病弱な元婚約者
前話のネタバラシでございます(笑)
求む、説明!
「ああ、俺な、殿下の影武者やってたんだよ。大変だったんだぞー。礼儀作法はなんとかなったけど、気品とかオーラとか、そんなもん、どうやって身に付けりゃいいのよ。エザールがいてくれなきゃ、誤魔化しきれなかったろうなー」
ヘラヘラと笑いながら、テイラムが言った。
「端折り過ぎだ。まあ、座れ、ちゃんと説明するから」
兄貴をジト目で見た俺は、悪くないと思う。
貴族学園で、兄貴の同学年にリアーチェ・デイネルス侯爵令嬢と第三王子殿下がいらっしゃった。俺と違って優秀だった兄貴はトップクラスの成績を修めていたので、殿下の側近候補(仮)として、御一緒する機会があった。第一王子や第二王子の側近は高位貴族で固められていたが、殿下は第三王子、子爵家出身でも問題無しとされた。
殿下は体調を崩されることが多く、婚約者であるデイネルス侯爵令嬢と兄貴がつきっきりになることが増えた。なんとか卒業にこぎつけたものの、間もなく殿下は病死なさってしまった。
「これが表向きの話だ。実際には、学園入学前に殿下はほぼ寝たきりになられていてな。学園を卒業できなかったとなると、将来に傷がつく。出席だけ稼ぐために影武者が用意されたんだ。公には出来ないが、王家の常套手段だから手馴れていたと言っておこう」
「そうそう、都合が悪くなったら病弱設定で倒れるとか、テストを受けられずに追試にしてもらって、ほどほどの成績を捏造するとか」
これ、聞いたらアカン奴だ。もう手遅れだけどな。はあ。
「それで。何でテイラムが影武者になったんだ」
「あのな、俺の親父、貴族院の木っ端役人なのよ。もちろん平民。貴族の名前や家族構成、爵位関係のあれこれを登録する仕事してんの。たまーにパーティー会場なんかで、お偉いさんの後ろに控えて、近寄ってくるゲストの名前や爵位を耳打ちする仕事もあるの」
なるほどな。お偉いさんが自分の名覚えてくれてたら感激するし、アンタ誰ってされたらがっかりだもんな。無礼だって怒り出すかも。社交的には百害あって一利なしだ。
「覚えておいて損はないから、覚えておけって、俺も子供のころから叩き込まれてたんだけどさー。髪と目の色同じだし、年頃合うし、貴族の名前分かるしで影武者やっちゃったから、しばらく大っぴらに貴族の前に出られなくてねー。十年したら大人の顔になって、よく似た他人でしょ。ほとぼり冷めるまで王都警備隊に行くことになったんだけど、無理なくエザールと連絡取るため、オスカーの同僚になったわけ」
まさかエザールじゃなくてオスカー経由で王宮と関わるとは思わなかったと大笑いされて、俺は複雑だった。
前話の謎を年越し前に解消しようと、短いですが投稿します。プロローグの腹黒兄貴と女傑様の馴れ初めです。こじつけと辻褄合わせのお冨、本領発揮(笑)
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