第十三話 ナイトメアパニックパレード.3
前回のあらすじ
最強の布陣が爆誕!
やった!これで生きる!(死亡フラグ)
「なぁにぃあれぇ……?」
ドーラ洞窟からかなり離れた位置から《捜索》を使う。『兵隊』の反応が二箇所から動きが見える。一つは『兵隊』がわらわらと一つの洞窟から出てくる。もう一つの反応は『兵隊』ではあるのだが『兵隊』よりも大きな反応が複数、それがドーラ洞窟の方に向かって行く。あんな所に洞窟なんてあったっけ?
「とりあえずこんなとこかなー?」
地図を取り出すと反応があった場所に印を書き入れてみんなに見せる。やはり出てくる方には皆場所に覚えがあるみたいだけど、入って行く方には覚えが無いようだ。
「するとやっぱ新たに掘ったとかか?でもあの辺りって鉱山だろ?バケモンとは言え掘れるモンなのか?」
「ワームなどに寄生すれば可能かと。ですがお嬢様、ワームのようなモノは」
「うん、居ない。今反応があるのは一種類だけ。もう色々言われるだろうけど私つい最近までソロでドーラ洞窟でレベリングしてたけどあんなの居なかった。普通にゴブリンとかスライムとか強いのでもグレイベア辺りしかいなかった気がする」
「ならばやはり《捕食》して無理矢理作ったんでしょうね。アレは巣の拡張も行う様ですから」
「マジかー……。まー、何にしても発生したのは最近じゃない?いくら捕食を繰り返すって言ったって一種類だけになるって言うのは繁殖速度が異常だけど」
「ですから面倒なのですよ、『女王蟻』は。一国を攻め落とすのに『女王蟻』が一個有れば十分と言われるほどですから」
そんな会話に冒険者ギルドから派遣されて来たメンバーが引いていた。
「え?このお嬢様、あんな所に出入りしてたの?」
「冒険者ギルドの連中だって五人位でパーティー組んで行くとこなのに?」
そんな密談をしている彼らを眺めながらレイとドロシーにぼやく。
「冒険者ギルドの連中って弱すぎじゃね?俺らでも小銭稼ぎに遊びに行くとこだぞ?」
「それはレイ様達が異常なのでは。通常万が一のことを考えて三人一組で見回りに行く所ですよ?」
「いや、アンタも十分異常だから」
私と冒険者達のツッコミがハモった。私は確かにソロで行くけど、スニーキングしながらゴブさんにバックアタックするだけだから。やり方知れば誰でもやれるから。真正面から行って惨殺して回るアンタ達みたいな真似出来ないから。っていうかメイド隊ってこんなとこでレベリングしてたのかよ。私が言うのも説得力無いけどさ。
☆☆☆☆☆
ひとまず邸宅から逃れた私達はお母様と戦えない生存者を連れて、彼らの身の安全を確保の為にドーラ洞窟のある東端から真逆の位置にある西部の方にある村トリトに作られた特設避難所に訪れた。
村の様子は既に炊き出しが行われており、他の村や街から逃げ延びてきた人々で溢れていたが、私が到着するとトリト村の村長は暖かく私たちを迎え入れてくれた。私達はトリト村の避難民達に『兵隊』が来た時の対処法を伝えると、『影』にはトリト村に残って警護に当たって貰い、私達はレイとドロシー、『影』のメンバーからトエとトワ、冒険者ギルドからB級冒険者でタンクのバルト、ウィザードのジーレ、アーチャーのリットに協力を仰ぎ、再びドーラ洞窟へとやって来たのだった。
☆☆☆☆☆
「なんにしてもアレ供給先って事だよねー」
今度はドーラ洞窟へと向かう『兵隊』を望遠すると、何処かで家畜でも襲って来たのか大きく膨れ上がった肉体を揺らしながら洞窟に向かって大移動をしていた。対処法を知ってる私達なのでサーチをしながら近づけるギリギリまで近づいてみたが反応無し。ゴブさんの射程範囲、距離にして10mほどまで近づいても太った『兵隊』は此方に興味も無いのか無視して洞窟の方へと向かって行く。邸宅や外で遭遇した痩せ細った個体は30m先だろうと見つかれば襲って来たけど。
「…………ねぇリットさん。わたくしちょっと試してみたいことがあるんですが」
「そこで俺に振るとはいい性格してるよ、お嬢様。つまりコレか」
がちゃり、とリットが持ち上げたのはいわゆるトラバサミ。つまり罠である。
満腹になった個体が巣穴に向かって歩いて行くのを確認して巣穴の位置を探る。すると地図で未登録の洞窟だった。一団が抜けきるのを後にして私達はその洞窟に入り込み、リットにトラバサミをそこらじゅうに仕掛けてもらう。
「これで供給先は断てる筈」
「俺にはとてもそうは思えねぇけどなぁ」
「他の穴からも同じ事やってると思うけど」
「たとえそうでも私達の後ろからの攻撃はとりあえず無くなるわ。ホラ」
