第四話 リミットクエスト
【前回のあらすじ】
決闘はドロー
「ない……ない………ないいいいい!!」
学園での入学式が終わった後、一時帰宅した私は自室に篭ってレイに渡されたリストを再確認していた。あの場では冷静さを保つ為と確認を全てしていなかった為にこんなに取り乱してはいなかったけど、何度見直しても目当ての名前はリストを見ても、入学者名簿を見てもどこにも無かった。
「なんでパリスちゃん居ないのよぉ!?」
私が言っているのはパリス・クラール。本編におけるレベッカの親友ポジションに当たる人物。そして後の十輝星の一人、『星煌の拳聖』と呼ばれる存在だ。当然ながら主人公の一人であり、攻略対象の一人である。
(まぁ…今の時点で既にゲームとは全然違うけどさ)
よくよく考えたら本来レイ達と出会うのは学園でのマリア襲来イベントだったし、そもそも入学式イベントであんな決闘騒動にはなんないし、更に言うと決闘騒動になるのはレベッカじゃなくて……アレ?誰だったっけ?私じゃなかったのは確かなんだけど……。
「こうなると私の記憶も怪しくなってきたなぁ…」
別に記憶障害って訳じゃないと思いたい。けれども、メインヒロインの一人が居ないって言うのはなんか不安になる。
(ここは一つ、おじさまに確認とるべきかなぁ?)
と言う事でおじさまに確認を取るのだった。
☆☆☆☆☆
「クラール家だったらもう既に無くなってるよ」
「は!?」
「ああ、申し訳ない。私の方で貴女方には伏せて置く様にしていたのだったな。失敬」
意外にもあっさり答えてくれた。クラール家が無くなっていたことにも驚いたが私達に伏せて置くってどういうことだろうか。思わず伏せて置くことすら忘れてしまう程私がこの家に馴染めてきたということだろうか?それはともかく真相を聞き出さなければ。
「え、ええと……それは何故なのでしょう?」
「おや、知らなかったのかな?君の母君は元々クラール家の出身なのだよ」
なんかどんどん新たな真実が次から次へと出てくるな。
「懐かしいな。学生時代、トリシャを巡ってヒューズとは何度も決闘を繰り広げたものだ」
初耳だわ!?
「結局トリシャはヒューズを選び、私はアイナと結ばれ息子を授かったのさ。以来、我々は階級や地位を超えた親友同士だったのだよ」
さらに初耳だわ!?
「あの……おじさま。奥方は?」
そう言えばこの二年そんな存在見た事がない。もしかしたら私達どえらいお邪魔者なのでは……?
「今は外国を経験させようと息子を連れて外交次官として海外を飛び回っているよ」
「そ、そうなのですかー」
流石貴族。私らなんぞ家に入れた事なんて大した事じゃないのかー。日本と違うなぁ。
「まぁ、手紙を出したことだし、じき帰ってくるとは思うがね」
「ゴブフゥッ!?」
思わず頂いた紅茶を吹き出した。
「だ、大丈夫かね?」
「大丈夫です!むしろおじさまが大丈夫ですか!?」
「何をだね?」
咳き込むことすら忘れておじさまの夫婦生活の安否を心配するが当のおじさまは首を傾げてる始末である。
「奥方様の留守中に私達を家に入れた事がです!」
「ああ、その事か。きっと気が気じゃないだろうね」
でしょうね!?
「アイナもトリシャの事を実の妹のように可愛がっていたからねぇ」
そう言う意味で!?
