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他国の王族の結婚式で運命の方と出会ったわ~この方なんだか鈍感みたい?~ 後編


ラストです!

最後までお楽しみ頂けますように!



数時間後、目覚めた(わたくし)は客間で目を覚ましました。

そして改めて、シリウス様とお話をする時間をとって頂いたのです。

客間の居間に入って来られたシリウス様の姿を見て、私はソファから立ち上がりました。



「エレオノーラ様、お久しぶりですね」

「シリウス様!この度は我が国の者が大変失礼を致しました!!」


私はシリウス様に深々と頭を下げます。

ですが、シリウス様は、それを止められました。


「エレオノーラ様のせいではないですよ」

「・・・ですが!あの者を止められなかった私にも責任があります!」

「貴女一人の責任ではないよ」


シリウス様はそう言って優しく微笑んで下さいますが、私は唇を噛みしめ項垂(うなだ)れます。



「・・・我が国の者が暴走したことに変わりありません」

「・・・王族の君が知らなかったでは済まされない・・・か・・・」

「・・・・・・・申し訳ありません」


静寂がこの場を包みます。

すると、突然部屋の扉をノックする音が聞こえました。


「どうぞ」


入室を許可するシリウス様の声を待って、扉が開かれました。


「失礼します」

「お話中、失礼致しますわ」


───部屋に入ってきたのは、エリオス様とメルティー様でした。


「やあ、来たね」

「エリオス様、メルティー様・・・」


私はお二人の登場に瞳を見開きます。

何故お二人が?



「エレオノーラ様、お久しぶりです!本日はわたくし共の結婚式に来て頂き、誠にありがとうございます」

「メルティー様、本日は大変申し訳ないことになってしまって・・・」


私がメルティー様を直視できずにいると、彼女は私の手をギュッと握られました。


「わたくし、エレオノーラ様をお怨みしてなどいませんわ!それに大丈夫です!明日改めて式をやり直すことになりましたのよ」

「まあ、本当ですか?!」

「はい!ドレスも予備として用意していたものがありまして。それにエレオノーラ様から結婚祝いにと、とても素敵な宝飾品をお送り頂いていますので明日はそちらを身に着けようと思っておりますわ」



メルティー様がキラキラした表情で笑みを浮かべているお姿に、安堵し、私は腰を抜かしてしまいました。



「ああ・・・良かった・・・私、メルティー様がショックのあまり泣き崩れていらっしゃったらどうしようかと・・・」

「ふふ、わたくし結構図太い神経をしていますのよ?」


メルティー様と二人、クスクスと笑っていると、エリオス様が手を取り私を立たせて下さいました。



「どうぞソファーにおかけください」

「エリオス様・・・ありがとうございます」


私はエリオス様にエスコートをされ、思わず頬を染めてしまいました。

その姿を見られたシリウス様とメルティー様が微笑んでおられます。

改めて全員でテーブルにつくと、メイドが素早く紅茶の用意をして下がっていきました。

あら?何故メイドが部屋から出ていくのかしら?と疑問に思っていると、隣に座ったエリオス様がエスコートされてからずっと握られている手に力を込められました。

な、ななななな何故ずっとわたくしの手を握っていらっしゃるのかしら???



「エレオノーラ様・・・」

「は、はい!」

「父と母、それに兄とメルティー様には、私の想いをお伝えしました」

「そ、それはっ?!!!」

「貴女へ結婚を申し込み、それを受けて頂けたことを、皆も喜んでくれています」

「は、はい・・・」


私は頭から火が出そうなくらい顔を真っ赤にさせました。

そんな私に、メルティー様が笑顔で「おめでとうございます!」と言って下さいます。

顔を真っ赤に染めたまま、私は蚊の啼くような声で「ありがとうございます・・・」と返しました。

ひぃぃ!なんでしょう、この空気!

恥ずかしくて、私また気を失ってしまいそうなのですが?!!


「貴女の夫となって、共にリリエンハイム王国を支えさせてほしい」

「はい・・・」



こんな物語のような告白をされるなんて!

私は夢にも思っていなかったのです!

だって、つい先日婚約破棄の現場を見たばかりです。

夢も希望もとうの昔に無くしていました。

私の婚約者がまだ決まらないことに回りはヤキモキしていたでしょうが、おかしな方を王配として迎えることなど出来ません。

いつかは私も政略結婚し、夫がおかしなことを言いださないか日々怯えながら過ごすのではないかと思っていたのですが・・・!

まさか別大陸で運命の相手と出会うだなんて!

