他国の王族の結婚式で運命の方と出会ったわ~この方なんだか鈍感みたい?~ 前編
長くなったので、前後編に分けましたー!
続きの更新は明日になります。
ラストのお話、前編です!
宜しくお願い致します。
私は愕然としていました。
まさか我が国の侯爵家の人間が、他国で盛大にやらかしてしまうだなんて思ってもいなかったからです。
しかも大陸を跨いで騒ぎをおこしてしまうだなんて・・・!!!!
あの頭の弱いボンボンは一体何を考えているのかしら?!!
私は、リリエンハイム王国第一王女 エレオノーラ・リリエンハイム。
現在海を渡った別大陸、セフィラ大陸にあるリオノール帝国に来ております。
リオノール帝国の皇太子が結婚される為、親交のある我が国にも結婚式の招待状が届いたのです。
つい先日またしても我が国で婚約破棄がおき、私は現実逃避気味にリオノール帝国を訪れました。
リフレッシュも兼ねて訪れたこの国だったのですが・・・
まさか・・・我が国の者が・・・ここでも騒動を起こすだなんて予想もしていなかったのです・・・
リオノール帝国の首都は、整然と並ぶ青い屋根の家々と、首都の中心に聳え立つ荘厳な白亜のお城のコントラストがとても美しい国です。
また大陸中から同年代の子供が集められ、学ぶ場を設けた学園なる教育機関があり、これは是非我が国にも率先して取り入れていきたい案です。
そして結婚式がおこなわれる教会も、お城同様白を基調とした立派なもので、ステンドグラスがそれは美しい教会です。
そこでおこなわれている、皇太子とその妃の結婚式。
この結婚式には王族や貴族しか参加していません。
それでも結構な人数がいるのですが。
民衆には後程、お城のバルコニーから挨拶があるとの事です。
静かに流れる音楽は天上の調べの如く教会内に響き渡り、太陽の光を反射しているステンドグラスは色とりどりの色で室内を照らしています。
その教会の中心で。
本日の主役である二人がとても幸せそうに、見つめ合っています。
そのお姿は本当に美しく幻想的でした。
花嫁のメルティー・シシリア公爵令嬢は、純白のそれはそれは美しいドレスを、そのほっそりとした肢体にまとわせています。
彼女の身に着けたティアラやイヤリング、ネックレスは彼女の美しさをより引き立て、眩いばかりの輝きを放っていました。
私は思わず「ほぅ・・・」と、うっとりしながら息を吐きます。
(なんてお美しいの。理想的なお二人ね)
私はお二人に羨望の眼差しを向けていました。
我が国では、あまり見られない光景なので、本当に本当に羨ましく感じてしまったのです。
なんせ婚約破棄が当たり前の国ですからね・・・
揉めない結婚式がない程なのです・・・
何故なのでしょう・・・
本当に何故なのでしょう・・・
こうして幸福に満ち溢れる結婚式が進行していきます。
ですが───・・・事件は、このすぐ後に起こったのです──。
突然、教会の入り口付近で騒ぎがおこりました。
結婚式に招待されている皆さんが、何が起きているのかと、入口に佇む男に注目しています。
何がおこっているのかしら?と、そう思っていると──・・・
その男は突然大きな叫び声をあげました。
「メルティー・シシリア公爵令嬢!君との婚約は解消させてもらう!」
シーン・・・
教会内が一斉に静まり返ります。
それもそのはず。
その男の言っていることが理解できないものだったからです。
(・・・はあぁぁぁぁぁ───?!!!!こ、婚約破棄?!!何故?!!何故、今結婚式を挙げている女性に向かって婚約破棄なんてするのです?!!)
そして最悪なことに・・・その男には見覚えがありました。
とてもよく見覚えがありました。
彼のことは何度か国で見かけたことがありますが、つい・・・つい最近も彼の顔を見たばかりなのです。
「あ、あの・・・貴方はどこのどちら様・・・?」
「何をふざけたことを言っている!リリエンハイム王国侯爵家嫡子、クリス・アルフォードのことを忘れたとは言わせないぞ!」
「え・・・ええ・・・?リリエンハイム王国のアルフォード侯爵家・・・?わたくし貴方とお会いしたことがないと思うのですが・・・」
「知っているのに知らないふりをするとは!この性悪め!」
あああああああああ!!!!!?
止めて止めて止めて止めて止めてえええええ!!!!
あのおバカさんは何をしていますの?!!
他国の王族に向かって、侯爵家!しかも侯爵本人ではなくその嫡子が何を言っているのおおお?!!
しかも、皇太子の花嫁に向かって婚約破棄?!!
何をとち狂っていますの?!!
貴方、この国の方とは面識がないじゃない!
私は何度か皇太子とお会いしたことがあるけれど!!
でも侯爵家の貴方はないはずでしょう?!!
それに貴方、つい先日婚約破棄したばかりじゃないいいい!
私がこの国を訪れる切っ掛けになった傷心の原因んんんんん!!!!
私はあまりの事に、クラリと眩暈を感じました。
メルティー様もお可哀想に、顔を真っ青にしてプルプルと震えていらっしゃるじゃない!
