閑話 デパ地下ダンジョンの探索者
ダンジョン。なんてファンタジーな言葉でしょう。なのにお冨が書くと………。
ごめんなさい、薀蓄と設定好きが暴走しました。いつものことです。トホホ。
俺の名前はディック。元国軍兵士で、今はダンジョンの探索者をしている。騎士団が初めてダンジョン調査した時の兵士だったんだぜ。文字通りの最古参だ。すごいだろ。
デルスパニア王国ランドール伯爵領地下ダンジョン、略してデパ地下が発見されたのは、去年の頭だ。
デパ地下が在るランドール伯爵領は、つい先日まで辺境の未開の地だった。
領主の居ない土地はまとめて王領になるんだ。陞爵して新たに出来た伯爵家に下賜される領地だからな、一応、国の調査が入った。で、山の中腹に不審な洞窟を見つけちまった。
一歩中に入れば、人工的な石壁。正体不明の薄明かりが奥まで続く通路を照らしている。
誰がいつ造ったのか、内部構造はどうなっているのか、全体の大きさはどれだけあるのか、その全てが不明。
詳しい調査が必要になったんだが、そのために王領から伯爵領への移行を延期するわけにはいかない。
ここだけの話だけどな、貴族院と国土保全省、それに宰相府が協議して、特例扱いにすることにしたんだ。便宜的に地下ダンジョンと名付けた洞窟について、伯爵領ではあるが、国軍が調査をするってな。
丁度、隣国のタムルク王国と開戦したばかり。
タムルク王国は西側。東のトマーニケ帝国とは反対側だ。それもあって、トマーニケ戦役に参加していた騎士団は、戦争から外されて国内に残ることになった。
俺のいたカロテタリア騎士団もその一つで、デパ地下の調査任務が回ってきたって訳だ。
その後もいろいろあった。マイヅルの港に国軍の駐屯地ができたり、デパ地下が正式にご領主様に引き渡されたり。それで騎士団の調査は、一旦打ち切りになった。
それでな、上の方でどんな話があったかは知らないが、デパ地下の調査を専門に行う奴を募集することになった。それが探索者だ。騎士団内から何人か行ってくれと言われて、それじゃあって応募したんだが。
正直、探索者ギルドってのが良くわからん。
ギルドマスターは平民で、テイラムってお人だ。
ここのご領主様のランドール伯爵様が救国の英雄だってのは、みんな知ってるだろ。国軍大将閣下。その副官をずっと務めてらっしゃるのがテイラム准将。そう、われらがギルドマスターだよ。
平民で准将に出世したのは初めてなんだぞ。元兵士の俺が言うんだから間違いない。
じゃあ、ギルドは国軍なのかっていうと、そうじゃない。探索者は民間人だ。
どうなってるのか、俺には分からん。まあ、デパ地下も探索者もここだけにしか無いからな。これも特例扱いなんだろう。
ダンジョンの仕事は大きく分けて二つだ。
どんどん攻略して新しい資源を見つけたらボーナス。ただし空振りが多いから、ま、博打だな。ギルドが指定した場所で指定の資源を採掘する仕事がメインだと思ってくれ。地道だが、食いっぱぐれは無いぞ。
ビートバンは掘り出せば掘り出すだけ買い取ってもらえる。ギルドの窓口まで運んで来るだけの簡単なお仕事だ。
理屈っぽい話はここまでだ。この講習会が終わったら、実際にダンジョンに入って実地見学。その上で探索者に成りたいって奴だけギルドに登録することになる。
驚くなよ。中は凄いからな。
「いかがでしたか、カーク様。彼がトップ探索者のディックです。ビートバンの鉱脈を発見した功労者です。都市遺跡の食糧庫跡で未知の作物の種子を見つけて来たのは、彼を含むチームでしてね。将来有望ですよ」
「凄いです。僕も大きくなったら、探索者になりたいです」
カーク、グレーン卿が言ってるのは表向きの話だから。ほとんどヤラセだからな。あれ全部天津箱舟の産物だから。
教えるわけにいかないのが、父さん、辛いよ。
オスカー君、キラキラした目のカーク君を前に、頭を抱えています。少年の憧れを潰したくないですからね。
今の段階で、身分とか跡継ぎとかで将来を否定するつもりは有りません。成長して行けば、自然に現実が見えてくると考えてます。
まあ、子供が「大きくなったら宇宙飛行士になる」と言うのに、微笑ましく「なれると良いな、頑張れ」と応えるような感じです。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




