第十一話 ナイトメアパニックパレード.1
前回のあらすじ
クローゼットからクリーチャー
「GYSUBURUAHAAAAAAAA………」
おっおぅー♪いっけない。私ったら、先客が居るのにドアをノックもせず開けちゃうなんてレディとしてはしたないですわぁ。
「ごめんなさい。私ったらノックもせずに。それでは失礼しますね」
静かにぱたんとクローゼットを締める私は寝巻きを諦め、ドレスのままベッドに向かう事なく部屋を出る。
ふう、私は何も見ませんでした……。
「ギシュァアアアアアアアアア!!」
「ですよねぇぇぇぇぇ!?」
部屋のドアが爆発する様にさっきのクリーチャーが飛び出してくる。あれ見たことある!見たことあるううううう!!なんかあんな感じのフォルムのやつ見たことあるうううう!!!
ギャアギャアと叫び声を上げながらクリーチャーは私を喰い殺そうと追いかけてくる。だがしかし、あまり舐めないでいただきたい!これでもTECスキルカンスト済みの女。逃げることには定評がありますわぁ!
「おりゃー!」
ドアを蹴破り、跳ね返ってきたドアでクリーチャー弾き飛ばす。そしてロックを掛ける。
「ふー……」
「バクバクムシャムシャムシャゴリゴリごきん!………」
「…………」
「…………あ、お食事中失礼しました」
何事もなかった様に別のドアから食堂を後にしようとする私。
「ギシャアアアアアアアアアア!!!」
「ちくしょう!こんな酷いお約束要らないよう!」
クリーチャーB〜Gが揃って追っかけてきました。
☆☆☆☆☆
どうやら蒔いた様だ。さっきまでの金切音みたいな鳴き声が消えてきた。
「ホントになんなのアレぇ……?」
自分が少しだけ安全な状況になってきた事で恐怖がぶり返してくる。
「あ、あれ?なん…で……?何でこんなに…震えてるの私?」
気がつくと手に力が入らなくなっていた。ゴブリン狩りだってこんなに恐怖を感じなかったのに。あの時だって怖くなんて無かったのに……。何で……?
遂には静まり返った廊下にただ一人残されてしまった私は、やっと理解した。
「ああ、そうか。そうだね。だから私は……」
今この場に誰もいない状況が怖くて仕方がなかった。誰も居なくなってしまった世界が怖くて怖くて、だから私は……。
近くでガラスが割れる音がする。割れたガラスを踏みながらソレはまた現れた。
「………あ…………」
「ギチギチギチギチギチギチギチギチギチ……」
まるでソレは触手の様に口から細かな棘を鳴らしながら私を見つける。
「あ……あはは………」
思わず笑ってしまう。ああ、噛みつかれたら痛いだろうなぁ。逃げる気力も失ったはずなのに私はずりずりと立ち上がり、ソレから逃げようとする。なんて……なんて意地汚い……………。
「ギシャアアアアアアアアアア!!」
……いやだ。嫌だ嫌だ嫌だ!死にたくない!死にたくない!こんな所で死にたくない!だってわたし………まだ何も………。
「お嬢様ァァァ!!」
遠くから声が聞こえた。全力疾走しながらあのクリーチャーを斬り伏せながら私を探してくれていたのだろう。
「ドロシー!」
「お嬢様!しゃがんで下さい!!」
私はそのまま身を屈め、頭を抱え込む。そしてその私と入れ違いになる様に私を飛び越え刀を構えるドロシー。
「はぁあああああああ!!」
廊下に向かってカタナを突き刺し、そのまま持ち手を軸に一回転しクリーチャーを飛び越える形で着地するとドロシーはその勢いでクリーチャーを刀に向かって蹴り飛ばす。突きたてられた刀身に、勢いを殺しきれず突き進んで行くクリーチャーは真っ二つに切り裂かれた。
「うわ……」
「行きますよ、お嬢様!この館を捨て、このまま別邸の方まで移動します!」
「う、うん」
「ドロシー!こっち!」「たいろかくほー!」
私は情けなく泣き顔を腫らしながらトエ達に守られ、ドロシーに手を引かれ別邸へと避難して行った。
あんなのがいっぱい居ると言う事はこの家の中がどんな状況なのか言われなくても想像出来る。最悪な状況は考えたくないけど……。
★★★★★
『影』のメンバーと合流を果たし、周囲を警戒しながら別邸へと移動すると、私も心の整理がつき始め、状況の確認をするだけの余裕が出てきた。
(なんなのアレ?私あんなのフロハーで見たことなんかない。いやあんな感じのクリーチャー見た事はあるけど別のゲームよ?)
