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転生クーデター  作者: ねこなべ
第三章 祈っても救われませんでした。
39/45

第一話 フラグ回収RTA

第三章、開幕します。

 黒い衝動と共に奇声が上がる。


「Ahgghhhhhgaaaaaaaaaaaaa……!!!」

「思ったより早かったな……」


 竜の王たる『竜帝』はその中心を眺め、『煌剣』を携えながら考える。


「やはり奴ら、『罪禍の封(アレ)印』に手を出していたか。しかし……」


 ギャアギャアと灼け落ちた破片達が燻りながら、まるで救いを求める様に天に向かって手を伸ばす。竜帝はその様を見下ろすと、哀しみとも取れる表情を向けて『煌剣』を引き抜く。


()()のその様な有り様は見たくは無かった。その成れの果て、見るに耐えん。何故だ?何故お前は奴等を見捨てなかったのだ?」


 眼下に広がるシロガミのその姿はヒトが幾重にも組み重なって造り出された巨大なキメラの様な姿をしていた。


「クッ……、やはり俺には出来ん。迷いもあるが、そもそも『煌剣(コイツ)』を制御しきれん」


 竜帝の『煌剣』を振るう一撃は破片が僅かに灼かれるだけで、肝心の本体を葬るには至らなかった。竜帝が仕留めるのを諦めて多重封印を施すとシロガミは燻りながら眠った様に動かなくなる。


「最早、完全に時間がない。こうなったならば探すしかあるまい。『図書館(ヤツ)』が言っていた『断頭』を扱えたと言う『想定外』とやらを」


 竜帝は『煌剣』をしまうと、翼を広げその場を立ち去る。そして彼が向かうその先は学園都市プロテアのある方角だった。


「待っていろ、我が盟友(とも)よ。もう直ぐお前を楽にしてやる」


☆☆☆☆☆


「お金が無い!」

「突然どうした、お嬢?」

「給金未払い?処す?処す?」

「違うっつの。自分で使えるお金が無いって言ってんの」


 現在、私の懐事じ……ンッンもとい皆のお給金事情はフリード家が代理で管理している。チガウヨ?別ニ横領トカシテナイヨ?大体そんなことしたら真っ先に殺されるし。マグノリア領は現在各地で復興の真っ只中であり、私自身余計な出費を出している余裕がないのだ。


 とは言え悪いニュースばかりではない。後に『ダーニック事変』と呼ばれる様になったあの騒動はドーラ鉱山を中心に各地で大規模な被害を出した。そんな中、トリトは唯一と言って良い程被害が軽度で済んだのだった。特に幸いだったのがトリトの港が無傷で済んだ事にある。

 トリトは海に面した漁村であり、発生源のあったドーラ鉱山地帯からはかなり離れている。その為、『ハイキブツ』からの被害を受けにくかった。また、漁村である事から港も存在している為、各地から冒険者が駐留しておりハイキブツの情報も浸透し易く彼等の活躍で被害が収まりやすかったと言うのもある。現在も資材搬入も容易く、そのお陰で此処を中心にマグノリア領は復興活動が順調に進んでいる。

 更には大きな被害が大陸全土に広がる前に鳳凰騎士団が中心となりドーラ鉱山洞の内部まで一掃。そしてトリトを拠点として、ギルドから派遣された冒険者、マグノリア家の執事・メイド部隊、待機していた『影』のメンバーにより周辺被害を最小限に抑え込む事に成功。

 これらの連携が功を成し、残りの『蟻』も随時罠を張りながら駆逐が出来たのだった。今でも『蟻』の遭遇例あるが対処法が確立されている為、現在ではD級冒険者でも狩れると専らの話である。


 その後、トリトの住民を中心にその復興の中心都市とする為に貿易港を有するマグノリア領の新たな首都トリトンを建造。マグノリア家の本邸も其方に移す為、其方も並行して建設中。数年で形になって来たのを見るとやっぱり魔法って凄いなぁと改めて感心する。基礎工事、骨組みまで行ったらそこに土魔法で一気に壁を作るんだから、まぁ早い事早い事。

