小さな幸せ
桃の花ってよくないですか……?
今日、庭を見ると桃の花が咲いていた。
一昨日の時点で咲きそうな蕾は沢山あったけれど、もう咲いているとは思わなかった。
毎年恒例の写真会を開く。
花をズームで撮ったり、木全体を撮ったり。空をバックにして撮ったり。
薄浅葱の空の色に淡紅色が映えている。
去年は桃花色の割合が多く、なんか……強かった。咲くのがまだ早い時期だったってのもあるかもしれない。
今年は淡い色が多く、柔らかい印象を受ける。気候も穏やかだ。
まあ、どっちにしろ空の色との相性は抜群だったし、好きな花ということに変わりはないけど。
またパシャリ。5枚ほど撮ったかな。
一旦写真を撮るのをやめて、肉眼で改めて眺める。
やっぱり今年の桃は可愛い系だ。去年は美人系だった。
身長(?)は今年の方が高いけど、その印象は変わらない。
我ながら小さい方だが、3年で完全に越されるのは想定外だった。お世話した甲斐があるけど少し複雑。
この桃は私の桃。一番好きな木で、果物で、花。
桃モチーフのやつが色々と欲しいけれど、みんな桜なんだよね。果物の方は古事記の黄泉比良坂とかで魔除けで有名だけど、桃の花はあんまりメジャーじゃない気がする。ひな祭りの花なんだけどな。みんなちゃんと見たことないんだろうなぁ。桜とか梅に比べたらみる機会が少ないのは確かだ。
「君たちはこんなに綺麗なのになぁ」
幹を撫でつつ、ポツリとつぶやいてしまった。ヤバい人というなかれ。他の木とかにも話しかけているわけではない。この木は特に思い入れが強いだけ。だからつい話しかけてしまう。
この木はお父さんが私の木として買ってくれた。私の誕生月の木だからって。そこから大人にききつつも自分で調べて世話をしてきた。
思い入れも強くなるってもんでしょ?
花の額下を指で挟み、顔を近づけてみる。
柔らかい。目にも肌にも優しい。匂い残念ながら花粉症なため、感じられなかった。
花から手を離し、落ちていた花びらを拾う。
日に透かしてみて思わず目を細める。
桃は肌に優しいけど、日差しは優しく無くなってきた。お昼ご飯もまだだし、家に帰ろう。
「またね。」
そう声をかけ、桃の木に背を向けた。春らしい暖かな風を感じながらゆっくりと小道を歩んでいった。
前回の短編も桃の蕾見たからだし、私、短編は桃関連じゃないと書けない……??かもしれない