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転生クーデター  作者: ねこなべ
第二章 学園に入学したら地雷原でした。
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第十四話 厄祓いはちゃんと行った方がいい

【前回のあらすじ】

イカ某氏、クリーチャー化して再来。

 まるで巨大なゴーレムかキメラの様な何かが私を睨み付けながら構える。その構えはまるで戦場の重戦士の様で以前のイカロスからは考えられない戦闘スタイルだった。


「ルゥオオオォォ……」

「アレが……イカ某?」


 改めてイカロスを一瞥する。いやどう見てもそんな風には見えない。外見だけ見ればまるで人の体にイカの触手の様な右腕、岩の様な盾に変質した左腕、爬虫類の様な頭部が生えた化け物だ。何がどうしてこんな化け物があのイカ某なのだろうか?しかも私のスキルレベルより高いのか、ステータスが文字化けして何者なのかさっぱり分からない。


(くっそ、《追跡》持ちか!?厄介な!)

「お゛お゛お゛おおおおおオオオォォォォ!!」

「ちょっまっ!?」


 私はその一撃を横に飛び退き何とか回避する。一直線に伸びてきた触手の腕は剛槍の如く床を一撃で粉砕する。


(あっぶなー!?あのまま《鑑定(アナライズ)》使ってたらミンチになるとこだった…)


 2年前のスタンピートが脳裏をよぎる。あのシロガミ達も揃いも揃って厄介なスキル持ちだったが、ここに来て更に厄介に感じる。ナタリー・ダーニックはあくまでも私自身になる事に拘っていたから何とか対処出来たけど、今回のソレはモンスターの本能に近い。


「何で……イカロス……」


 檻の中に閉じ込められたエリーは目の前の現実を否定しているかの様に泣き崩れる。私にはあんな風に言っていたけれどそれなりに良い関係ではあった様だ。あんなエリーは見たことがなかった。


「くっ!コイツもだけどアイツらを逃す訳にはいかないってのに!私一人じゃ……っ!」


 私は眼前のイカロスの猛攻をなんとか凌ぎつつも、今にも逃げそうである勇者パーティから遠ざかっていく事に歯痒さを感じていた。人間の時よりも明らかにパワーアップしてる上に隙が全く見えないイカロスの猛攻は何発かヤバイのが飛んできてる。防御系スキルを展開しながらガードするので精一杯。まるで暴風の様だ。


「《生命の根絶(デッドエンド)》!」

「ぐるああああァァァァァァァァッ!!」


 大振りになったイカロスの一撃をタイミングをギリギリ回避して渾身の一撃を振うべく武器を振り抜く。しかし、それに合わせる様にイカロスが盾装甲を構え衝突し、逆に私が弾き飛ばされる。

 

「かはっ!?ゲホッゲホッ!」


 全身に負ったダメージにより喉奥に詰まった血の塊を吐き出し、ポーションを口に含んで無理やり流し込み体力を回復する。魔力を回復に回す余裕がない。一方で私の全力の一撃を受けても大したダメージを受けた様子もなく立ち上がり砕けた装甲を修復させるイカロス。

 

「ぐるるぅうううう…………」

「厄介にも程があるっつの。人間辞めて強くなり過ぎでしょうが?」


 脳震盪による吐き気を何とか堪えながら破壊された武器を投げ捨て、《空間収納(ストレージ)》から予備の武器を取り出す。


(ここに来て火力不足を思い知る事になるなんて)


 アステリオスを倒せたのはあくまでも運がらみだったと痛感させられる。しかし、そんな事を考えている間にエマ達は逃亡の準備を整え始めている。


(くっ!この距離じゃ投擲スキルでも届かない!それ以前に今装備を消費するのは危険すぎる!それに……)


 さっきから嫌な予感がすっと付き纏っている。それが何なのか分からない。と言うか、そもそもこの部屋はヤバい禁書が封じられた部屋なんじゃないの?何で私達そんな部屋で大暴れしてんのよ?図書館卿(ブックロード)の管理している空間とはいえこれだけ暴れればどんな被害が出るか分かったもんじゃない。


(それどころじゃないってのにっ!)


 これから更なる犠牲者を生む事を考えれば此処であの勇者達との決着を付けなければいけない。それなのに後一手が届かない!


「ガァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!」

「しまっ!?」


 突然の咆哮に身体が硬直してしまう。油断した。余計な事を考えていられる相手じゃ無かったって言うのに!?


「お嬢、スイッチ!」

「!」


 思わずその声に私は床を転がる様に後退すると、イカロスの攻撃に合わせるようにナインがその顎を蹴り穿つ。


「なっ、ナイン!?何でここに!?」

「そりゃこっちのセリフだ!何でお前さんウッドロックに居るんだよ!?」

「え?ウッドロック!?」


 どうやら私はとんでもない所に居たようだ。


「とりあえず話は後だ!お嬢はあの連中をとっ捕まえるんだろ?こっちは任せな?」

「いや、そいつには聞きたい事があるから殺しちゃダメ!だから無力化して捕らえといて」

「え?は?ちょっ!?」


 色々聞きたい事は山程あるが、今はアイツらを捕らえないといけない。私はイカロスの相手をナイン達に任せて走り出す。


「ホントにお嬢は〜…」

「殺しちゃダメなの?」


 ナインと共にいたフォウが残念そうに彼の顔を覗き込む。


「とりあえず、行動不能位にしとくかね。再生不能になるか、戦闘意欲が無くなるまでブツ切りにすれば大人しくなんだろ」


 若干怖いワードが飛び出た気もするが気にしない事にする。そんな事気にしてる場合じゃないしね。しかし再び走り出した私の足は予想外の光景を目の当たりにした事で再び止まってしまうのであった。