まだ出会ったばかりですが、これまでの彼の態度はとても誠実で紳士的です。

私の感が囁くのです。

この方を逃してはならないと!


「これで二国の仲は益々深まるな。エレオノール様、弟のことを頼みます」

「本当に素敵だわ!エレオノール様と義理の姉妹になるなんて!」



シリウス様とメルティー様も祝福してくれています。

私は自然と笑みを浮かべていました。


「メルティー様、私も嬉しいですわ!」








こうして、一時はどうなることかと思っていましたが、私とエリオス様が婚約することで話が良い方に向かっていきました。

そしてエリオス様は、学園を卒業後、すぐに我が国に来て頂くことになったのです。

生国を離れるのは寂しいかと思いますが、彼はそれを感じさせず、ひたすら私に「貴女と一緒になれる日を心待ちにしています」「貴女といられることが嬉しい」と己の気持ちを伝えて下さいます。

その度に心の臓を撃ち抜かれているのですが、私いつまでたっても彼の甘い台詞に慣れそうにありません。



ですが・・・彼に全く問題がないということはありませんでした。

人間なのですから、欠点があるのは当たり前です。

彼の場合は、自身に向けられる好意に鈍感なことが欠点となっていました。

それが露見したのは、そのすぐ後のことだったのです───・・・





◇◇◇





それは、エリオス様の友人を紹介して頂いた日の事でした。

私と彼の前に、キラキラしい男性がお二人立っておられます。

どちらもエリオス様とは違った美貌の持ち主です。



「リチャード、それにアレックス!君も来てくれたのか!」


笑顔で嬉しそうにはにかむエリオス様。

ですが、エリオス様のご友人方は微妙な表情をされております。



「エリィ・・・本当に婚約したのか・・・」



リチャードと呼ばれた、少し軽薄そうなイメージの男性は、茫然とした表情をなさっております。

何故なのかしら?

そしてもうお一方は・・・



「・・・・・・・・・」



声すら発しません。

アレックスと呼ばれた方は、王子様のような金髪碧眼の美形ですのに、ずっとこちらを睨んでいらっしゃいます。

どうされたのかしら・・・


私はエリオス様の交友関係に若干不安を抱いてしまいました。

リチャード様なんて、涙目になっておられます・・・

彼は今にも泣きそうな表情のまま、エリオス様に話しかけられました。



「いつか・・・いつかエリィにも大切な人が出来るとは思ってた。だれど・・・だけど、それがまさか女性だなんて・・・」


(え?どういうことかしら??女性だと何かおかしいの??)


「俺はっ!俺たちのうちの誰かを選んでくれると思っていたのに!・・・なのに!」


(俺たち???え、この方たちはエリオス様のご友人なのよね?選ぶとは???)



私はキョトンと首を傾げます。

そして、エリオス様も何を言われているのかわかっていないご様子。

その傍らで、身体を震わせ涙を流すリチャード様。

な、なにがおこっているのでしょう。

すると、今度はアレックスと呼ばれた方が、言葉を発しました。



「ずっと・・・ずっと一緒にいようと言ったではないか・・・!!」


お顔は俯いていて伺いしれませんが、アレックス様のお声は震え、彼も今にも泣きだしそうです。

それなのにアレックス様に対して、エリオス様は笑みを浮かべ、懐かしそうに話しかけられます。


「ああ、俺も覚えているよ。幼い頃に互いに国を守ろうと誓いあい、ずっと一緒に国を支えていこうと約束したな」


(・・・?なんだかお互い、若干言っていることのニュアンスが違うような・・・?)


「嘘つきめ!お前は約束を反故にする気か!」

「嘘なんてついていない。この婚約は国の為でもある。何故そんなに怒っているんだ?」

「・・・!!!俺のことを大好きと!そう言っていただろう!」


(・・・ええ?)



私は彼の言葉に真顔になります。

エ、エリオス様・・・?

彼に何を言われたのですか?


「なっ・・・!そんな恥ずかしいことを良く覚えているな!小さい頃のことだろう!」

「俺は・・・!ずっとその時の言葉を大切に想ってきた・・・!」

「小さな頃は一番仲が良かったからな・・・だけど、今は違うだろう?お前は俺を嫌っているじゃないか」

「誰がお前のことを嫌いだなんて言った!」

「え・・・だって俺の事を無視しているのはお前だろう?」


エリオス様のお言葉に、ショックを受けられたように固まるアレックス様。

彼はお顔を真っ青にされています。


見事なまでの気持ちの擦れ違いっぷりに、聞いているこちらの方がいたたまれなくなってきました。

これは・・・あれですよね・・・

世間から男色と呼ばれている・・・男性同士の恋愛事。

まさかエリオス様を狙われている男性がいるだなんて・・・

しかも先程リチャード様は『俺たち』とおっしゃっていましたよね?