 しかし家があれば生活は出来るが、あるだけでは成り立たない。当然の如く領地運営には莫大な金が掛かる。その為ダーニック家からブン取…ンッン、もとい徴収した賠償金や土地、その他諸々の諸経費等を使用してもまだまだ移住して来る難民の事もありギリギリの生活を強いられている。その為、将来性を担保にフリード家に借金(?)と言う形で領地の運営費や復興費等の資金を肩代わりして貰っている。


 ただ、おじ様曰く


「確かに投資ではありますが今でも問題なくリターンは十分過ぎる程受け取ってますので問題はないですよ。ンッフッフッフッフッ」


 そう言って誤魔化されるばかりである。


 一体何処に今のマグノリア領にリターン出せる要素があったんだか?貿易港で船を貸し出してるだけだよ?それ以外は全くと言っても良い程何もしてない。ぶっちゃけ投資という名の援助である。

 船の船員も貸し出した船の運営もおじ様が全て取り仕切り、私達は寧ろその運営を学ばせてもらってる側である。育成にしたって採算度外視では?


 何はともあれ学園生活は思ったより金が掛かるので、それは非常に助かっている。そうでなくとも貴族の集まる教室はやたらとお茶会だのパーティーだのと金が掛かるイベントが多い。流石に行く相手は選んではいるがそれでも金は掛かる。尤も私のクラスチェンジの影響で現在の低レベル帯となった今、最近ではそのお誘いもめっきり激減したけどね。代わりにそのお陰でダンジョンに行き放題!かと思いきやそうでもなかった。


 理由は以前にもあった事だが学園の探索部の一件の事だ。レベルがリセットされた様に見えるお陰で勧誘自体は無くなった。ところがあの連中、私が高レベルではないと判かるや否や今度は妨害や襲撃を頻繁にして来る様になったのだ。

 私がダンジョンに来るとレイやナイン達『影』を護衛につけたりしてる為か、何かと貴族が我が物顔してるのが目障りらしい。それだってソロで行ったら速攻で連中に襲われたからなんだけど。まぁ寄生してる様に見えるだろうから、その気持ちがわからないでもないがルール無用にも程がある。

 へイトのなすりつけ行(モンスタートレイン)為はまだ可愛い方で、魔法や弓矢と言った遠距離攻撃の故意の誤射、果ては暗殺行為、トラップの故意の誘発行為等挙げ出したらキリがない。流石にレイやナインが見張っててくれるおかげでドロップアイテムの持ち逃げは無かったけども。この間は狩場の縄張り争いでやたらと大事になった。

 そんなこんなで私が来ると余計な二次三次災害を引き起こすのでダンジョンに出禁になってしまったのだった。そんなん、あたいのせいじゃないやい。結果、ダンジョン探索が非常に困難になり簡単にレベリングも資金稼ぎも出来ないと言う悪循環に陥っていた。


 結局私はそんな圧に負けた訳じゃないが、これ以上の余計なトラブルを避けるべく冒険者ギルドに集まるやたらと危険度の高い依頼をこなしていかなくてはならなくなっていた。まぁお陰でギルドからの顔の覚えも良いんだけども。

 そんな訳であくまでも学生向けの索敵くらいしかまともに受けられず、私の私用目的の資金が底をつき始めようとしていた。ただまぁ、換金出来ないだけで資産がないと言うわけではないのだが。


「レイさんナインさん。ちょっとこれをみておくれよ」

「なんだよ怖いな…」

「俺らに何を見せようって言うんだ?うっわ…」


 二人にストレージの中身を見せると、其処には大量のミスト水晶石やハルコネア金鉱石が大量に占領されていた。

 