その震えているメルティー様を傍で庇っているのは、皇太子のシリウス様だ。
頭の可笑しな侯爵家のおバカさんを睨みつけている。
「無礼者!!我が妻になんたる非礼!」
「はぁぁ?!!そいつがあんたの妻?!何を言っているんだ、あり得ない!メルティーは俺の婚約者だ!」
「あり得ないのは君の態度だ!彼女は幼い頃より俺の婚約者だ!彼女はこの国から出たこともないし、第一王子の婚約者なのだからその行動を日々監視され守られていた!お前と知り合う機会などない!」
「そんなことあるわけがない!そいつは俺の婚約者だ!」
貴方・・・
先日、婚約者であった女性に婚約破棄を突きつけ、男爵令嬢といい感じになっていたじゃない・・・
な、なにを言っているの・・・?
婚約者でもない女性を婚約者だと言い張るだなんて。
美しい女性だから、自分のものだと妄想でもしたのかしら?
本当に・・・狂っているわ・・・
彼の頭の回路はどうなっているの・・・
「貴方のことなど、知りません!わたくしの婚約者は幼き日より、シリウス・リオノール様ただ御一人!何故そのような嘘をおっしゃるの?!!」
「貴様っっ!!俺にそんな生意気な口を聞いていいと思っているのか!」
「メルティー・・・下がって!大丈夫だ、私が守る・・・!」
「シリウス様・・・!!」
わたくしは・・・
サラサラとした砂の如く消えてしまいたくなりました・・・
自国の恥を、他国の・・・それも王族の結婚式で晒してしまうだなんて・・・
絶望しかありませんわ・・・
なんてことを!
なんてことをしてくれますの!!
「あんのバカっっっっ・・・!」
歯をギシリと音がなるまで噛みしめ、騒動の原因を睨みつけます。
呪えるのなら、呪い殺してやりたい!!!!
私は、騒動を収める為に、入口に向かおうと足を向けます。
すると、その場で「あのっ!」と声をかけられました。
振り向くと、そこにいたのは──・・・
銀髪に青いサファイアのような瞳をした、とても美しい青年でした。
私は、口がポカンと開かないようにするのに必死になりました。
なんっっ!!!!
なんて美形・・・?!!
え・・・・・・!
え・・・・・・?!
どなたなのかしら?!
私は静かに一人パニックに陥ります。
仕方がないですわ。
だって、こんなに麗しい男性を見たことがなかったのですもの。
ポーっとした意識のまま、声をかけてきた彼に問いかけます。
「・・・貴方は・・・?」
「俺はこの国の第二王子、エリオス・リオノールと申します。貴女のお名前を伺っても・・・?」
ひあ───!!!!?
リオノール帝国の第二王子?????!!!
はわ・・・はわわわ、そんなお方が私に何の御用なのかしら・・・?!
心の中で盛大に喚き散らしていましたが、こちらが名乗っていないことに気が付き、慌てて返答をします。
「・・・私は、エレオノーラ・リリエンハイム。リリエンハイム王国の第一王女ですわ」
「リリエンハイム王国・・・では、あそこで騒いでいる彼は・・・」
「はい、あの者は我が国の者です」
麗しの男性に、困ったように眉を顰められた私の気持ちがわかります?!!
あのおバカさん、何度殺しても殺したりませんわ!
「では、君は・・・」
「・・・この場を収める為に、あの愚者の元へ参りますわ」
私の言葉に、彼は少し考える素振りを見せました。
そんなお姿も素敵だわ・・・
「ちょっと待ってください。・・・ああ、ちょうど騎士が来ましたね。この騒動ももう収まるでしょう」
彼の言葉に、入口の方を見れば、侯爵家嫡子は鎧をまとった騎士数名に抑えられている所でした。
騎士に押さえつけられても、まだ叫んでいます。
「無礼者!離せ!俺を誰だと思っている!」
(無礼者はどこからどう見ても、貴方の方でしょう?!)
「俺は将来、リリエンハイム王国の王になる男だぞ!」
(ひぃっ!国の乗っ取りまで考えていたの?!!)
「離せ!このっっ!俺に触れるな─!」
(騎士様方、さっさと連れていって下さいませー!)
私が騎士の方々を応援していると・・・
一人だけ、なんだか身体のサイズがおかしな騎士様がいらっしゃることに気が付きました。
あら・・・?
あの方・・・
肩幅が・・・
異常に・・・
広くありませんか・・・?
不思議に思い、その騎士様を凝視してしまいます。
距離が少し離れていますし、私の見間違いなのかしら?
ですけれど、おバカさんの5倍は身体が大きいような・・・
二人が並んでいると、まるで大人と子供のようです。
え・・・ええ・・・?