まさかエリオス様をお好きなのは、お二人だけではないのかしら・・・?



「よし、俺は決めたぞ!俺もエリィと一緒にリリエンハイム王国に行く!」


力強くそう宣言されたのは、リチャード様です。


「エリィがちゃんと幸せになれるか、ずっと傍にいて俺が見守ってやるからな!」


キラキラとした笑顔を浮かべて宣言されますが、私はこれをどのような気持ちでお聞きすればよろしいのかしら?

エリオス様が不幸せだと思われたら、彼は何を仕出かしますの・・・?

それにしても彼はずっとエリオス様のことを『エリィ』と呼ばれていますが、エリオス様の愛称なのかしら?

それにしては可愛らしすぎだと思うのだけれど。



「何を言っているんだ、リチャード!」

「俺は侯爵家の三男だ。自分の人生は自分で選ぶさ」



リチャード様の決断に、エリオス様は驚いておられます。

国を離れて、自分についてくると言われれば、それも当然ですわよね・・・

侯爵家の三男とはいえ、高位貴族には変わりありません。

なかなか出来ない決断です。

ですが、もうお一方が更なる爆弾発言をなさいました。



「リチャードが行くというのなら、俺もリリエンハイムへ行く!」

「アレックス?!!」


今度こそエリオス様は悲鳴を上げられました。



「何を言っているんだ!お前は公爵家の嫡男だろう?!公爵家はどうするんだ?!」



私はその言葉に驚き、瞳を見開きます。

アレックス様は公爵家の嫡男だったのですか?!

公爵家の跡継ぎが国を捨ててはいけないでしょう?!!



「弟が継げばいい」

「何を言っているんだ!!お前・・・そんなにも一緒にいたいのか・・・?」

「ああ・・・」



見つめ合う、エリオス様とアレックス様。

なんなのでしょう、このピンク色の空気は。

ですが、私が感じていた空気を晴らしたのは、エリオス様ご本人でした。



「・・・お前たちは本当に仲が良いな。()()()()()がリリエンハイムに行くから、アレックスも祖国を離れる覚悟を決めたのか。俺が二人を引き離すわけにはいかないな」

「?!!」

「?!!」


(エリオス様あああああ?!!)


絶対にそういうことではないと私でさえわかるのに?!!

リチャード様とアレックス様が絶望的な表情を浮かべていらっしゃいますよ?!


私の旦那様になる方は、どうやら相当、恋愛面に鈍感なようです。

浮気をされる心配がなくて安心いたしますが、今後その鈍感さによって引き起こされるだろう事象を考えると頭痛がしてきてしまいます。



ところで・・・リチャード様もアレックス様も、エリオス様のことをお好きだということで良いのですよね?

ほほほ・・・エリオス様も気づいていらっしゃいませんし、私エリオス様を譲りませんわよ。

ところで改めて思ったのですが・・・

もしかして、この国も我が国の婚約破棄同様、『何か』を抱えていらっしゃるのかしら?

少し怖いのですが・・・

私は、エリオス様に後でコッソリ彼がおかしいと思っていることを聞いてみようと心に誓うのでした。





その後の小話

女主「え?セフィラ大陸中のおよそ8割の人間が同性愛者なのですか?」

男主「そうなんだよ。だから出生率が下がっていて、次々と滅びる国が出て来ているんだ」

女主「まあ・・・そうでしたの・・・たしかに リリエンハイムとお付き合いのあった国も数年前に滅びてしまいましたが、そんな事情があったのですね・・・」

男主「リリエンハイムでは、同性愛によって国が滅びるなんてことはないだろう?」

女主「ありません・・・ありませんが、うちにも問題はありまして。実は・・・婚約破棄が横行しておりますの」

男主「婚約破棄・・・?兄の結婚式であったような?」

女主「はい・・・」

男主「ああ・・・あんな御家取り潰しまっしぐらな事件が頻繁に・・・それもまた頭の痛い問題だね」

女主「ですわ」

男主「だね・・・」

女主「私と一緒に・・・乗り越えて下さいますか?」

男主「もちろんだとも、俺の婚約者様」



終わり




面白いと思って下さった方は、ブックマークや評価をして頂けると、凄くすごーく喜びます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。




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