第一話 運命は突然に
第二章、開幕です。
───私は本当に恵まれていると思う───
わたしは本が好きだった。古今東西あらゆる本が集う場所。図書館司書、それが私の職業だった。
あらゆる文学、あらゆる小説、あらゆる歴史書、漫画だって娯楽本だってそこには描いた本人にしか描けないストーリーが存在する。
その人の人生を、その人の想いを、楽しみを、喜びを、嘆きを、苦しみを、そこには全てが込められている。
私はその世界を読んで共感している時間が何よりも何よりも大切で愉しくて嬉しくてかけがえがなくて……
───今の一生なんかではとても足りなさすぎて───
どうしたらもっともっと私はこの幸せな世界に浸れていられるのだろうか?私は司書の仕事をしながらずっとそんな事ばかりを考えて生きてきた。
そんな時私は一冊の小説に出会った。それは、ある二人の姉妹の物語。それは、運命に翻弄されて幸せになるどころか、余りにも報われない姉妹の物語。役目を押し付けられて、役目から逃れられなくて、結局運命を受け入れざるを得なくて……。二人共命を掛けて役目を果たして命を落としてしまう物語。
──私ならこんな結末になんて絶対しないのに──
気がつくと私は血塗れで倒れていた。
───ああ、私は───
体から体温が消えていく、そんな表現が本当にあったなんて。胸から下の感覚が無い。押しつぶされて千切れてしまった私は投げ出される様に地面に転がっていた。
───私は、死ぬのか───
周りで叫び声が聞こえる。野次馬達が私に向けてカメラを向けて写真を撮るのが見える。恐らく事故を起こしたであろう運転手がわめき散らす様に自分の無実を訴えている。そこに悪意があろうとなかろうと彼らは同じ様に行動する。
ああ、本当になんて理不尽なのだろう?私は彼らの欲求を満たす為の情報にされ、私は彼らの日常を彩る情報にされ、そして忘れ去られるのだ。
何で私は人間になんて生まれてしまったのだろう?
何で私はこんな世界に生まれてしまったのだろう?
──ふざけるな───
ギチリと真っ赤に染まる世界を睨みつけながら私は彼らに憎悪を向ける。
───オマエタチモミチズレダ───
かぜがふく。まっかなまっかなかぜがふく。あたりいちめんでさけびごえがする。
「あは……」
もえるもえるなにもかも。
「あははは……」
まるでちりがまきあげられるように、なにもかもがふきとばされる。おおきなおおきな◼️◼️がおちてきてなにもかもをやきつくす。
「あはははハハハははハハハははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
ーーーそれが私が見た最期の光景だった。
☆☆☆☆☆
「私が学園にですか?」
「そうだとも。君ももうすぐ15歳だ。そろそろ学園で勉学を学ぶ年頃だろう」
ダーニック家のクーデターから2年の月日が流れていた。ファロス伯爵が後見人という形で保護された私達は現在フリード家に身を寄せている身である。
「ですがおじさま。こう言ってはなんですが、わたくしがそこまでしていただいてしまってよろしいのでしょうか?」
「まぁ、私もただの慈善事業でやる訳ではないけれどね。当然ながら私にも下心はあるよ」
ここで言う下心とは私の体目当てという訳ではない。まぁ似た様なものだけど。
「私としても貴女が無事聖女として成長してくれることを願っておりますし、そうしてくれれば私も聖女の後見人としての立場もより強いものになりますからなぁ」
「ははは、努力しまーす(この人なーんか私の天命見破ってる節あるんだよなぁ〜…;)」
さてこの世界の常識と言う訳ではないけども、一般的な学業についてここで説明しておこう。基本的に満14歳までは在宅で武術、学問、魔法学を一通り学び、満15歳から3年間の間に自分に合った学問を専攻し、卒業と共に国の機関に配属される事になる。
ただし、その査定により入学出来るのはあくまでも一般市民以上である。更に言えば、一度目の選定で入学出来るか否かを決められてしまう。
全ては天命が優先され、次に血筋、そして金である。
(ホント世の中クソだよ、全く……)
特定の天命すらない一般人は入学すら出来ない。貴族ならば何らかの処置で入学させることは出来るが基本的にそんな事が罷り通る訳はない。
ましてやスラム出身ともなれば目も当てられない。昨今、冒険者ですら学園卒業者がいるレベルだ。
それでも私が苦労して強引にでもレベリングしていたのには訳がある。それはレイ達『影』のメンバーに学力をつけさせる為である。護衛をして貰うのもそうだけども、それよりもレイ達の学力差が激しいのなんのって。
「でしたら、おじさま。わたくしの付き人、そして護衛生徒の件はわたくしが選んでも宜しいでしょうか?」
「構いませんよ。貴女を含め5名まで許可しましょう」
つまりは4人まで学園に通える事になる。そんな訳で付き人メイドとしてドロシー、護衛としてレイ、アイン、トエを連れて行くことにした。
トワは一応私が勉強教えたら速攻で逃げたからダメだなぁと言う印象。なので諦めるしかなかった。逆にトエは童話本が好きなようで自分で読む為に頑張って文字を読むことまでは覚えた。意外な一面を見つけた。
レイとアインはどちらも年長組という事とこれから二人には私の手と足となってもらわねばならないので強制連行。レイは心底嫌がってたけどアインは快く(レイの強制連行にも)引き受けてくれた。
(本当は『影』のメンバー全員連れて行きたかったけどねー)
レイとアインはともかくそれ以外のメンバーが年齢も性別もバラバラで下は14歳、上は195歳ともう成人終わってしまってる人までいるのでそもそも学園通えない人が居る。と言うか学園卒業者まで『影』には居る。そんな卒業者が一応勉強を見てはいた様だけども。………うん、お察しください。
『あそこは好き好んで行くような場所じゃない。人間の腐った部分が剥き出しの魔窟だよ』とは学園卒業者にして『影』メンバーのナイン。嫌だなぁ〜、そんな前情報要らないよ。
知ってるから……。ゲーム知識でだけどな!
☆☆☆☆☆
そしてそんなやりとりがあった数ヶ月後の現在。校長先生の長ったらしいスピーチの後。レベル測定が始まったのであった。
「インチキだ!不正だ!この恥知らずが!!」
見れば何処ぞのお偉い貴族様なのだろう。私を指差して怒鳴り散らしている。そんな様子をニヤニヤしながら護衛すらしないで傍観するレイ。カタナを腰に構え、今にも斬りかかりそうな様子で暴言を吐く貴族を睨みつけるドロシー。頭を抱えながら少し離れた位置で様子を伺うアイン。そんなアインに抱きかかえられながら殺意を剥き出しにするトエ。
おっおぅー。どうしろって言うんだよコレ……。
そんな私の心情をガン無視するかの様にレベル測定値は77を弾き出していた。
どうもねこなべです。
とっかかりが上手くまとまらなくて時間かかりました。




