合う男子は複数いるが、ほとんどが既に他家の当主であったり、隠居済の高齢者だった。
若年層で条件に合うのは、これまた他家の嫡男ぞろい。女子なら何人もいるのだが、男子に限るという条件に合わない。
そうしてお鉢が回ったのは、王家の第二王子だった。
王子殿下を弱小男爵家当主にする。
有り得ない事態だが、契約結婚の条件は破れない。破ると、結婚が無効になってしまう。
当然、ニーナ・ランドールの子は私生児扱いとなり、その子孫は正嫡とは認められない。正嫡でなければ爵位を継承できない。
つまり、何人もの当主とその嫡男、その上、現王家の王子王女が、地位を失ってしまうのだ。
「なんだってこんな厄介な契約結婚の条件つけたんだよ。誰が考えたんだ」
「だよな、せめて男子に限るってとこが無ければ」
「今さらしょうがないだろ。それより、何とかならんのか」
ツオーネ男爵家が、どこかの貴族の従属爵位だったら話は簡単だった。上位の貴族家を王子が継承し、男爵位も併せ持つという形にすれば良いからだ。
あいにくツオーネ男爵家は独立貴族、王家直参という点において、法律上の立場は公爵家と同等なのだ。
爵位は一つの功績に対して、一つしか上げることは出来ない。横紙破りをすれば、悪い前例を残してしまう。
王子殿下の爵位継承の功績によって、ツオーネ男爵はツオーネ子爵に陞爵した。同時に領地替えが行われ、中位貴族という低い爵位の埋め合わせとして、辺境の広大な王領を領地として賜った。
後に、辺境開拓に成功したツオーネ子爵は、その功績により伯爵に陞爵し、高位貴族の仲間入りをした。実力主義の辺境で成り上がった元平民の血が、ツオーネ伯爵家経由で王家に届くまで、五十年かからなかったと言う。
ふう、オスカー君のお話のネタバレを最小限にするために、色々ぼかして書きました。文中でぼやいていたのは、テイラム君の父君のずーっと先の後輩達です。
これで契約結婚の伏線は全部です。読んでいただきありがとうございました。
本年も、お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。




