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転生クーデター  作者: ねこなべ
第二章 学園に入学したら地雷原でした。
37/45

終話 大丈夫

【前回のあらすじ】

断頭台のイカロス(偽)

「エリー…、私だ。マリアだ」


 エレイシアの部屋から拒絶の意思だけが返ってくるようにドアには鍵がかかられたままで、何も返答がない。

 勇者パーティの騒動から数週間が経ち、偽装ではあったが表向きはイカロスの処刑が決行された。全ての情報は開示されてはいないがその旨はマリアの元にも届いていた。

 

「……そうだな。私は何も出来なかった。いや、何も……何も…しなかったんだ」


 マリアはその騒動に対し何も出来なかった。それどころか公爵家は王家から今回の一件からは手を引かせる様に圧力がかかっていた。しかもマリアの父親である、グレイス・ロアム・リドルーナからも公爵家が下の者等気にする必要などないと、マリアが動く事を強く禁じたのだ。


「何故お父様まで…?私はなんて無力……」

「お姉様?」


 ふと、マリアを姉と呼ぶ声がした。一人娘である自分に対してまるで本当の姉妹の様に接して来る一つ下の後輩。そして今回、王家や公爵家の代理として奔走していた立役者。


「わっ!?っと、と。お姉様?」

「本当に無事で良かったっ!本当に……ッ!」


 まるで生き別れの姉妹が生きていた事を心から喜ぶ様にマリアはレベッカを抱きしめる。そんなマリアをレベッカは安心させる様に優しく抱きしめ返す。


「安心してください。私は貴女を置いて逝く様な薄情な妹じゃありませんから」


☆☆☆☆☆


「本当に無事で良かったっ!本当に……ッ!」


 え?何これ?天使の抱擁ですか?ウェヘヘ。ちがうよ?変態じゃ無いよ?喩え変態だとしても聖女という名の淑女だよ?あかん、情報が奔流となって私をうぼごぼぼぼ。


「ぁ……」


 い、良いんだろうか?喩え同性とは言えこんな完璧美少女相手に抱きしめられて。え、えーと抱き返すって言うか背中をぽんぽんするくらいならギルティじゃ無いよね?安心させるためだもんね。ってよく無いわ!?自制心にボディブローをかましつつ、良心に問う。

 その良心は心のスマホ片手に動画撮って(天使と悪魔が肩組んで)やがりました。うーん、欲望に忠実ぅ。

 うん、涙目になってるマリアお姉様を上目遣いから見る形になってたら欲望に負けてました。私の手はお姉様の頭を撫でようとしてました。


「安心してください。私は貴女を置いて逝く様な薄情な妹じゃありませんから。………ッ!?」


 サラッサラなお髪が私の手に触れた瞬間、意識が翔んだ。もう、がんばらなくて……いい………よ……ね?


「オマエらな〜に人の部屋の前でイチャコラしてんのさ?」

「え?あっ!?」


 声の方に向くと呆れた顔でエリーが抱き合ってる私達を眺めていた。


「え!?エリー!?コレはいやちがっ!?」

「あー、えーと。引きこもったお姫様を引っ張り出すには外で騒いでたほうが良いって。そんな感じ?」

「何処のお話だよ?まったく、これじゃおちおち引き篭もって片付け作業もできやしない。ほら、そんなとこに居ないでさっさとおいで。君ら相手にしてると落ち込んでる事すら馬鹿馬鹿しくなる」


 ぱちんとエリーが指を鳴らすと突然別の場所に私達は転移させられていた。


☆☆☆☆☆


「すまない。本当に…すまない……。本来なら公爵家が陣頭指揮を取り皆を救う立場である筈なのに…」

「気にすんなよ。むしろ私が巻き込んでんだ。マリーは立場上どうにもならんし。それに謝るなら私がレベッカに謝らなきゃだ」

「いえ。私でお力になれたなら良かったです」


 二人は今回の一件での事をレベッカに深く詫びた。特にマリアが詫びたい内容はそれだけでは無い。王女の代行者として勇者パーティに王命を伝える事も、国内の混乱の沈静化に尽力を尽くす事も、本来王女の代行ならば公爵家が行わなければならなかった。しかし、王家の代行も、ましてや沈静化も行う事を禁じられた為、レベッカが代行を行う事が急遽決まったのだと言う。


「私は本当に何も出来ない人間だな……。お飾りにも程がある」

「そんな事ありませんよ。お姉様がいらっしゃるから生きて帰るって活力が湧いて事件を何とか解決できたんですから」


 まだ松葉杖が手放せずリハビリが必要だそうで、レベッカの動きはまだぎこちない。それでも静けさの残る学校に訪れたのは、図書館で寝泊まりしていると言うエレイシアの様子を見に来た為だ。

 学校も今は臨時休校となっている為、教室には昼間だというのに人の出入りも殆ど無い。現在も残っている者は見回りの教職員か、寮住まいの生徒達位な者だろうか?


