第六話 破滅フラグとハーレムフラグは類似品
遅くなりました。
【前回のあらすじ】
図書室の主に拉致られました。
「まったく……どうしてこうも頭の痛い案件ばかりやってくるんだか……」
机の上に積み重なった書類はどれもこれも同一人物を起因とした案件ばかりだった。その者類の内容はレベッカ・マグノリアを自分達のパーティに欲しいと言う嘆願書。そしてもう一種類はそのレベッカが探索部から逃げ回るせいで学内で大暴れする生徒が多発していると言う被害届であった。
そのどちらもレベッカのせいでは全く無いではあるのだが、レベッカが逃げ回るせいで学園内は暴動が起きてパニックになりつつある。
「例の子、闘技場で大立ち回りしたんですって?私も見たかったですわぁ」
「アーリ…ッ!会長、取り締まる方の身にもなってください」
つい何時もの口調で呼び捨てにしてしまう所だった。尤も、呼ばれた本人は将来的は義理の姉妹になる予定なのだから気軽に呼んで欲しいと思っているのだが。
「ほーんと、お堅いのですわね。マリーは」
「たとえ、そうなるのだとしても貴女は義理の姉君になる訳ですから公共の場で普段の様に呼び捨てなど出来ません」
お互いため息を吐くが、その方向性は全く噛み合ってはいなかった。
「やっほーい、マリー!居るぅー!?」
ガンガンと生徒会室の扉を叩く音と騒音じみた自分を呼ぶ声に余計に頭痛の種が増えた事にこめかみを抑えるマリーと呼ばれた少女。そして生徒会長と呼ばれる少女は、その様子を見て思わず吹き出してしまった。
☆☆☆☆☆
「それで、久々に引きこもりから出てきたと思ったら一体何の用だエリー?」
「まーまー、そんなに警戒しないでよ、マリー」
「警戒もするよ。お前、転移陣を稼働させたな?あんなコストの掛かる魔法陣を起動させるなど何かあったと思う方が普通だろう。それに…」
その目線の先に居るのは目下の問題児(不本意)の私である。
「何故レベッカ・マグノリアがここに居る?」
「ど、どうもー…」
とんでもない厄介者を連れて来られたと言う様な御様子。
わたしはむじつだー。いったいわたしがなにをしたー?べんごしをよべぇー。
「はぁ、それで?どうしてこうなったんだ?」
「いやそれがね。この娘、図書室に逃げ込んできちゃったんだよね。ただ、あそこで居場所がバレて禁書にでも触れられたらマズイじゃん?」
と言うかなんで禁書なんて学校の図書室に置いてあんのよ?生徒会長とマリーさんの表情が凍りついてんじゃない。それにしてもこの二人ってなんかどっかで見たことがあった様な?
「それで連れて来たと言うのか。ハァ、一体何を考えている?」
「それでなんだけどさ。こないだ生徒会室に忍び込んでオヤツを物色しに来た時にコレを見かけたのを思い出してさ。丁度いいと思ってね」
被害届やら嘆願書の束を摘んでピラピラと振るうエリー。オイ。アンタ、オヤツを物色する為にも転移陣使ってたんじゃなかろうな?無駄な事のためにどんだけ無駄な事してんのよ!?
「はぁ。お茶会の為の御菓子類が減っていたと思ったらお前が原因か。まぁ良い、それで?その事と彼女を連れて来た事と何の関係があると言うんだ?」
いいんだ…?よっぽどいつもやらかしてんだろうなぁ。
「にっぶいなぁ〜。その為のレベッカじゃないか。レベッカは君には劣るかもしれないが相当なレベルの戦闘技能者だ。それ故に探索部からは付け狙われる。だが、レベッカはそれを望んでいない。んで逃げ回るから被害が広がるわけじゃない?」
「ふむ?」
「そんでもって、風紀委員としては取り締まるのにも戦力が足りないわけだ。そこで、私が考えたのはレベッカを風紀委員に入れてしまうと言うものさ」
なるほど。いやまって!?
「ちょっと待ってください!?意味がわからないんですが!?」
「その方が色々と片付くんだよ。探索部の連中も風紀委員の執行部とまで争う訳にもいかないし、レベッカが執行部に入れば探索部に追われる心配も無くなる。逆に取り締まる側に回る訳だからね。それに、そうしてくれた方が風紀委員の戦力も強化される訳だし」
いやいやいや、そんな簡単に入れるとこでもないでしょ!?ほら、マリーさんだって困って固まってんじゃん!?
「なるほど……、一理あるな」
ちょっと、まりーさん?