☆☆☆☆☆


「え?何してんの……アンタ?」


 ユウト達勇者パーティは私達を見下ろしながら逃げる算段をしていた。その筈だった。エマの手には血塗られたナイフが握られていて、ユウトは自分が何をされたのか理解できない様子でエマを見上げる。


「あっ……がっばっ!?は……!?え…ばっ!?」

「あら?やっぱり間に合っちゃったのね。こっちの事に時間かけすぎちゃったかしら?」


 血の塊を吐き続けるユウトはまだ息があるようだ。しかし当のエマは、そんな惨状を引き起こしておきながら静かに佇むばかりで眉ひとつ動かす事すらしない。


「………がはッ…ん……でェッ!?」


 突然の裏切りに信じられない様子で触れようとするユウトの手を蹴りのけるエマ。まるで先程までの様子が嘘であったかの様だ。

 コイツ本当にさっきまでの奴と同一人物なのか?


「ごめんね、ユウト。でもやっぱり私はこれ以上貴方に着いていくのは無理だわ。だって私、貴方のこと昔から好きでも無かったし。むしろ……」


 結っていた髪を解きバサバサとかきあげると装飾が施された髪当てをユウトの足元に放ると、エマは目を見開き《隷属の魔眼(ヒュプノシス)》を発動しユウトの眼を見つめる。エマの行動を見て思わず思考が停止して絶句してしまう。


「あっがっ………!?」

「ずっと……ずーーーっと恨んでたわ。だって貴方、なぁーんにも覚えてないんだもの」


 ───その笑みは、まるで因縁を相手に浮かべる様な憎悪に染まり切っていた。


「じゃあね、ユウト」

「待てェッ!『狂信者』ァァァァッ!!」


 今思えばもっと事を慎重にすべきだったのかも知れない。


「ッ!?……わたしが『狂信者』?」


 エマを引き止める為、此方に注意を向ける為、一瞬でも動きが鈍れば仕留められる。そういった驕りが私にあった。


「く、アハ。あはは……あははははははははは!」

「な、何がおかしいのよ!?どう言う事!?アンタ達仲間だったんじゃないの!?」

「ああ、ごめんなさい。まさか貴女、私の事を『狂信者』だと思って追いかけて来ただなんて思わなかったから」

「え……?」


 選択肢を間違えた、と思い私は固まってしまう。


「残念だけど、私は『狂信者』じゃないわ。『狂信者』は……ユウト(そいつ)よ」

(まさか!?)


 エマの顔が笑みを浮かべて歪む。彼女が指差した方向は私ではなくその後方。私は後方に振り向き硬直してしまう。

 エマはその隙を見逃さず、私に向かって手を翳すと私の足元に魔法陣が展開される。


「《高位精霊魔法:(ホーリージャ)聖なる裁き(ッジメント)!》」

(マズっ!?)


 空から降り注ぐ光が私を照らすとその周囲ごと破壊する。咄嗟の事で私はその場を飛び退くのが間に合わず足を焼かれ下層階に投げ出されてしまう。


「がっ……ギッ………!こぼっッ!ひ…《治癒(ヒール)》ッ!かはっ!」


 激痛が脳髄を駆け巡る。全身を強打していたが、それよりも下腹部の方から燻っている様な臭いや肉が焼ける様な音が私のメンタルを削り落としていく。見れば足は膝下から焼け爛れ、血が噴き出しす程の重度の火傷を負っていたが、まだ辛うじて原型を留めていた。


「んんんんぎっ!ギリィッ!!」


 無理矢理歯を食いしばって叫ぶ声を押し留める。私は歩けなくなる恐怖よりも激痛に支配されて冷静な判断が出来なくなる恐怖で叫ぶ事を拒絶する。


「お嬢ォォッ!?」

「こっちはいいからッ!みんなはそっちに集中してェッ!!」


 ナイン達達が私の方へと駆け寄ろうとするのを制止する。土煙がナイン達の視界を遮っていた様だ。良かった、こんな姿を見られなくて。こんな姿見られたら冷静で居られないでしょ、みんな。


「…んぐッけほっ。……!……ハァ……ハァ……」


 全身を強打した痛みが遅れてやって来て目眩がしたので、少しでも呼吸をしやすくする為に仰向けになる。大の字になって踊り場を見上げると、エマは魔力で造られた大剣を私目掛けて落とそうとしている最中だった。


「………最……悪」


 迫り来る死を喉奥に溜まった血を吐き出しながら呪う。治療しても間に合わない。もし私を助けようとナイン達が近寄ればナイン達も犠牲になる。ナイン達ならアレを躱しながらあの女を仕留めることが出来るはず。私は此処で終わるけど。……後は頼むわよ。


「ぜぇあああああぁぁっっ!」


 私の喉元に落下して来た魔力剣は突如真横からの斬撃によって弾き飛ばされ砕かれる。


「ふう!無事か、マグノリアの?」


 プラチナブロンドの髪を掻き上げ一瞥し私の無事を確認すると、目隠しをしながらエマを見上げる女剣士。

 え?えーと…、スミマセン。一体どちら様でしょうか?


前回から大分間があいてしまってスミマセン。ねこなべです。

もっと早めにあげるつもりではあったんですが、予想外に修正箇所や変更点あったりでかなり時間が掛かってしまいました。


【地名紹介】

☆ウッドロック

・フロンティア大陸西方にある産業町。元々林業と炭鉱業で成り立っていた工業村だったのだが、近隣でDランク指定ダンジョンが公開されてからは冒険者や商人の交流も活発になり町へと発展した。良質な木材等や鉄鉱石が流通している。

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