「それにしても本当に大丈夫なのか?抱きついてしまった手前言うのもなんだが、まだ松葉杖が手放せない様だし」

「あー…、まあ多少は動かないと色々と鈍ってしまいそうなので。御安心ください。こう見えて私は元気ですから」


 そう言って笑顔を見せて自分を安心させようとするレベッカを見て、マリアは今度は自分が守らなければと思ってしまうのだった。


「んで、私の事をほったらかしにしてイチャコラしてたのか、君らは」

「いや、だからそれは誤解だと!」

「お姉様。揶揄われてますよ。エリーがそんな風に茶化す時は大抵揶揄ってる時ですから」


 マリアが振り返るとエレイシアがニヤつく顔で見下ろして居るのに気がつき、顔を真っ赤にしながら頬を膨らます。そんな様子が可愛らしくレベッカ達もつい吹き出してしまう。そしてエレイシアに目線を向けると真面目な顔でレベッカは問う。


「エリー、大丈夫ですか?」

「なに言ってんのさ?私は大丈夫。いつもの事だしね」


 しかしレベッカは目線を逸らさない。真っ直ぐエレイシアを見つめて言葉を続ける。


「レベッカ?」

「私は……()()()()()()と言う人間を信用しません」

「な、何を…言って…?」

「私は大丈夫と自分を言い聞かせて生きてきたところがあるので今のエリーの大丈夫と言う言葉が信じられません。

 この世界で弱音を吐く事は悪と言われるかも知れないけれど、私はそんなもの知ったこっちゃありません。んな他人にとって都合の良い謳い文句、私達の前でまで我慢して言う必要なんて無いんです。

 だって私達はまだ学生ですよ?いつもの事?ふざけんじゃない!そんな事()()()()()にしちゃ駄目なんですよ!」


 息を切らし、全身に痛みが走りながらもレベッカは叫ぶ。そんな様子が二人にどの様に映ったのだろうか?


「あ、あー……うん。ごめんなさい。言い過ぎました。でも、少なくとも愚痴くらい私が聞きます。友達なんですから。だからあんまり()()()なんて言わないでください。吐き出したい想いがあれば聞きますから。これでも候補ですが『聖女』ですんで!」


 胸を張るも、自分が怪我人であった事を忘れていた様でむせる。そんな様子を見て思わず二人はつい吹き出して笑ってしまう。


「ははは……あ、あれ……涙が?」


 不意にエレイシアの目尻から一筋の涙が伝う。


「ああ…、そうか。私はイカロス(アイツ)のこと案外気に入ってたんだな」


 エレイシアはマリアの胸に抱かれて泣き出してしまう。マリアはエレイシアを優しく抱き寄せ彼女が泣き止むまで側に寄り添う。そしてレベッカもまたその様子を静かに見守っていた。


☆☆☆☆☆


「色々とすまなかったな。礼を言わせてくれ、レベッカ」

「いえ、私が出来ることでしたら何でもおっしゃって下さい」


 ええもう、貴女を守る為なら国なんぞいくらでも相手にしてやりましょうとも!……なんて口に出して言えない事が口惜しい。


(本当ならこんな風に接する事すら無礼に当たる筈なんだよねぇ…)


 そもそもが私は地方貴族の男爵家に相当する立場の娘である。一応これまでの功績があって卒業後、子爵位を授かる事が決定しているとしても、それでも一個人として本来ならばこんなに付き合いのある関係は咎められるものだ。


 少なくとも今の私との関係が許されているのはいくつかの理由が存在すると思われる。

 私の実力が思った以上に高レベルであった事。 ()()()()()()が協力的であり、リドルーナ家にとっては()()()()は害敵では無いと言う判断が与えられている事。私がマリア様と同じ風紀委員の人間である事。私も王太子殿下からの無茶振りの被害者になってしまっていると言う同情的意識。

