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わたくしの誕生日パーティーで婚約破棄がおこなわれました~なお、婚約破棄をしたのは他国の客人です~前編


タイトル通り、王女の独白と王子の独白のお話を予定しております。

王女の独白は前・中・後編とわかれております。

王子のお話は執筆中の為、まずは王女の独白をお楽しみください。





「俺はここに、レリアナ・セブンス公爵令嬢との婚約破棄を宣言する!」


そう言ってアフィール王国の第二王子セレン・アフィールが、つり上がり気味の猫のような瞳をした可憐な女性を指さし大声で宣言致しました。

その光景を見ながらわたくしは・・・



『え・・・また・・・?』と虚ろな瞳を彼らに向けてしまいました。








今日は私、リリエンハイム王国第一王女 エレオノーラの誕生日です。

そして・・・


今、現在!!!!


私の!!!!


誕生日パーティーを!!!!


おこなっている!!!!


真っ最中なのですわ?!!!!


そんな日に誕生パーティの会場で、お隣のお隣の国にあたる小国の第二王子が声高らかに宣言したのです。

・・・自身の婚約破棄を。


なんですの、これ・・・

何故、私の誕生パーティーで、婚約破棄がおこなわれていますの・・・?


私は茫然としながら、彼らの様子を眺めます。

騒動の中心人物は3人。

小国、アフィール王国の第二王子セレン・アフィール。

そして王子にべったり引っ付いているピンクゴールドの髪色をした少女。

それに対しているのは、婚約破棄を宣言された少しつり目気味の、だけれど美しい顔立ちをしたアフィール王国の公爵令嬢・・・。

彼女は顔を青ざめさせております。


「セレン様・・・何故この場でそのようなことを!」

「何故だと・・・?!俺はアイシャを愛している!可愛げのないお前と結婚するつもり等、毛頭ない!」


そうキッパリ宣言する第二王子。

ですけれど・・・あらあら?お待ちになって・・・?

お二人のお話は全く噛み合っていませんわよ・・・?

婚約破棄を宣言されたご令嬢は、『よりによって何故他国の王女の誕生パーティーで騒ぎを起こすのか!』との意味合いで発言されているのだと思いますけれど・・・?

王子にはその言葉の真の意味が伝わっていないようです。

いえ、本当にね、他国の王女の誕生パーティーで何をして下さっているのかしら?

私、頭の血管が切れそうなくらい怒っているのだけれど・・・?


王子の顔を見ていると、あまりにも腹が立つので、私は王子の隣に(たたず)む少女を観察することにしました。

王子から視線をずらすと、少女が王子に抱きしめられながら瞳いっぱいに涙を溜めております。


「レリアナ様、申し訳ありません!ですが・・・ですが、私もセレン王子を愛しているのです!どうかお許し下さい!」


プルプル震えながら訴えかけるように告げる少女。

まあ、まるで子犬のように震えているわ。

・・・あんなに尋常じゃなく震えて。

彼女は、どこか身体を悪くしていらっしゃるのかしら?

ああ、頭?

ええ、そうね、もちろん頭はお悪いのでしょう。

誕生パーティーというおめでたい席で、このような暴挙に出るようなお方ですし。

王子同様、この少女も公爵令嬢の言葉に出していない裏の言葉がわかっていないようですもの・・・


私が呆れた眼差しで彼女を見つめていると─・・・ふと疑問を感じました。

『ところで、プルプル震えている彼女はいったいどこのどなたなのかしら???』・・・と。

第二王子がパートナーとして連れていらっしゃるのは、『婚約者』だとお聞きしておりました。

そして彼のパートナーは、現在断罪真っ最中の公爵令嬢です。

では、あのプルプル震えている少女は・・・?

どちらの国の方かしら???

王族の方??それともどこかの国の貴族令嬢???

