第十六話 八つ当たり
前回のあらすじ
レベッカVSナタリー(前哨戦)
「来なよ、ナタリー・ダーニック。アンタには私の八つ当たりに付き合ってもらうわよ」
なんなんだコイツ?空気が変わった?
何なのよ?何で私がこんな目に合わなきゃ行けないのよ?
私だってナタリー・ダーニックになんてなりたくなんてなかった!しょうがないじゃない。私がレベッカになるにはレベッカを殺して私がレベッカに成り変わるしかなかったんだから!
この世界に転生してからずっと私はレベッカになれなくても聖女になれる様にと努力して来た。それでも私の天命は『僧侶』のまま。ナタリーの父も母も私が『聖女』である事を望み、それが当然であるとし、その為の英才教育だってさせられて来た。
それなのに現実は残酷で、物語はやはり変える事など出来はしなかった。
選抜の儀式の際、私は最初の水晶が偽物でただのガラス玉だと言うことまでは見抜いた。当然知っていたから。でも、本物の輝星核を輝かせる事迄には至らなかった。聖女になれなかった私に父も母もあの屈辱的な一言を私に言いつけたのだ。
『この役立たずめ。ダーニック家の恥さらしめ』と。
何のために私は耐えたのか?自分の運命を変えようとして来たのに何でこんな事を言われなければならないのか?この13年の月日は何だったのか?
───そうして私はレベッカに成り変わる事にしたのだ。
たとえ、どんな犠牲を生み出そうとも───
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防戦一方になっているシロガミを一方的に殴りつけるレベッカは堪らずやり返して来た一撃を身体を僅かに晒して回避して蹴り落とした。
あくまでもシロガミは人間である事、正々堂々と戦う事を望んでいた事、そして単純に戦闘経験の不足さが二人の戦闘能力に大きな開きが生まれてしまっていた。
そして精密性の上でなら彼女のステータスが理想のレベッカのステータスを模したものだった為に、TECスキルに大幅なステータス差が生まれてしまった事も一因でもあった。
その為、いくらシロガミが武器を振り回してもレベッカに弾き返され、体術を繰り出しては避けられる。
(にしてもコイツ、ほんっと硬ったいわねぇっ!)
一方でレベッカの方も攻めあぐねていた。本来理想とされるレベッカのステータスはTECスキルよりも、VITスキルと天命【癒しの聖女】によって底上げされたMIDスキルを更に強化してカンストさせ、詠唱速度の補足としてTECスキルを残りのポイントを振り分けするいわゆる盾役をこなせるヒーラーである。
その為、本来の自分とは違うスキルの振り分け方をしているレベッカはシロガミの攻撃をいなすことは出来ても決定打を与える事が出来なかった。
「っくっ!」
「ぐかっ!?バァッ!ハアッ!はあっ!」
その様は戦車に鉄パイプで殴りかかっている様なもの。ダメージらしいダメージが入らない。むしろ、自分の武器の方が徐々に耐久性が落ちてしまっていた。
(ま、硬い相手だからって手がない訳じゃないけどね)
シロガミがこんなにもレベルが高いのはマッドイーターを食料にしていたに違いないだろう。実際、レベッカは先程レイ達と一緒にマッドイーターを駆除していた際、スキルポイントを得る程の経験値を稼げてしまっていた。
「っらぁっ!」
「がちん!」
「げっ!?」
渾身の一撃は口で噛み止められ、ボキリとスパイクを真っ二つにへし折られてしまう。
「だからって予備の武器がないわけじゃないけどね」
レベッカは《空間収納》の中からソードメイスを引き抜くと、ニタリとシロガミにほくそ笑むのだった。
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「何で?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で!?」
おっおぅー♪どうやら自分の思い通りに行かない事が遂に限界来ちゃった様だ。
「私の方が強い筈なのにッ!私の方がレベッカに相応しいのに!何でこんなニセモノに勝てないの!?」
そりゃ仕方ないね。私ニセモノじゃなくて正真正銘レベッカ・マグノリアなんだもの。いくら嘆こうが喚こうが、んなもん知ったこっちゃない。
「何でよ!?何でなのよ!!」
「そりゃ、アンタがレベッカなんかで私に挑むからでしょ?」
思わず呆けてしまった様だ。
「アンタがレベッカの何を知ってるのか知らないけど、これだけは言えるわ。今まで百数十回、私はレベッカを殺し続けて来たのよ?
