第七話 ラジオ体操は体にいい
前回のあらすじ
たのしいぴくにっく
「はぁっ、はぁっ。はぁっ!くっ!どうしてッ!?どうしてなのよッ!?上手くいくはずだったのに!『聖女』に選ばれるのは私なのに!?」
───ドウシテコウナッタ?ナニヲワタシガマチガッタ?ワタシコソガ『鍵』ノホユウシャデアルベキデアッテホカノヤツラガフレテイイモノナンカデハナイ!
「わたシが誰だと思っテルのよっ!私は『聖女』なたりーなノよ!?」
───『鍵』が何故ワタシヲキョゼツシタ!?わたしは、◼️◼️◼️◼️……。何故?ナゼ?ナゼ?なぜ?
「むしゃむしゃばりばりごくん!げぶう!アギャアァァァ!」
───何故わたしハ……◼️◼️◼️◼️・◼️◼️◼️◼️◼️ナノ?
「ぶちぶちぶちぃっ!ばくぅん!むちゃむちゃむちゃ……くちゃ……くわぁっ!」
───オイシイ。オイシイ。オイシイ。オイシイ。オイシイ。オイシイ、、、、ああ、これは私のもの、それも私のもの!この盗人め!ワタシのモノをウバウイヤシイオロカモノドモメェェェッ!
クェント領のカイナック鉱山洞の奥底。その日、鉱山洞ダンジョンの主の命が無惨に食い散らかされた事。多くの冒険者の命もまた同時に食い散らかされていた事。その元凶となった『モンスター』の胸元には食い込んだタリスマンの様なものがあった事。
辛うじてギルドに向けて逃げ帰った斥候がその情報を持ち帰ったのだった。
☆☆☆☆☆
「ギリギリ間に合ったァァァ!」
レベッカ・マグノリア Lv40
HP::621/2470
MP:81/1690
STR:282+100(SLv1)
VIT:247
INT:578
MID:612+500(B.SLv5)
TEC:324+700(SLv7)
思わず朝日に向けてガッツポーズを決め込む私。ただいまマグノリア領にあるダンジョンの一つ、ドーラ洞窟から狩りを切り上げて朝日を眺めている真っ最中。
「おつかれーい。しかしまぁ、何でまたこんなに大急ぎでレベリングなんてするんだか……。つーか、最初の予定はLv35だったろうが?」
「ちょっと隠蔽スキルが取りたくて……」
「……ちょっと待て。斥候でもねえのに何でお嬢が隠蔽スキル欲しがってんの?」
「……乙女の秘密という事でここは一つ」
「俺に契約と同時に踏み倒しを匂わす発言した奴が言うと説得力が違うな!?」
「いやぁ、それ程でも」
「皮肉ってんだよ、クソがッ!」
それでも私に付き合ってくれてるレイ様マジ天使。それにしても烙印の事ってそんなに厄介な問題なのかなぁ?どうも私の認識してる事と、レイの認識してる事と微妙にズレてる気がしてならないんだけど。
「タイショー、弄ばれてるねー」
「お嬢様は中々な策士ではないですかね?」
「ギャハハハハ」
ステキな評価ありがたい事ですが、これでも内心心臓バクバクもんです。後、レイ様。そんなに肩を掴む手に力を入れなくても逃げません事よ?私が逃げた所であなたなら数秒経たずに私の首でフットサル出来ますよね?
それにしてもほんっと焦ったわぁ。私がこうまでひたすら頑張ってたのは急遽選定の儀が半年も早まった所為である。なんでも、聖女候補に挙がった少女達がことごとく行方不明になったり無残な死を遂げてしまった為、聖女の儀を早急に執り行う必要が出て来たのだと言う。
ただでさえ十輝星の聖女を求める声が王都から上がっており、本来2年後に行われるのが1年後になっていたと言うのに。まったく、なんて傍迷惑な話だろう。
そんな訳で某フィットネスゲームすら投げ出した私は、自衛隊すら逃げ出すであろうレベリングを強行して貰ったのだった。いやほんと何度死ぬかと思った事やら。
「私も強くなったもんだね」
「ま、俺らに比べりゃまだまだだけどねー」
こら、トエくん。分かっててもそう言うことは言わないの。君がドロシーと変わらないくらい強いのは知ってるから。
と言うかドロシーはドロシーでステータス隠蔽してた。実際はもっとレベルは上だったし、ステータスも違うらしかった。もうなにもしんじられない。
「まーまーまーまー、世の中そんなもんだって。お嬢だってそう言うことしたくてレベリングしたかったんでしょ?」
自分より年下の男の子に諭されました。ちくしょう、かわいいな。
☆☆☆☆☆
レベッカ達がドーラ洞窟からレベリングを終えて一週間後。マグノリア領に向かって一団が数台の馬車を守る様に騎士団が列を成して進行していく。その中でも一際大きな特注である馬車は厳重に警護されながら進行している。
「それにしてもマグノリアは随分と上手いことをしたものですな」
「なんでも他の候補者を行方不明にさせたとか」
「いけませんぞ、レギン殿。もし、本当に彼女が『聖女』であったなら反逆罪に問われかねませんしなぁ」
「違いない」
談笑が馬車の中で交わされる。尤も交わされるのはそれだけではなかった様だが。
「『聖女』を騙る不届きな者はそれ相応の罰を与えねばなりますまい。これらの様に」
「我々としてはどちらとしても喜ばしいことですからな。さてさて、マグノリアの『聖女』候補はどちらなのでしょうな?」
「卿はどう思われますかな?」
「どう……ですか。そうですなぁ……」
そう問われた彼は仮面が覆われていない口元ニィっと釣り上げ、楽しそうに答えるのだった。
「ワタクシも皆さまと同様ですよ。どちらでも。そう、どちらでもよいのですよ、ククク」
「なんか死亡フラグとは別のフラグが近づいてる気がするんだけど……?」
キノセイ。