どちらにしろ招待した記憶のない方なのだけれど・・・

自国ではお顔を拝見した記憶はないので、他国のお方なのだと思います。


このような場には、男性の招待客はパートナーとして自身の妻や婚約者を伴ってまいります。

配偶者や婚約者がいらっしゃらない場合は、自分の娘や姉妹や従姉妹等、血の繋がりのある女性の方をパートナーとすることが多いのですが、全く関係のない方を連れていらっしゃる方はほとんどいらっしゃいません。

各国の王族・貴族に幅広く招待状をお配りしているとはいえ・・・

彼女の顔は全くといっていい程、見覚えがありません。

時期女王として、数多ある国の王族や貴族のお顔は絵姿を見たり、実際にお会いしたりして大体の方は記憶しているのですが。

おかしいですわね・・・

まさか──・・・平民を連れてきたなどということはありませんわよね・・・・・・

ええ・・・ええ・・・!!!そんな非常識なことはありえませんわよね!?

他国の王女の祝いの席に、家族でも親族でも婚約者でもない平民の女性を連れてくるなんて、ありえませんものね?!

気のせいですわ!きっと!!

ああ・・・でも数年前に実際に社交場でそんな珍事件がおこったことがあったような・・・

いいえ、そんなことはありませんわ!

きっと私がうっかり覚え忘れてしまったご令嬢に違いありません!

男爵家の数は多く、辺境のご令嬢の情報も少ないですからね!

きっと私が知らないだけですわ!

そうですわよね?!!セレン王子!!?

少しは常識のある方だと思っていてよ?!

けれど・・・現状普通ではない事態を引き起こしているお方なので不安でしかありませんが・・・


ああ・・・しかしいつになったらこの茶番劇は終わるのかしら?

私が茫然としている間にも、セレン王子とピンクゴールドの髪色の少女は、何やらキャンキャン叫んでいるようです。



「お前はアイシャは虐めていただろう!」

「その方とは本日初めてお会いしましたわ!」

「そんなバカなことがあるか!アイシャはお前の家で働いていたのだぞ!」

「そうです!私はセブンス家で働いておりました!そしてずっとレリアナ様に虐められていたのです!!!!」

「ああ、アイシャ可哀想に!」

「セレン様!!!」


セレン王子、アウトですわああ───!!!!

よもや、よもや婚約者の家のメイドを連れていらっしゃったの・・・?!!

あああ、やはり常識もなにもない方だったわ・・・


「・・・彼女はうちのメイドではありません・・・!うちのメイドでしたら全員記憶しておりますもの!」

「私はメイドではありませんでしたから、きっと私はレリアナ様の記憶にも残っていないのでしょうね・・・」

「なに!?可哀想なアイシャ!あまりにも酷いではないか、レリアナ!」


・・・メイドですらないというの・・・?

では、あの少女はいったい何の仕事をしていたの・・・?

女性の仕事は限られていると思うのだけれど。

彼らの会話に、思わずゴクリと唾を飲んで成り行きを見守ります。


「メイドではないですって・・・ではいったい・・・」

「本当に覚えていらっしゃらないのですね・・・!私はセブンス家専属の御者の娘です!父の手伝いで私も御者として働いておりました・・・けれど!!セブンス家の方々は私と父に上から目線で無茶な命令ばかりして!あまりにも酷い所業です!」

「え・・・?え?御者・・・???」

「馬車の管理が出来ていないと専属を解くと脅して!私、一生懸命頑張っているのに!道を間違えた時も烈火の如くお怒りになられるし・・・少しくらい時間に遅れてもいいじゃないですか!」

「なに!頑張っているアイシャを脅したのか?!!なんて非道な連中だ!」


仕事をサボっていたら注意する。

間違えたら叱る。

それは当たり前のことなのではないのですか?とポカンとしてしまいました。

彼女の言っていることがよくわかりません。

御者でしたら、馬車の管理をするのは当たり前。

道を間違える等、言語道断。

しかも時間に遅れてもいいではないかと暴言を吐く。

これは・・・雇いたくない人種です。

公爵令嬢も、目を見開き彼女の発言に只々驚いていらっしゃいます。


「・・・確かに御者の方は専属で我が家に来て下さっている方が数名いらっしゃいますが・・・我が家で雇っているという訳でもありませんし・・・素行が悪い方は御者の協会に言って注意をして頂きますが・・・けっして脅すだなんてことは・・・」


公爵令嬢が戸惑いながらお話をされていますが、御者の娘を名乗った少女は全くその話を聞いておりません。


「私!いっぱい怒られたんです!謝罪して下さい!」

「そうだ、アイシャに謝れ、レリアナ!!」


え、えええええ─────・・・???