私は連れられていくおバカさんと、彼を押さえつけている肩幅の広い騎士様の後ろ姿を只々黙って見送りました。
騒動の原因がいなくなり、教会内はシンと静まり返っていました。
花嫁は泣いているし、式に来た来客の皆さまは戸惑っていらっしゃるし。
これはもう一端この場を仕切り直さなければどうにもならないでしょう。
一生に一度のおめでたい日ですのに。
シリウス様、メルティー様には土下座をしてでも謝らなければいけません。
むしろ、土下座をしても許してはもらえないでしょう。
私、どうすれば・・・
悪い方悪い方に考えていると、エリオス様が私の手を取り「こちらへ・・・」といって優しく手を引いて下さいます。
「あの・・・どちらへ・・・」
「大丈夫です、俺についてきて下さい」
「はい・・・」
こうして私はエリオス様に連れられ、その場を後にしたのでした。
◇◇◇
───そして打って変わって、訪れたのは城の中の一室。
品よく整っている室内の調度品は、どれも素晴らしい物です。
その室内に置いてあるソファーに座り、私は彫像の如く固まっております。
メイドが持ってきたお茶とお菓子が目の前にありますが、とても手をつけられる心境ではありません。
「お茶を一口召し上がってください。落ち着きますよ」
「は、はい・・・!」
私はエリオス様に言われるがまま、プルプル震えそうになる手を根性で押さえつけ、静かにカップを持つと、コクリと一口紅茶を口に含みました。
とても香りのよいお茶で、確かに気持ちが落ち着いていきます。
「エリオス様、ありがとうございます。落ち着いてきましたわ」
「そうですか、良かった」
そう言ってニッコリと微笑む彼の笑顔が眩しくて、わたくし目が潰れてしまいそうですわ・・・!
私が笑みを浮かべたまま固まっていると、エリオス様はおっしゃられました。
「それでね・・・今回のことだけど・・・このままではせっかく友好関係を築いてきたリオノール帝国とリリエンハイム王国の仲に亀裂が生じるかもしれない・・・そして最悪戦争に発展するかもしれないことは、わかるよね?」
「はい・・・あの者の侵した罪は、それほどのことでした」
私がコクリと頷くと、エリオス様は自分を落ち着けるように、大きく息を吸い込み、そして吐き出しました。
何やら、緊張しているご様子です。
なんだか私もつられて緊張してきてしまいましたわ。
ドキドキする胸にソッと手をやると、エリオス様が意を決したように、顔を上げられました。
「そこで・・・君に提案があるんだ」
「提案・・・ですか?」
「ああ。・・・その話の前に、先ほどの彼にはこの国で裁きを受けてもらい罰を与えさせて頂く。君の国にはそれを了承してほしい」
「当たり前ですわっ!彼は途轍もない罪を侵しました!それに!乙女にとっての一大イベントである結婚式を台無しにする者は極刑に処されるべきですわ!」
私が熱く語ると、彼は苦笑していました。
思わず力が入ってしまったけれど、恥ずかしいわ・・・
赤く染まる頬に手を当てていると、彼は更に言葉を続けました。
「こほん・・・それで君への提案なんだが・・・」
「はい、なんでしょう」
「・・・その、二国の絆を深める為にも・・・」
「はい!」
「俺と結婚してくれないか・・・?」
「・・・・・・はい?」
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めているイケメンは尊いわ・・・と現実逃避をしても仕方がないと思うわ。
私は突然のプロポーズに、エリオス様に負けず劣らず顔を真っ赤に染めました。
「あ、ああああああの・・・?????」
私が狼狽し、意味もなく手をぱたぱた上げ下げしていると、彼は美しい顔に照れくさそうな笑みを浮かべます。
「突然すみません。その・・・二国の仲を深めるとかカッコいいことを言ってしまいましたが、要はただの一目惚れなんです」
(ひゃあああああああああああああああ!!!!!HI☆TO☆ME☆BO☆RE──?!!)
グイグイ告白してくる王子に、私はもういっぱいいっぱいですわ!
まさかこの世に、こんな乙女チックに告白して下さる王子様がいらっしゃるだなんて!!
夢?!!夢ではないの?!!
思わず、太ももをつねってしまったわ。
痛い。
「あの・・・!あの・・・!エリオス様?!」
「俺の気持ちはご迷惑ですか?それとももう、婚約者がいらっしゃいますか?」
エリオス様の瞳がうるんで、なんともいえない色気を醸し出しております。
鼻血が出そう・・・
「ご迷惑だなんて!う、嬉しいですわ!婚約者もおりません・・・私で良いのでしょうか・・・」
「貴女でないとダメなのです!」
もじもじとしながら下を向く私に、彼は更に追い打ちをかけてきました。
私の手を両手で握り締めながら、目の前で切実にそう訴えてきたのです。
私は彼に殺されるのではないかしら?
心臓がもの凄くバクバクいっているわ。
「え・・・あの・・・わたくしも、えりおすさまがよいです・・・」
息も絶え絶えにそう返事を返すと、エリオス様は満面の笑顔で私を抱きしめてきました。
「エレオノーラ様!夢のようです!!」
「あああああああああ・・・」
抱きしめられた直後、私はか細い悲鳴をあげ、ついに意識を手放してしまいました。
続きは、明日7:00更新予定です。
残りあと1話となります。
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