「お嬢、流石に盗みは不味い。いくら何でも汚名被ってまで俺らに支払わなくていいんだぞ?俺らは綺麗な金で給金貰いてぇし」

「何言ってんのよ?私がそんなことする訳……うん、言ってて何だけどやりそうだわ。そろそろ手段選んでる余裕なくなってきたし」

「冗談でも言って良い事と悪いことがあるわい。って、まさかコレこないだの謝礼って奴か?」

「嫌がらせ…いや、むしろ囲い込みの手付金かなこれは?」


 先日のソニア様からのお返しとは出費した額の倍額どころか寧ろ10倍以上の価値の現物支給。同じくして図書館卿からのお礼もこれまた市場価値としては先日の勇者パーティの騒動に掛かった出費が霞んでしまうレベルの現物支給…。

 いや、どっちも現物支給ぅ!現金くれよ現金!…とは悲しい事にとても言えなかった。ぶっちゃけ御二人からのお返しとは私が買い戻しに出費した総額とは比べ物にならない程の価値あるものだったからだ。


「価値があり過ぎて売るに売れませんって…」

「これは下手な加工もできねぇしなぁ…」

「将来的に必要になるかもしれない事を考えると手放す事も中々し難い訳だ。これはタチが悪い」


 そんな訳で加工するにも金が掛かるし、ナインの言う通り手放すのも勿体無いと言う訳で結果的に更なる資金難に陥ると言うわけであった。お互い顔を合わせながら重いため息を吐いてしまう。


「まぁ、加工に関しちゃアテがないわけじゃないがな」

「え?は!?あんの!?アテ!?」

「レイ、もしかしてハチの事?」

「ハチ?」


 ハチと聞いて私は疑問符を頭に浮かべる。


「そういやお嬢はまだ会った事がなかったな。ハチは俺らのメンバーの装備調達要員だ。ただまぁ、どのみち暫く会えねぇとは思うがな」

「なんでまた?」

「国内に居ないんだよ。ハチは根っからの放浪者でね、今は確か〜……燈那国だっけ?」

「燈那国……かぁ;」


 燈那(ヒナ)(こく)。フロンティア大陸から東にある列島諸国で、以前のマグノリアと交易を行っていた国である。また、独自の文化文明が発展しており、元の世界で言うところの日本と東南アジアを混ぜた様な国である。

 ドロシーが使うカタナは燈那国から輸入している逸品であり、鋼の鎧すら紙のように斬り裂く。斬れ過ぎて怖い。ナントカゲンリュウサイとかって人の鍛え上げたカタナだった気がする。


「まぁ、どっちみち直ぐに行ける場所じゃねぇし、定時連絡の時にでも呼び寄せるか」

「だね。ハチも喜びそうだ」

「ハチって人、両方とも加工出来んの?」

「多分な。ドワーフと鬼人族のハーフだっけか?」

「それはまた随分とおっかなそうな…」


 ホント人材豊富な組織だ事。どっちにしても交易が軌道に乗ったとしても本格的に貿易業に取り掛かるまで暫くかかるし燈那国に行くのも当分先だなぁ。


「仕方ない。冒険者組合に行くかぁ…」


 私は自分懐事情を後回しにして、これから起こるであろう面倒事に頭を悩ませ足取りが重くなる。正直、ホントに気乗りがしない。またアイツが絡んで来るんだろうしなぁ。


☆☆☆☆☆


 冒険者組合の依頼には様々な依頼がある。組合に集められた依頼をギルドに通し依頼内容の近隣エリアや指名依頼として優先的に、それ以外はエリアレベルに添った支部毎に振り分けられる。此処学園都市プロテアの学園支部に振り渡られる依頼は主に最低ランクのEから上は中位のCまでの依頼が振り分けられる。

 これはあくまでも学生が達成可能なレベル向けであるものとされる為であり、同じ学園都市プロテアでもプロテア学外支部では普通に上位のAランク以上の依頼も振り分けられている。また、D級以下の冒険者がD+以上のクエストを受ける場合、C級ランク以上のベテラン冒険者の同行が必須となる。


 そして基本的に学生の身分で冒険者ギルドに登録される場合、一律ワンランク下げられた適正で等級分けされる。それはあくまでも死亡率や失敗率を下げる為の処置である。また、今後の冒険者としての取り組みを円滑に学ぶ為の実地訓練も兼ねていた。