「お嬢、無事だったか……」
「………レイ?」
「奥様はこっちだ。ウチの奴等が警護にあたってる。ショックで気を失ってるけど無事だ」
「うん、ありがと……」
頭がぼーっとする。
別邸へとなんとかたどり着いた私達だったが道中は酷いものだった。抵抗できず無惨に食い殺されたメイドや執事見習い、中には騎士の姿、そして首をはねられたあのクリーチャーの死体、あらゆる血や混ざり合った様な体液が辺りを飛び散らかしていた。
「……お嬢様。大丈夫です。私達が奥様とお嬢様だけでもお守りいたします」
「ドロシー……それ、どう言う事?」
「………………」
ドロシーは何も答えない。
「ドロシー答えて!お母様と私だけとはどう言う意味!?お父様はどうなったの!?」
「お、お嬢………」
オロオロと私の心配をするトエ。
「旦那様は、御立派な最期を遂げられました。わたくし達は旦那様の御命令にて、お嬢様と奥様のお命を最優先とし、安全な場所まで避難いたします。このまま別邸に立てこもっていてもいつ別邸が崩壊するかわかりません」
ドロシーは機械的に今の現状、これからの行動、そしてお父様の訃報を私に告げたのだった。
☆☆☆☆☆
「全く馬鹿馬鹿しい。何が新たな聖女か」
帰路に着く馬車の中、司祭は悪態をつきながら注がれたワインに口をつける。
「『聖女』様は既に王都に居を構えておられるのだ。それも……」
そこまで言って口を閉ざすと、ニヤリと笑い空になったグラスにワインを注ぐのだった。
「まぁ良い。新たな『聖女』様はその誕生を妬まれ、他の候補者によって無惨にも殺された。まぁこんな所であろうな。ククク……ハハハハハ………」
☆☆☆☆☆
「なるほど。そうですか……」
同じく帰路に着く別の馬車に乗るフリード伯爵は密偵から報告を受けていた。
「如何されますか?」
「放置して置いて構わないでしょう。ですが………ふむ」
盤上に置かれたチェスを眺め少し悩む表情を見せると、伯爵はチェスの相手をしていた衛兵長に命令を下す。
「隊を二分にさせましょう。私は二個隊と共にこのままマグノリアに引き返します。その他はゲストをお送りして差し上げなさい。こちらの動きを悟られぬ様留意する様」
「御意」
フリード伯爵の命令を受け、殿を務めていた彼の乗る馬車を含めた2個部隊は静止し、司祭達の乗る馬車達はそれ以外の兵士達と共に王都へと向かって行った。
「では、皆さん。これよりマグノリアへ再視察を行います。問題が何もなければもう一泊くらいマグノリアで過ごしてから我々は王都に帰還致しましょう」
「はっ!」
残された兵士達は静かにそして速やかに来た道を戻り、マグノリアへと戻っていくのだった。
死亡フラグの叩き売りセール。
補足
クリーチャー(仮称)のステータスを。
追記6/12
一部スキル内容の変更。
《邪眼》の内容。
それに伴い、《捕食》の内容の一部変更
◼️◼️◼️◼️◼️ Lv0
HP 条件を果たさない限り不死
MP 計測不能
STR 0
VIT 0
INT 0
MID 0
TEC 0
特殊スキル
《邪眼・混乱》
・対象に対し、混乱系(スタン・恐怖・失神)の状態異常を引き起こす。一定MID以下の場合レジスト不可。
《捕食》
・攻撃対象に大ダメージ。一定確率で即死。
・対象が混乱系状態異常の場合強制即死。
・対象が混乱系状態異常の時、回避不可。
《追跡》
・指定したターゲットのTECと一時的に同じステータスに上昇させる。ただし上限あり。詳細は不明。持続時間は30秒。