公爵家のせいで、いっぱい怒られたから謝罪しろ???

それは、あまりにも・・・あまりにも理不尽ではなくて?

滅茶苦茶な物言いですのに、それを擁護する王子も王子ですわ。

信じられない。

そして、私のパーティーも平気な顔で滅茶苦茶にする。

信じられない。


私は、傍に控えていた近衛騎士に目線をやりました。

『あの方たちをどうにかして頂戴』という意味をたっぷり込めて。

私の目線に気付いた彼は、コクリと頷くとソッと側を離れていきましたが、すぐに戻ってまいりました。

部下に指示を出してきたのでしょう。

これで騎士がすぐに動いてくれるはずです。



何故、私がこんなに落ち着いていられるかというと───・・・

正直この光景も、催し事がある度におこなわれると、巻き込まれる方も慣れてくるものです。

ある時はダンスパーティーで・・・

ある時は歌唱コンクールで・・・

ある時は品評会で・・・

またある時は春夏秋冬のあらゆる社交の場で・・・

そして・・・今回、私の誕生パーティーでも・・・婚約破棄がおこなわれました。


ええ、ええ。

慣れていますけれどね・・・?

いくら慣れていてもね・・・?

王子主催の催し物ではなく、他国の王女の誕生日パーティーで騒動を起こすだなんて・・・

あまりにも!あまりにも!!非常識ではないかしらあ・・・?

我が国を馬鹿にしているのかしら?


私は青筋を浮かべながら、アフィール王国の第二王子を嫌悪の眼差しで睨みます。

人様の誕生日パーティーをめちゃくちゃにするとは、どういった了見なのでしょう、この非常識二股王子は。

社会的な制裁を加えてやりますわよ・・・?

まあ、私がやらなくても、私以外のどなたかが制裁を加えて下さるでしょうけれど。



・・・と、そんなことを考えているうちに、先程呼んでおいた騎士が室内に大勢入ってきました。

そしてアフィール王国第二王子と、ピンクゴールドの髪の少女を手早く捕まえ、あっという間に連行していきます。

「俺を誰だと思っている!」とうるさわめいているようですが、他国でそのような横暴な振舞いが許されると思わないで頂きたいわ。

断罪された側の公爵令嬢は、申し訳なさそうに、私に深々と頭を下げております。

まあ・・・あのお方は何も悪くありませんのに・・・

ダメな婚約者に振り回されて、本当にお気の毒だわ。


騒動の原因が退場し、白けた雰囲気を一新させる為、私はお招きしたお客様方に声をかけます。


「皆様、お騒がせして申し訳ありません。この場に相応しくないお方にはご退場頂きました。引き続き私の誕生パーティーをお楽しみ下さい」


そして来客の皆様にむかい、にっこり微笑みます。

本日のパーティーの主役である私は、国の顔としてこの場に立っているのです。

私のお客様として相応しくない方に、私の苦労の結晶であるパーティーを壊させるわけには参りませんわ。

このパーティーの準備にどれだけ時間と手間をかけたと思っていますの?!


私の対応に安堵したのか、室内に少しづつ賑やかな雰囲気が戻ってまいりました。

なんとか収まった場の雰囲気を確認すると、私は思わずホッと安堵の息をつきます。

メイドが手渡してくれた飲み物が入ったグラスを傾け、中の液体をゆっくりと飲み干しました。

とんだ誕生日になってしまったと思いながら、痛む頭を揉み解したい衝動にかられてしまいます。

ああ、いけない。

まだ人前なのですから、我慢しなければいけませんわ。




何故こうも毎日・毎日・毎日・毎日、断罪や婚約破棄がおこなわれますの?!!

訳がわかりませんわ!

そしてそのことに疑問を感じている方がいらっしゃらないのも異常だと思うのです!!

私がおかしいのかしら?!!


私は、解答が出ない問いに頭を悩ませます。

そして結局いつも同じ考えに行きつくのです。


『いいえ!おかしいのは皆様の(ほう)ですわ!!』





明日、7時に中編をアップ致します。

宜しくお願い致します。


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