 そして今回の様に自分の手に届かない所で、私の手を煩わせてしまったと言う彼女自身の罪悪感と言った所だろう。


(実際の所、公爵家も今回の件に絡んでる可能性も否定出来ないからなぁ…)


 勢力分布を頭の中で描いて確認してみるとまぁグレーゾーンにグレーゾーンが重なって真っ黒になってるところが多々存在していた。本当に一体いつからこんな事態になってたのかさっぱりわからないけど。


(レイがこれ以上首を突っ込むなって言うのも理解できるわぁ…)


 ただし、マリアお姉様やエリー達といった、私が守りたい人間を守る為にはこれからも首を突っ込まざるを得ず、そして何よりその解決に尽力しなくてはならない。

 本当なら何もすべきではないのだけど!何もすべきではなかったのだけど!!

 しょうがないじゃない。何もしなければ私も死亡フラグは避けられなくなるし、最悪知らない所で簡単に巻き込まれて死ぬし。それに私だって出来れば見知った人が散々な目にあうところは見たく無いし。だったら生き延びる為に、大切な人を守る為にも足掻くわよ!

 ぶっちゃけた話、何もしなかった場合私は13歳で死んでたし、それからも何度死ぬ思いをしたか…。多分だけど、私が乗り移る前もレベッカは何度も命を狙われていた筈だ。現在はフリード家が後ろ盾になってくれた為に表立って命を狙われなくなったけど。

 その為にも私は強くならなきゃいけない。この人に並び立つのに相応しい人間になる為にも。


★★★★★


 フロンティア大陸のとある廃墟の地下深く。ダンジョンを再利用して作られたと思われる施設にいくつもの水槽が並んでいた。


「がはっ!?げぼっゲホッゲホッ!……ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

「あら、随分長いこと寝てたのね」

「ぐっ………、ぇ、エマ?」


 真っ白に脱色した頭髪からエーテル水を滴らせて水槽から起き上がるのは、アロガンツと化しソニアに首を切られて死亡した筈のユウトであった。エマから投げられたタオルで顔を拭き、身体を拭き終わる頃には頭髪の色は徐々に変色していき艶のある黒髪へと変わっていった。


「油断し過ぎっしょ。と言うか禁じ手(アロガンツ)使って負けるってどう言うこと?」

「仕方ないだろ?アレは想定外過ぎる。大体なんであそこに『断頭』を扱える人間が存在していたんだ?

アレはセンセイの作った『封印指定武(レリックギア)装』だろう?」


 そう伝える相手はエマよりもやや小柄な少女。彼女はその事実を聞かされて、目を見開く。


「ししょーの『断頭』!?嘘!?アレは!だってアレは!あいつが!あのクソ牛が!!」

「分かってる。だがあの斬れ味は『断頭』以外の何者でも無い。それを持っていたと言うことはあの『想定外』は少なくともあの『狂王』を倒した事になる」

「………」

「それで、どうするの?図書館卿(ブックロード)は正式に此方との協力関係を断ってきたわ。アンタが私が立ち去った後で更に余計な真似をした所為でね?」


 沈黙を破る様にエマは事実を告げる。勿論そんな事分かっているがそれに対する返答も出来ない事も両者は理解していた。


「言っておくけどアンタらのせいで私までとばっちりよ。コレ、貸し一つじゃ済まないわ」

「アンタがそれを言う?ユウトにチート使って操ってたクセに!」

「そもそも私達がセンセイの『作品(ギア)』の回収作業に勤しんでる所にアンタらが勝手に割り込んできた挙句、図書館卿(ブックロード)や『竜帝』にちょっかいかけるからこんな事になったんでしょうが。お陰でやっと回収した『煌剣』まで奪われたのよ?」


 奪われた『煌剣』と言うのはエマのグループがようやく見つけ出し、苦労して回収した『封印指定武(レリックギア)装』だ。

 そもそも勇者側の原因とは、図書館卿(ブックロード)の妹を誘拐して此方の言う事を聞かせようと画策したユウト達のグループメンバーの仕業によるものである。

 『煌剣』が回収された事を知ったユウトのグループメンバーである宮野アツヒロが不用意に持ち出し、グループメンバーを率いて元々気に入らなかった『竜帝』相手に決闘と称し奇襲を仕掛けた。