「貴女が生まれた時も私達は貴女の家にお邪魔していたのだよ。あの時のヒューズの狼狽えようと言ったら。プッフフフフフ」
なんか凄い関係性が生まれている……。
「おっと話が逸れたな。私が君達を保護したのは勿論君が聖女である事も含まれるけれども、大部分は彼奴の奥方やその愛娘の安否を放って置く事が出来なかったと言う部分が大きく占めているのだよ。
それに、もし君達を見捨てたら私はアイナから離縁を迫られるどころか首を刎ねられかねないからね」
爆笑しながらブラックジョークをかましてくるおじさまに私は引き攣りながら苦笑いし、そして同時に心の底からフリード夫妻に感謝をするのだった。
「さて、先程の質問だったね。2年前のダンジョンブレイクの際に私達は本来なら直接ドーラ山脈に入り君の保護に向かう予定だった。
しかしクラール領の方からなら補給と共にパリス嬢の保護も可能と言う事で、クラール領の首都パザールに向かったのだが残念ながら到着した頃にはダンジョンブレイクの被害に遭い街中はハイキブツだらけだった。
何とかクラール家の屋敷にはたどり着いたが、もうその時には既に手遅れだったのだよ……」
「そうでしたか……」
そのおじさまの顔は後悔と懺悔とも取れる苦々しい表情だった。
☆☆☆☆☆
おじさまとの談話を済ませ、自室に戻った私はリストを放り出しながらベッドに寝転ぶ。
「……ちょっと意外だったなぁ」
まさかそんな風に気遣ってくれていたなんて思わなかった。
おじさまも、もっと早く到着していればとも思ったのだろう。しかし、クラール家の屋敷は街の中にあり、その街パザールもまた数あるドーラ山脈の鉱山洞から割と近い位置にある都市である。対処もなにも真っ先にその被害を被ってしまった事だろう。
信じられない事に、領主の死亡を始めとして領主邸宅含め領地内の農村4箇所壊滅と言った様な被害を叩き出したマグノリア領でもあのダンジョンブレイクの被害はまだ少ない方だったのだ。
後で知った事だが、もっと酷いところだと辺境首都壊滅は当然の事、今現在でも冒険者ギルドですら機能していない所もあるのだとか。ドーラ山脈の出入り口かどれだけ多く存在していたか窺い知れる。
そして一番の問題は今なお裏で糸を引いていた存在はわかっていないと言う事だった。おじさま曰く、聖女選定の儀の同行者であった司祭が怪しいと思われていた。しかし、そもそもそんな物を持ち出して問題になれば即刻処刑ものである。果たして司祭如きがそこまでのリスクを負う必要性があるのか?と言う問題点がそこにあった。
(そもそも、聖女を選出する気があったのかって話よね。今考えると)
そんな事をぼーっと天井を見つめながら考えていた時だった。
【リミットクエスト】の条件を満たしました。
『LQ-FH-2-r -Fanatica et superbia-』を開始します。
「えっ!?」
なっ!?なに!?なにが起きたの!?
突然の事で動揺する。突如聞こえた機械的なアナウンスの様な声に驚いて飛び上がると目の前に妙なものが浮かんでいるのが目に付いた。
「な、何これ?」
何とか落ち着いてよく見ると視線の右下に見慣れないウィンドウメニューが浮いている様に見える。気を整理してよく見るとLimitQuestと書かれたメニュー欄であり、そこには数字が刻まれており、カウントダウンが既に始まっていた。
「リミット……クエスト……?」
とんでもなく嫌な予感がする。まるであのダンジョンブレイクがまた再来するんじゃないかと言うくらいの恐怖感が私を襲う。まるでこの世界が急に現実からゲームになってしまったかの様な非現実感。
「や…やめてよ。私やっとこの世界がゲームなんかじゃなくて現実だって思える様になってきたんだから…ッ!こんなタチの悪い冗談やめてよ……」
私は恐る恐るクエストウィンドウと思わしきモノに指を近づけていく。見るな見るなと心の声が叫び続ける。そんな意思とは関係なく絶対に見なくてはならないと言われている気がして私の指はそのウィンドを通り抜ける。何かに触れた様な感覚がすると同時にクエストウィンドウが開きその概要が開かれた。
「な、なに……コレ……?」
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『LQ-FH-2-r -Fanatica et superbia-』
世界に不正にアクセスする不正行為が行われました。
該当者を適切に処理して下さい。
《該当対象》
★傲慢な狂信者
★ゲートキーパー
《成功報酬》
☆学園都市プロテア
☆学園都市プロテアの住人
☆エクストラクラス・キー2の解放
制限時間を超えてしまう場合、クエスト失敗となり
【ペナルティクエスト】に移行します。
『PQ-FH-2-r -Exedere mundum-』
開かれたゲートから世界が侵食されていきます。速やかに該当者を該当者を制圧、無効化、討伐して下さい。時間経過と共に成功報酬から差し引かれ事態が深刻化します。
クエスト時間 29日23時間58分40秒
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書いてある内容が理解できない。そもそも何故私がこんな事を?と言う理由の方が大きいかも知れない。あまりにも非現実的過ぎて逆に冷静になってしまう。
そこでふとある事に気付き、このクエスト内容を全てよく読み直してみる。寧ろ気付いてしまったと言うべきだろうか?