そう言って指を刺すと『兵隊』(肥)が早速罠に引っかかり転倒していた。しかもそれだけではなかった。
「あぎゃぁぁぁぁああああああああ!!!」
「がちゅう!ぶちぶちむじゃぁあああ!!」
「ばきゅう!はぐばりばりむぢゃあ!!」
引っかかった『兵隊』(肥)に何処からかぎつけたのか、『兵隊』達が喰らい付き、共喰いを始めてしまう。
「やっぱりね」
「やっぱりってお嬢……」
「無限ループって怖いわね。食べ終わってもまた罠にかかって食べられて、それでまた罠にかかって食べられてってね」
「でも本当に時間稼ぎにしかならないんじゃ?」
「アレって多分餌を運んでるんでしょ?なら役目を果たせなくなった個体を他の個体が引き継ぐって事をしないと餌は運ばれなくなる。だから本能で無理矢理共喰いしてでも餌を運ぼうとするんじゃない?だからさ」
共喰いが終わる頃にはあまりにも肥大化した『兵隊』は洞窟を塞ぐ程巨大に膨れ上がってしまった。立つことすらままならなくなり倒れたままでずりずりと進むと洞窟を塞ぐ様につっかえてしまった。
「あー、なるほどね。フタって訳か」
「女王蟻って聞いて何となくね」
「さすおじょwww」
「なんかトワに言われるとすっごいバカにされてる気がする」
「ソンナコトナイヨー」
「はぁ、まあいいわよ。んじゃ、行くわよー!」
「おー!」
私達はドーラ洞窟の奥底へとむかっていくのだった。
☆☆☆☆☆
「《初位炎壁》!」
「よっと」「きゃっほーい!」「うぇーい!」
ジーレさんが放つ焔の壁が『兵隊』を燃やして消滅させて行く。レイは火属性がエンチャントされたナイフで『兵隊』の首を掻き切り炎上させる。トエやトワは洞窟内を跳ね回りターゲットにした『兵隊』で殴る蹴るでドリブルを繰り広げていた。バスケしようぜ、お前ボールな?をファンタジー世界でやるとこんな感じになるのか。いやー、楽でいいですわー。(現実逃避)
「レイ君は強いのは分かるけどトエちゃんやトワちゃんって何者?あのバケモノで遊んでるとしか思えないんだけど……」
「ほんとにねー……」
その人ら全員、貴方達がヤマザルって言って卑下にしてる人達です。今巷で恐れられてる『影』って言われてる正体不明の暗殺者集団のトップとゆかいな仲間達です。
ジーレさん、トエとトワを見ている様で目で追ってるのはレイの方の様だ。別に止めはしないけど茨の道だよそっち。しかも断崖絶壁を茨で渡る様な道ですよ?
だが絶賛彼からの死亡フラグを渡されてる私は言わずに眺めていることにしたのだった。余計な死亡フラグ抱えることもないしね。
「あんたらー、そろそろ『女王蟻』の所に着くわよー。遊んでないで始末しなさーい」
「はーい」「えー」
トエはいいこだなー。後でおかしをあげよう。ちょっとやめてください、ジーレさん。そんなめでわたしをみないでください。わたしこんないじょうなこうけいになれしたしんでるわけじゃないです。そんなきょうふにふるえたかおでみないでください。
なんて事を考えていた矢先だった。
「トエ!トワ!離れろ!」
レイの叫ぶ声と同時に『兵隊』をトエとトワが蹴り飛ばす。すると蹴り飛ばされた『兵隊』に触手が突き刺さる。突き刺された『兵隊』はそのまま闇の中に引き込まれて破砕音と共に悪臭が漂い始めた。おっおぅー♪あ、変な声出た。
「ついに来ちゃったわね。皆頼むわよ」
「はい、お嬢様!」
「マジかよ……あんなの俺らがやんの?」
「どうせやんなきゃあのバケモンに喰われるだけだぞ、センパイ」
「そうだぞー、せんぱーい?」「にげんのかー、せんぱーい?」
「私らよりどう見ても君たちの方がよっぽどだと思うけどね」
「まぁ良いじゃねえか。一応俺ら『紅蓮の牙』もセンパイとしての見せ所を見せなきゃな!行くぞリット!ジーレ!覚悟を決めろ!」
「はいはい。領主のお嬢様も見てらっしゃいますし、頑張りますかね?」
目の前に広がる光景はまさに『女王蟻』の部屋。『兵隊』を喰らい、『兵隊』を作り、そして戻って来た『兵隊』を喰らって『兵隊』を増やして行く。その元凶であるバケモノがそこに居た。
「…………がァァァ」
おや?こっち見たぞ?
「れべっかぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
咆哮が響き渡る。
「お嬢……アンタあいつに何したの?」
「知らんがな」
どうやらまた余計な死亡フラグが立ってしまった様です。
進行が遅くてごめんなさい。
お詫びの死亡フラグの詰め合わせです。
「そんなお詫び要らないよ!」