 しかし、その『竜帝』たった一人に彼等は完膚なきまで叩きのめされた。しかもその所為で、『竜帝』からは理不尽とも言える()()()()を結ばれてしまい、挙句の果てには『煌剣』を奪われてしまった事に起因する。

 その失敗を埋める為にも宮野は『煌剣』を奪い返す為にエマの個人的に協力関係者である図書館卿(ブックロード)に目を付け、その妹を拉致して来ようとしたのだ。その際に勇者パーティとしてイカロスにエレイシアの元まで案内させたのが彼等である。

 結果的にその誘拐は成功してしまい、その事態を知った図書館卿(ブックロード)は勇者パーティらを統括する『聖徒会』に宣戦布告。その責任問題がリーダーでもあるユウトに向かい、その事実がエマにも伝わりその事態の収束をする羽目になったのだ。


「まぁ…奪った相手が判ってるからまだ良いけど。私でも『竜帝』にまで喧嘩を売る気はないわよ。あんなのに勝てるわけないし」

「『竜帝』……か。あちらの返答は?」

「話なんて聞いてくれるわけないでしょ?彼からしてみれば私達は全員裏切り者なんだから。だいたい、何で宮野は『竜帝』に喧嘩吹っかけるのよ?馬鹿なの?」

「……それは、うん、それはホントごめん。ウチのグループが迷惑かけた。とりあえず『煌剣』は後回しにしよう。宮野には俺からもちゃんと注意しておくし、『竜帝』には俺からも謝罪しておく」

「それはやめときなさい。彼を余計に怒らせるだけ。今度こそ全面戦争になるわよ?謝罪するならウチのグループの人間を送るわ。そんな事より此方の方の損害に対する補填はどうしてくれるのかしら?」

「うぐ……分かったよ」


 ユウトは自分に対して【隷属の魔眼(ヒュプノシス)】を使用し自分の身柄を差し出す事を条件にエマに協力を仰ぎ事態の収拾に向かった。

 しかし結果的に見ればエマは危うく死にかけた上に自分の持つ()()すら奪われかねない目にあった。それも同行していたユウトのグループのメンバーの所為でだ。

 その所為でエマは邪魔な同行して来たメンバーをユウトに殺害させたり案内役であったイカロスをシロガミにする等と余計な手間を増やしてしまった上に、協力関係にあった筈の図書館卿(ブックロード)との契約も無条件に切られてしまったのだ。不幸中の幸いと言うべきか図書館卿(ブックロード)との全面戦争だけは避けられたのだが。


「とりあえず『宝物庫』から『封印解除鍵(レリックコア)核』 3つ、これで何とか今回の件についてそっちのグループを説得して欲しい」

「ユウト!?」

「ふーん……そ。まぁ良いわ。5つね。『聖徒会』に伝えとく」

「え!?ぁ……ああ、ありがとう」


 ユウトとの取引が終わるとエマは何処かへと消えていった。


「ユウト、良いの?アイツの事あのままにしといて?」

「いや、良いんだ。今回はエマが居なければ全滅だった。それに暫くは俺達も控えようと思う」

「そう。ししょーの作品(ギア)の事は気になるけど、それならそれで。あーしも研究に集中できるし。後、アツヒロ達にはアンタら謹慎って言っとくわ」

「ん、頼む」

「そう言えば、ししょーの作品(ギア)で気になったものがあったんだけどさ。あのシャルトワールって武器、本当にシャルトワールって名前だったのかな?」

「どう言う事だ?」

「んー。なんて言うかししょーの『封印指定武(レリックギア)装』の一つにあるんだよね、似た様な設計図。ああコレ」


 本来ならこの世界には存在しない筈のタブレットPCが彼女の手にあった。そして其処に映し出されていた設計図にはシャルトワールと良く似た武器が『無形』と言う名で描かれていた。

 どうもねこなべです。

 とりあえずようやく構成が纏まったので更新スピードが上げられる様に頑張ります。

 今章がこんなに時間かかってしまったのにはどうしても全体の構成上途中で路線変えたりしなくてはならなかったり、その所為で全く違う方向行ったりで中々進行が進まず、何度もリテイクしてしまった為です。自分の不徳の致すところでした。本当に申し訳ないです。

次回更新は12/24の予定です。



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