「コレにするかぁ…」

「また捜索依頼?」

「あんまし実入りが少なくねぇか?」

「仕方ないでしょ?今は少しでも稼いどきたいし」


 そんな依頼の中、やや特殊な例として挙げられるのが捜索依頼である。レベッカが手にしたのはジェンナ・ソルージェと言う男爵令嬢の捜索依頼だった。


「ま、どうせ捜索じゃ碌な内容じゃ無いでしょ?ならまぁこっちもしっかりやらせて貰うわよ」

「悪い顔だなぁ…」

「ホントこいつ貴族なんだよな?疑わしくなってきたぞ」


 黒い笑顔で破顔うレベッカにレイとナインが若干引く。


「あら、これはこれはレベッカお嬢様じゃなくって?」


 そんなレベッカ達の方へニヤニヤしながら近付いて来るグループがあった。


「強〜い護衛に寄生して上前を跳ねようだなんて、流石フリード家に寄生しているだけのことはありますわねぇ?」

「しかも何?捜索依頼だなんて、また金に物を言わせて偽称するおつもりですかぁ〜?」

「クスクスクスクス……」


 彼女の名はレイチェル・バーンズ。バーンズ中央伯爵令嬢であり、バーンズナイツと言うパーティのリーダーである。入学当初高レベルであったレベッカを熱心に勧誘していた一人であったがレベッカがクラスチェンジしてレベルが1に下がって(と言うよりは戻って)以降、手のひらを返した様にレベッカを見下し寄生虫呼ばわりする様になっていた。


「わかっちゃいたけど、この程度の額の依頼しか無いのは考えもんよね?」

「お嬢が組合を換金所みたいに利用すっからだろ?」

「あ、あれは仕方ないでしょ?お金無くて緊急だったんだし!それに下手に討伐依頼受けるとやっかみ受けるんだから」


 たまたま同じ討伐対象と同じ素材持ってたからそれを提出して達成してしまったと言う自体になった。しかも討伐対象自体は放ったらかしである。悪質極まりないから後でコッソリと『影』のメンバーと一緒に無償で討伐したけどね。良い子の皆はこういう事をするのは絶対やめましょう。


 一般的に捜索依頼は討伐や救出要請に比べて非常に難易度が軽く見られがちである。しかも報酬もそれに因んで非常に安くなってしまう。その理由としては捜索と言うのはあくまでも()()()()で良いからである。


 類似する内容で、必ず生存させなければ依頼達成とはならない救出依頼とは違い、痕跡や対象の所在・生死の確認、遺体や遺品が有ればその回収、場合によってはその対象の痕跡の報告だけでも依頼が達成し、その精度によって報酬が変動するシステムとなっている。

 その為、捜索依頼に対しては明確なランク分けがし難く、一律固定ランク扱いとなっている事から学生が単独で引き受ける事も可能となっている。

 ただし、それ故にベテラン冒険者の同行を必要としない分危険性も非常に高く、また斥候が出来るスカウトやアサシンと言った一部の天命を持つ者達でしかまともにこなせるものでもなかった。

 結果的にその所為で報酬も安価になりがちになってしまい、受ける者も減少してしまう。これらの事が理由で悪循環が重なり、また塩漬け増加に拍車が掛かってしまったのだ。


 尤もレベッカとしてもその後の情報の有益性やその他の収支を重要視している為あまり大した問題にはならないのだが…


「まぁ、此処は学園向けの支部だからなぁ。討伐だって上限出したとしてもD+からCが精一杯じゃねぇの?」

「もっと情報は正確にして欲しいわぁ。後で知ったけど、こないだ受ける羽目になった討伐依頼だって実際にはBくらいの案件だったって話じゃない。もう新手の詐欺だわよ」

「はいはい、受付カウンターで彼方さんが手招きして待ってるよ。うっわ、なにあの笑顔?」


 思わず驚く程の満面な笑顔で迎える受付嬢がカウンターで待っていた。


「ちょっと!待ちなさいよ!!」


 レベッカ達を引き止める為に声を荒げるレイチェルの取り巻きだが、レベッカはそんな彼女達を意にも留めずレイとナインが軽く殺意をちらつかせると取り巻きの少女達は「ひッ!?」声を上げて後ずさる。レベッカ達はその横をスルーしてカウンターの方に向かって行く。


