実は俺 ダシでした 今に始まったことじゃないけどさぁ
説明会です。オスカー君が教えられた内容をダイジェストしてお送りします。
さすがに、会談シーンを長々と書くと退屈になりそうなので。
国王サイドには裏話があるかもですが、お冨にはよくわかりません(笑)
陛下のご説明に、ところどころ兄貴や大臣方、該当する公爵家ご当主の補足が入って、その場は解散となった。
もうね、俺が公爵に陞爵すること前提で話が進んで、反論の余地が全く無かった。
そりゃ反論したかったさ。恐れ多くも国王陛下お一人だったら、無駄と分かっていても反論してた。
だけど、部屋いっぱいに参集された国家の重鎮の皆々様相手だぞ。俺に太刀打ちできると思うか。
まあ、説明された国のメリットは了解した。俺は王家に忠誠を誓っている国軍軍人だからな、国家に貢献できるなら否やはない。俺個人の安寧が犠牲になるだけだ。ハハハハハ。
デルスパニア王国の貴族制度で、高位貴族と中位貴族の差の一つに、従属爵位がある。
子爵と男爵は従属爵位になる方。高位貴族は与える方だ。
伯爵家は主に分家に与える。基本的に世襲だけど、世代交代の際は、一旦爵位返上して後継者に新たに叙爵するという手順を取る。
この時に本家の意向次第で返上させたままにできるから、分家は本家に対して『役に立ちますよ、忠誠を誓ってますよ』とアピールしなきゃいけない。
公爵家と侯爵家は、功績を挙げた部下に子爵位や男爵位を与える。
代を重ねて功績を認められ、伯爵に陞爵することもある。結構シビアに後継者を査定されるから、実子を差し置いて有能な養子に後を継がせるのが珍しくない。
まあ、それだけ有能でないと務まらないってことだ。
極々たまに子弟へ伯爵位を与えることも無いわけではないそうだけど、その場合は一代限りで婚姻だって不可。新たに分家を立ち上げることは無い。
徹底的に伯爵家以下と縁づく機会を排除するその姿は、王家に連なる家系は違うと、そんなもんだと思っていた。
違ったんだな。天津箱舟乗員候補の血統を守るためだった。
いっそどんどん分家を増やして外から新しい血を入れて、その上で本家と婚姻を結んでいれば、今の血の濃さゆえの少子化は避けられただろうに。
公爵家と侯爵家は増えも減りもしない盤石の存在で、当たり前すぎて今更誰も疑問に思わない。二千年間そうやってきて、とっくに伝統になっている。
で、だ。俺の役目はその伝統に一石を投じることだったりする。
公爵だって増減が有り得ると形で示すんだ。階級社会の流動化は、市民社会への一歩なんだとさ。
ランドール伯爵領は、グレーン・スミス代官の手腕で発展し続けている。天津箱舟の惑星開発プログラムとやらに従っている順当な結果だそうだが、そんな神代の恩恵を知らなければ、現状は奇跡としか言いようがない。
俺が公爵になれば、伝統に沿っていくらでも家臣に従属爵位を与えられる。公爵家と侯爵家から人材を受け入れて、各家の天津箱舟での担当分野の責任者に無理なく任命できるようになる。
実質的に全ての家を束ねる立場になるから、第三者の俺に任せると都合が良いそうだ。ミリアがいるから、どの家も反発する心配はなし。
中立で他家を従えるっていうなら、王家の出番だと思ったんだけどな。
辺境の未開地は王領だけど、開拓したら開拓者の領地になる。
平民は勝手に開拓して良いんだが、爵位持ちは王家から領地として賜ってからでないと開拓できない。
つまりだ。元未開地のランドール伯爵領を王領に戻したりしたら、盛大に法律違反になる。
開拓するだけさせておいて、何の咎もない相手から成果を奪うだなんて、そんな前例作るわけにはいかない。
社会の規範がひっくり返るんだ。国の横暴が許されるなら、誰が真面目に開拓地を発展させるというんだ。
まあ、今のランドール伯爵領が俺の手に余るのはわかりきっているからな。こうなったら、どんどん従属爵位作って、領地を分与していこう。
手始めにグレーン卿と一緒に来てくれた元近衛騎士の皆さんかな。テイラムにだって押し付けてやる。あとはグレーン卿に任せとけば良いや。
侯爵すっ飛ばして公爵になりそうだって、ニーナにどう言えば良いんだろう。
そりゃあ、王家以外の家をトップに据えたら、主導権争いや不協和音が起きますよね。オスカー君の調整力、最大出力で発揮することになるでしょう。無自覚に(笑)
次話こそ、リアーチェ義姉様の子供を書きたいけど、どうストーリーを持っていきましょうか。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。頑張ります。