「……………へ、ヘルプメニュー………」
信じたくは無い。存在してほしく無い。その思いだけだった。
クエストメニューが存在するのだからこれが無い筈が無い。しかし、こんなにも失敗時のデメリットまで詳細に書かれているのだとしたら
……閉じた瞼をゆっくりと開くと指先には別のアイコンが表示されていた。
「……くっ!」
指先でそのアイコンを叩く動作をすると様々なメニューリストと検索項目らしき空白が浮き出す。
「まずは調べなきゃ。このリミットクエストって言うのを」
それが何なのかを調べなければこの先に進めないし、対処もできない。既にこのリミットクエストは始まってしまっているのだから。
「検索、リミットクエスト概要」
リミットクエストの概要欄が表示される。私はその概要見て愕然とする。そしてそれは先程想定していた以上の絶望を思い知らされる事になるのだった。
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☆リミットクエスト☆
制限時間が設けられた特殊なクエスト。
クエスト受注者、若しくはそれ以外の者がクエスト内容を達成する事でクエストを終了させることが出来る。ただし、クエスト受注者がクエストを開始してからの制限時間を超過した場合、【ペナルティクエスト】に移行する。
また、このクエストは途中リタイヤする事は出来ず、超過した際のペナルティはクエスト終了するまで発生し続ける。
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信じたくはなかった。それでも……
(もしも……。もしもナタリーの一件が、あのダンジョンブレイクが、このペナルティクエストによるモノだったのだとしたら……)
考えたくは無い。考えたくは無いけれど。もしあのダンジョンブレイクが私のせいで起きてしまった事なのだとしたら……。
「検索!ナタリー・ダーニック!ダンジョンブレイク!ぺ……ペナルティクエスト!」
長い沈黙が流れた。
私はその間、恐怖で目を開けることが出来なかった。
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/検索結果 該当項目1件/
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「ひッ!?」
目を開けた瞬間そこに飛び込んできたのは絶望そのものだった。震える手を何とか掴んでその項目を開く。
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該当クエスト
『LQ-FH-1-c -Saint electio-』
世界に不正にアクセスする不正行為が行われました。
速やかに対象を処理して下さい。
《該当対象》
☆【暴食】コア
《成功報酬》
☆ドーラ山脈近郊
☆エクストラクラス・キー1の解放
《経過報告》
制限時間を長期に渡り超過した為、システムをナイトメアモードに移行。更にペナルティクエスト『PQ -FH-1-c -Incursio comedere-』を発令。ペナルティタイム178時間経過後レベッカ・マグノリアにより制圧完了とし、ペナルティクエストを終了。成功報酬〈エクストラクラス・キー1〉取得権利をレベッカ・マグノリアに移行。
『LQ-FH-1-c 発令者
ソレイア・アクリシア・ガラム・ファムト・グリーンウル』
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「なにこれ?経過報告……?」
もしかしたらあの選定は聖女を選定する事が目的だったのではなく、このリミットクエストを利用して聖女候補を全て炙り出し、根こそぎ皆殺しにする為に行われた事だったのかも知れない。
ところが、そこでおじさまが私を聖女として認定してしまった。その為に急遽、ダンジョンブレイクに乗じ聖女認定を受けた私ごと殺してしまえる様にダーニック家を唆したのではないか?
そう考えると、何故か腑に落ちてしまうのだ。あの大虐殺の本当の理由。
「嘘……でしょ……?」
ゾッとする。妄想染みた話が確信に変わってしまった様な気がした。私は恐怖と吐き気でメニューリストを全て閉じてしまう。
だが私はここで一つミスを犯してしまう。リミットクエストについて調べたのならばペナルティクエストについても調べるべきだったのだ。
そしてこのソレイアと言う名前を後々になって知る事になる。そして、まさかこのソレイアと言う人物が私にとって本当の意味で因縁の相手になる事になるとは今はまだ知る由もなかった。
これからの導入にあたり色々と試行錯誤したりして遅くなりました。随分お待たせしてしまってすみません。