「………………ギリッ」

「あ、あの?」

「レイ……チェル様……?」

「ンギギギギィイイイ!!!」


 レイチェルは今にも床を踏み砕きそうな勢いで組合所を出て行きその取り巻きも彼女を追って行った。


☆☆☆☆☆


「お嬢、いいのかアレ?バーンズ家の令嬢じゃなかったか?マードックんとこの」

「ん?あー、良いの良いの。あの手の人は大概自滅するから。それに分隊長からは相手にしなくて良いって許可もらってるし」


 別にクラスチェンジした為にレベルが下がった様に見えるだけで、元の『癒しの聖女』に戻す事もできるし、なんだったら『槍術士』のままでもアイツ等程度返り討ちに出来るのだ。いちいちあんなの相手にしてたらキリがない。


「それに万が一やっかんでくる様なら殺っちゃって構わないって許可も貰ってるし」

「俺の貴族令嬢のイメージをぶち壊さねぇでくれるか?お嬢を見てると貴族令嬢のイメージがどんどん壊れて…いやもうお嬢は手遅れだったな」

「どう言う意味よ?ホントに失礼ね」


 経験上と言うか私が積極的に受けている依頼の捜索依頼の対象の約7割が先程の様な貴族の嫡子が殆どである。それも何故か問題を起こすのは下の兄弟姉妹(きょうだい)達の割合が圧倒的に多い。

 基本的に余程の事がなければ長男が家督を継ぐものである。その為なのか家督を継ぐ人間は特に厳しい教育を受ける為、長男長女だからと言って胡座を描く馬鹿は割と少ないし、自身の振る舞い等は割と慎重になる。

 一方で私もそうだったが下の兄弟姉妹(きょうだい)は家と家の繋がりの為にと少しでも地位の高い貴族に嫁がされたり官僚や騎士にさせられる様に育てられる為か両親に変に甘やかれて大事に育てられていたりする。

 そこから来る賜物なのか、妙に自身の実力に見合わない自信やプライドを持ってたりする。その自信やプライドから来る物なのか、はたまた自分を選ばれし英雄か何かと勘違いしているのか、やたらと手柄や武勲を立てようと生き急ぐ傾向にある。しかもその生き急ぎに大概周囲の人間が巻き込まれる事も多く、周囲の人間を巻き込んでいる自覚が本人にもないという。厄介事にも程がある。

 私の私見だけど塩漬けの理由ってそれも理由の一つなんじゃないだろうか?


(そんでもって、いざ自分が窮地に陥ると自分の家柄だのを盾にしようとするんだからほんとタチが悪いって言うかなんて言うか…)

「マードックを見て育ってきて、あの性格はありえないと思うんだがなあ」

「確かに……」

「あー、それはね…」


 以前、あのご令嬢が絡んでくる様になってマードック分隊長がバーンズと言う苗字だった事を思い出して相談してみると申し訳なさそうに謝罪されてしまったのを思い出す。

 バーンズ家の現当主は現在私が合同訓練でお世話になってる鳳凰騎士団のマードック分隊長である。あのご令嬢とは違い、人望も有り気さくな良い兄貴分な方である。若干脳筋過ぎて暑苦しくはあるが。


 話を聞くと、マードック氏は実は実家を追放されてる身なのだそうな。色々あって結果的にマードック氏が現在の当主という形になってしまったとは氏の談。

 何でも当時、バーンズ家は剣士の名家であった為、『剣聖』の天命を強く望まれたのだとか。ところがマードック氏は『闘士』の天命を受けた。

 その結果に満足しなかった御当主がその場で追放を言い渡した為、氏がその場で決闘を申し出たのだと言う。相手の御当主がそれなりの年齢であったとは言え、それでも『剣豪』の天命を持つ御当主に誰もが負けるはずはないと思われた。