「でしょー?私の所にいてもトラブるのが目に見えてるし、此処はマリーのとこに入れるのがイチバンだってー」
マリーさん気づいてー。その人面倒事押し付けてるだけだからー。生徒会長さんもそれに気付いてさっきから笑いを堪えっぱなしだからー。
「分かった。そう言う事なら彼女は風紀委員で預かろう。レベッカ、そう言う事だが異存はないだろうか?」
あ、これあかん奴やん。拒否権ない奴やん。
「ハイ……ヨロシク……オネガイシマス」
「ああ、宜しく。改めて自己紹介をしよう。私の名はマリア・クルス・リドルーナ。この学園で風紀委員執行部の委員長をしている者だ」
「れ…レベッカ・マグノリアです。よろしくお願いします……へ?」
どうやらここに来て神様はとんでもない破滅フラグを私にプレゼントしに来た様です。
☆☆☆☆☆
「いやぁー、丸く収まって良かった良かった」
「良か無いですよ。初めからそのつもりだったんですね?」
要件を済ませた私達は生徒会長とマリアさんに見送られながら生徒会室を後にする。
「偶然だよ。キミが図書室に潜り込んでくる時まではね」
「はあ……」
マリアさんから早速と言わんばかりに風紀委員の腕章とバッジを手渡された後、何処で噂を聞きつけて来たのか、生徒会室に集まって来た探索部の面々の前で就任式をやる事になり装着を余儀なくされる。まぁ、お陰で探索部も諦めてはくれたけれども本当にどうしてこうなった。
「私も君のことが気に入ったからさ。今度は気兼ね無く図書室に遊びに来るといい。お茶位は出すよ?それにきっと……姉さんも君の事が気に入るはずさ」
え?
「会ったこともないのにどうしてそんな事が?」
「分かるさ。だって……」
そう言いながら彼女は廊下の窓に映る夕焼けをバックに懐中時計を開く。そこに何が映っているのかはこちらからは見えないが、エリーの表情はどこか物憂げだった。
「さて、と。私はこれから人に会う約束があるので失礼するよ」
「え?今から?」
「野暮な事をきくんじゃないよ。これから婚約者と会う予定なんだ。気乗りはしないけどね」
「ふ、婚約者!?そんなの居たんですか!?」
「まーね。ふふん、こんなナリでも一応準侯爵の貴族だからねー。結構偉い御家柄なのよ?」
まじかー。マグノリアより上なのかー。まぁウチは辺境な上に伯爵家だった気がするけど。
因みに同じ階級でもの貴族と辺境の貴族と言うのでもかなり格差がある。準侯爵でも中央に居を構えるエリーさんは実のところ相当なお偉いさんの御令嬢と言うことになる訳である。
「と言うか婚約者って何処の貴族様なんです?エリーの家と釣り合うレベルとなると相当高そうですけど」
「うん、こないだキミと決闘してたヤツ」
「……………oh」
ケラケラと笑うエリー。
「だいじょーぶだって。私もアイツはあんまし好きじゃないし」
「イカオル……でしたっけ?」
「ぷひゅーっ!?アッハハハハ!アイツ名前もマトモに覚えてもらえてないのかよ!?イカロスだよイカロス。くっくっくっ!」
イカ何某氏、イカロスって名前だったらしい。アレ?司会も当の本人もイカオルって言ってなかった?私の聞き違い、いやそもそも聞く気も覚える気も無かったからどうでも良かったけど。
「じゃあね、レベッカ。これに懲りたらあまり目立つ行動は控えなさいよー」
「いやいやいや。好き好んでトラブルに巻き込まれたくないし目立ちたくもないです」
言いたい事だけ言って行ってしまいやがった。なんて自由な人なんだか。私もあんな風に生きられたらなぁ。
死亡フラグやら破滅フラグやらフランクなノリで次から次へとやってくるし。でも、なんでマリアとの関係が破滅フラグになるんだっけ?どっちかっていうと私が彼女の破滅フラグの原因な気がする筈なのだけど……。
☆☆☆☆☆
その夜。図書室に一人佇むエレイシアは昼間の自由奔放さが嘘の様に静かに誰かに宛てたメモ書きにメッセージを書いている最中であった。
宛先は我が愛しの姉。内容はここ数日の出来事と今日遭遇した騒々しい侵入者にして新たな友人の事、その友人が姉の置いて行った本に興味を示していた事、そして恐らくはその本を読む事が可能或いはそもそもあの本そのものを知っている可能性がある事。
懐中時計を開いて時間を確認していると、ドアをノックする音がする。
「遅くなってすまなかったね」
「いえ。こちらこそ出迎えもせず、この様な場所まで御足労申し訳ありません。アドニス卿」
メモに新たな友人の名を記載してペンを置くと、デスクから離れ図書室に入室して来たアドニス侯爵を迎えるエレイシア。
「なに、かまわんよ。此方の都合に無理に付き合わせてしまっているのだ。ところで、本日は姉君は?」
「姉は書庫に」
「では丹色の雫はマタンのバーテンダーに」
「畏まりました」
一礼すると、エレイシアは中央のゲートを開き、アドニス侯爵はそのゲートに乗り何処かへと消えて行った。残されたエレイシアはゲートを閉じ、再びデスクに戻り読みかけてた読書を再開し始めた。
一方、ゲートが閉じたのを確認すると図書室の外に待たされている筈のイカロスが意を決してエレイシアの元に向かって行くのだった。
体調崩してしまい、暫くろくに執筆出来ませんでした。
申し訳ないです。次回からはなる早で頑張ります。