それこそ、レイ達なんかよりよっぽど私の方がレベッカを簡単に殺せるわ」
「は………?はあああああああああっ!?」
そらそーいう反応になるわよね。もちろんゲームでの話である。毒殺、殴殺、刺殺、絞殺、没殺など直接手を下すものから、誅殺、戦死、事故、流れ矢、巻き込みなんていうのもあったなー。
とにかく私はレベッカをゲームで散々殺しまくった。それこそ私がLv25でもあれば向こうが50以上Lv差があろうが、相手がレベッカなら殺せる自信があるわー。私、レベッカの事殺し過ぎだろってくらい。
「そんなに私の事が殺したい?」
見下す様に地に伏せるシロガミに顔を近づける。
「だったら教えてあげるわ。貴女がバケモノになれば良い。理想のレベッカなんか放り出してね」
その言葉をどう受け止めたのだろうか?彼女は発狂こそすれど、バケモノにはならなかった。
もし私のトラウマ、マッドイーターにでもなれば邪眼だの捕食だのと厄介なスキルのオンパレードで私では対処する事はできなかったろう。
「残念ね、ナタリー・ダーニック。貴女は結局、私に成り代わる事を諦められなかった」
ソードメイスを振り上げ、ナタリー・ダーニックを弾き返す。私はソードメイスを地面に突き刺すと、折れたスパイクの柄を取り出し投擲の構えを取る。
「!?くっ!」
惜しい。非常に残念。私の行動に何かしらの脅威を感じたのだろう。身体を硬化させ弾き返すつもりの様だ。けどね、悪いね。コレ、投擲じゃないんだわ。
「ミックススキル……」
「え?」
とん、と彼女の胸に軽く当てる様に突き刺すと、掌に柄の先端を当て、
「《鎧通し》」
足を踏み抜きその掌を押し込む様に柄の先端を掌で打ち込み、ナタリーの核を破壊した。
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どうやら私は気を失っていた様だ。全身が軋む様に痛い。胸に手を当てると核がある辺りには大きな孔が空いており、先程の一撃の威力を物語っていた。
「それで……お前は何をしているの?」
「見りゃわかるでしょ?延命治療よ。延命治療」
死ぬのも時間の問題だと言うのに……。
「無駄なことを」
「うっさい。どうせ死ぬなら有意義な情報吐いてから死ね」
ロクでもないなこの女。
「それで、何が聞きたいのよ?」
「そうね……。フジヤマ、トウキョウタワー、スカイツリー、オダイバ、シブヤ、トウキョウデ……は色々危ないか。まぁ良いわ。この中で知ってる物ある?」
「何それ。フジヤマって、富士山でしょ?って言うかそれ以外全部東京じゃな…!?」
その言葉を聞いてレベッカは私の肩を掴みかかって来る。
「あ、貴女……日本人……なのね……!?」
その目には涙が溢れていた。
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正直信じられない気持ちでいっぱいだった。私以外にも転生者がいた。それも日本人。
「ごめんね。貴女にレベッカを貴女に譲れなくて」
「ここまでやっといて良く言えるわね、そんな事」
あいにくわたくしも死にたくありません。
「レベッカを代わってあげる事は出来ないけど何か私にできる事はある?」
「そうね……だったら………」
私は彼女の依頼を受け、《持続療治癒》を止める。
「待って……これ……も……持って……いって………」
そう言うと彼女は自分の右腕を引きちぎり、私に渡して来る。
「証拠が必要………でしょ?……依頼、よろしくね……」
そう最期の言葉を残すと引きちぎった腕を残してぼろぼろとシロガミは消滅していった。
「ホント、面倒な依頼受けちゃったなぁ……。しかもコレどうすんのよ?……めっちゃ呪われそうなんだけど」
さてと、この後どうするかなぁ……。残された腕を手に取りながら隠そうともしない後ろからの気配にため息を吐く。
「おや、珍しいところでお会いできましたな?レベッカ嬢」
「あはは〜……。どうも、伯爵。こんばんは」
私はフリード卿とその側近達に捕まっているドロシーやレイ達を目の当たりにして、苦笑いしながら伯爵に挨拶をする事しか出来なかったのだった。
遅筆でごめんなさい。
補足
・ミックススキルについて
習得しているコモンスキル同士を組み合わせて新しいスキルを生み出す。クラススキルや固有スキルと組み合わせることは出来ないが非常にバリエーション豊かかつスペックの高いスキルを生み出す事が可能。
攻撃スキル、補助スキル、回復スキル、防御スキル等と系統が違う物同士を組み合わせて全く違う系統のスキルが生まれることがある他、スキルに使用条件をつける事で更にスペックを引き上げることが出来る。
作中レベッカが使った《鎧通し》は
投擲+スマッシュと言う組み合わせで使用が可能。
投擲扱いのスキルなので武器を消費し、攻撃対象との距離が密着に近ければ近いほど威力を底上げし、0距離の場合に限り防御力を貫通する特徴がある。
(一応、離れていても使用可能)




