デイネルス侯爵邸 訪問
WBC日本優勝、すごかったですね。
デイネルス侯爵邸の玄関は、大きな寺院をイメージしています。東大寺とか唐招提寺当たりですね。横に広い開放口に等間隔で並んでいる柱。
普段は中央の扉だけ開けてるんだろうなぁ。
勝手門から入ってすぐは、使用人の領域だ。
屋敷に見合った大きさの洗濯場や物置、使用人専用の宿舎、調理場に食堂なんかが並んでいる。生活に必要なものが一通りそろっていて、これに田畑があったら、ちょっとした村になる規模だ。
高位貴族の屋敷が広大なのはいざという時の王都住民の避難先だから、という建前があるからな。調理場の規模は炊き出し施設に転用前提なんだと。
その少し先が兵士の宿舎。練兵場や軍馬関係の施設もここにまとまってる。
以前は貴族仕様の近衛兵ゾーンと平民仕様の領兵ゾーンに何となく別れていたが、近衛兵がいなくなって、使いたい放題だと言っていた。前に兵舎を間借りしていたテイラムが。
そういや、戦争終わったのに、近衛兵は戻ってこなかったんだろうか。
隣を歩いている兄貴に尋ねたら、自然消滅したと返事が来た。
「制度そのものは残っているが、成り手がいないからな。貴族街の警備は近衛騎士に任せられたし、そちらに流れた。立場があいまいな近衛兵と違って、近衛騎士は王の直臣だ」
兄貴がひょいと肩をすくめた。
「今の近衛騎士は騎士爵で志願できる。ずいぶんとまぁ、基準が下がったものだよ」
あああああ。ミリアのせいですね。なんかすいません。
「それだけじゃない。今はどの家も例のご先祖様の稼業に邁進しているからな。仕事はいくらでもあるから、寄子の子弟があぶれなくて済んでいるのが大きい」
ふむふむ、成程。ご先祖様の稼業って、天津箱舟の職責のことですね、分かります。
ふと後ろを振り返ると、ニーナが馴染みの使用人の皆さんと話し込んでいた。
あっちゃー。これ、長話になるやつだ。どうしてこう、女性の四方山話はキリがないんだろう。
足を止めた兄貴がフッと笑った。
「後で使いをやろう。それまで楽しんでもらえれば良いさ」
本来なら使用人がタメ口をきくなんて許されないが、客人のニーナの希望に応えてくれている。
頼むから本邸では控えてくれよ。ここは使用人ゾーンだからぎりぎりセーフなんだ。本邸でやったら、仕事の邪魔をするだけじゃなくて、無礼を無理強いすることになるからな。
厩舎と本邸の間は広い庭園になっていたんだが、今はそこに真新しい建物が建っている。前に見た時より、さらに増築されていた。
本邸とは違い、彫刻の類は一切ない。シンプルな造りだが、高級建材がふんだんに使われている。
兄貴が小声で話し出した。
「ここは、産婦人科専門の医院として残すことになった。高位貴族の少子化問題が一段落したら、一般にも開放予定だ。天津箱舟の医局を司っていた公爵家は、ウォーター・リニア新幹線王都駅の傍に総合病院を建築したいと船長閣下へ願い出て、許可を貰ったと大喜びだ。我が家との確執は無い」
うわぁ、デイネルス侯爵家が、公爵家の役職を横取りする形になってたのか。
ま、まぁ、ミリアが直接天津箱舟から移設した医療施設だからな。表立っての非難は無かったはずだ。うん。
「ちなみに我が家は、その隣に総合大型ショッピングモールを出店する。小売業界に旋風を巻き起こすからな。楽しみにしててくれ」
そっか、デイネルス侯爵家の職責は小売業界か。
ショッピングセンターならランドール領都のキョウトにあるけど、総合大型ショッピングモールってどんなだろう。
考えても無駄だろうけど、想像を超えてくるのは確かだから、覚悟だけしておこう。それしかできないしな。
ようやく本邸に到着。
相変わらず馬鹿でかい玄関だ。二回りは大きい両開きの扉が、柱だけを挟んでいくつも連なっている。中に入ると、恒例の上級使用人の列のお出迎え。さすがに慣れたよ。
キャアッと可愛い歓声と、パタパタ軽い足音がする。
「ちゃんとご挨拶するんですよ」
奥からリアーチェ義姉様の明るい声がして、「はあい」と幼児特有の高い声が応えた。
こんにちは。オスカー叔父さんだよ。
またまた蘊蓄好きが。可愛い足音だけですけど、ようやくお子様登場です。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。何とか完結できそうになってきました。
この世界線で、続編や外伝を書いていけたらと思ってます。
先ずはマーク君やミリアちゃんの学園モノかな。
せっかくダンジョンがあるんだから冒険物も良いし、遠い未来のツオーネ男爵を継ぐ羽目になった王子様の話も良いな(笑)
リクエスト、ありますか。