 しかし結果はマードック氏圧勝。選定の儀を行う以前から日々の鍛錬を怠る事のなかったマッチョである彼に敗北の二文字はなかった。そしてマードック氏は「己自身の心身共に鍛えずして、剣に拘る事は実に愚かである」と父親に告げ自ら絶縁状を叩きつけて家を出てきたそうな。

 しかし、ここから運命は大きく変わる事になる。独立して軍属になるにあたり身辺調査が行われた際、その経緯を知ったおじさまが彼を引き取る事になる。そして、この事実が明らかになった事が切っ掛けでバーンズ家の当主として相応しい人物として国に認められる事となる。

 結果的にそれまでこの事実を隠蔽してきたマードック氏の御両親とその一味はその責任を追及させられる事となり、マードック氏はバーンズ家現当主と言う立場に返り咲いてしまったのである。


 マードック氏曰く


「妹のレイチェルがあんな調子なら恐らく親父との決闘も俺が何か卑怯な手を使っただの言いくるめられていたに違いないだろう。貴族ってのは大概そう言うもんだし、あの親父ならやりかねんしな。あいつは『剣士』であった様だが、それなりに手柄を立てなければならない様で焦っているらしい。お前に迷惑を掛けたのであればすまなかったな」


 との事。ホントマジでマッチョである。


「なるほどねぇ」

「あいつも苦労してんなぁ」

「そうねぇ。にしてもまぁ…」


 改めて受付完了のサインがされた受領書を見て頭を抱える。


「ハァ……。これじゃおじ様に身売りするのも考えなきゃならなくなるわね」

「おいおい……;」


 身売りと言っても軍部に入隊するという意味だ。軍部に入隊するとなれば自分自身に肩書きや特別な立場にでもない等、余程の事(肩書きだの地位だの爵位だとか)がない限り基本的に一兵卒からの入隊である。其処にそれこそ身内贔屓など存在しない。故に身売り。入隊するとしたら第6分隊?……うん、悪くない。

 

 ちなみにマードック氏がどれほど強いのかというと、レイと戦って4割、魔法戦有りのナインとやり合って8割の勝率を叩き出す。これは別にナインがレイより弱いのではなく単に相性の問題らしい。因みにレイとナインが勝負した場合ほぼナインが勝つとの事。

 ………そして蛇足だが、私の強さはクラスチェンジ前の状態時でやっとマードック氏に一手当てられる様になった程度である。レベルと言う概念がどんだけ信用ない物なのかが良く分かる。


 よくよく考えればマードック氏は『影』の戦闘メンバーが複数人相手でも一人で勝率6割、防衛戦ならば実は全勝してたりする猛者である。それにマードック氏率いる第6分隊は隊の中でも全員トップクラスにマッチョな上に精神もマッチョである。流石、鳳凰騎士団の殿部隊を任されるだけのことはある。

 尤も、鳳凰騎士団は第6分隊以外のどの隊も皆実力者揃いな上に全員総出でクセが強くてぶっ飛んでいる。

 …流石おじ様自ら分隊長を選出しスカウトして来ただけの事はある。


「もしかしたら私達を第7分隊として組み込む予定なのかもね……」

「怖っ!?」

「………あのオッサンならやりかねねぇなぁ」


 レイが腕を組み苦虫を噛んだ様な顔で天を仰いだ。


 それから数日後。


「おっおぅー……、フラグ回収早すぎィ」


 クエストボードに貼ってある依頼書を見て思わず私は心の声が漏れた。


どうも、ねこなべです。

なんとか間に合った……。_:(´ཀ`」 ∠):

楽しみにしてくださってる方、毎度毎度遅筆過ぎて大変申し訳ありません。

来月から第二、第四日曜日の月二話をペースにやって行こうと思います。……間に合わなかったらすみません;

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