ランドール伯爵領へ 息子よ、ここが……
カーク君を連れてお出かけです。
総合ポイントが24600になりました。久々のキリ番です(笑)
ジャンルを異世界転生にしました。なんと、ヒューマンドラマとSFが同じランキング。どっちにしようか迷わなくて済んでラッキー。
王都からランデア子爵領までは、馬車で一日。そこから半日で妻の実家のツオーネ男爵領だ。ランドール伯爵領ができるまでは、ここがデパ国の有人地帯の端だった。
東の端の元バルトコル伯爵領までは、王都から乗合馬車で二月かかる。デパ国の国土はそれだけ広い。
なのに男爵領は王都からたった一日半で辺境扱いだ。
何故発展が阻害されているのか。
その理由は、ツオーネ男爵領と我がランドール伯爵領を隔てる山にある。この辺りはまだ峠道が通っているけど、どんどん標高が高くなって、万年雪を頂く山脈に連なっていく。
山脈をさければ、いくらでも発展可能な平野が広がっているんだ。ツオーネ男爵家の初代が、何故わざわざ山の麓の丘陵地帯を開拓したのか、謎としか言い様が無い。
山の中の岩塩鉱山が目的だったかもと考えたけど、それにしては全然開発してなかったし。
「一理有りますな。ですが、岩塩鉱山は山の裏側、無人とは言え王領ですから、男爵家としては手を出せません。むしろ、叙爵される前に個人として開拓していれば、鉱山まで含めて男爵領に認められたでしょうが」
同行している我が家の代官、グレーン卿が解説してくれた。俺の隣に並んで座っている息子のカークが、身を乗り出して聞いている。
カタコトと馬車が進んでいるのは、ツオーネ村から続く峠道。整備し直されて、所々に馬車がすれ違うための退避場所が出来ている。石ころだらけだった路面はきっちり平らに均されて、ほとんど振動が響かない。
「多分、男爵になれると舞い上がった初代様が、ルールを知らずに鉱山開発を後回しにしたまま叙爵してしまったか、あるいは初めから岩塩のことを知らなかったか。どちらかだと思われます。領地についての法規に詳しい平民は、そう居ませんから」
確かに。俺も貴族の教養として学園で習った覚えがある。ほとんど覚えてないけど。
当時は爵位持ちになれるなんて思いもしなかったから、適当に聞き流してたなぁ。
「平民なら、王領を開拓して良いの」
「そうですよ、カーク様。ただし、国土周辺の未開発地帯に限ります。ちゃんと領民がいて代官が治めている王領は、領主のいる領地と同じ扱いになりますから」
「うん。分かった」
「あのー、グレーン卿」
「いけませんよ、伯爵閣下。私は閣下の家臣です。主君のご子息に対して敬語を使うは当然。けじめは必要です」
返事を先回りされてしまった。
確かにそうなんだけどさ、公爵家出身のグレーン卿が俺の七歳の息子に敬語って、違和感がありまくりなんですよ。
「慣れて下さい、私は領地を持たぬ一代限りの騎士爵です。相応の扱いをしていただかなくては。閣下も領主に相応しい振る舞いをお願いいたします」
にっこり笑った顔が怖いんですけど。できるだけ善処します。
「父上とスミスさんは仲良しなんですね」
カークがニコニコと言う。
うん、まあね。
峠を過ぎると、眼下に平野が広がる。我がランドール伯爵領だ。前に来たときは一面の草原だったけど、緑の農地が区画整理されているのが伺える。ここからでも見える太めの筋は、報告にあった用水路だろうか。
岩塩鉱山の開拓村に向かう元々の道から枝分かれして、直接平野に降りる道が続く。勾配をなだらかにするために、山腹を斜めに通る道だ。
下りきった所は大きな広場になっていて、何台も馬車が停まっていた。ちょっとした屋台が並んでいる。
「軽食や飲み物、旅に必要な小物や保存食などを扱っています。山越えの最終準備ですね。出発時間によっては、山中泊も必要ですから」
「なるほど」
「休憩されますか。屋台の品ぞろえを確かめるのも、視察になるでしょう」
グレーン卿が横目でカークを見ながら苦笑している。
カーク、馬車から顔を出すと危ないぞ。屋台は逃げないから、落ち着きなさい。
屋台って、ワクワクしませんか。子供のころの祭りの屋台はワンダーランドでした。神社の境内と参道をびっしり埋めてたものです。クジラ肉の串カツ、おいしかったなぁ。
少子化の影響か、最近は歯抜け状態。ちょっぴり寂しいです。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




