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汝ウサギなれど鷹が如く  作者: ふーろう/風楼


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これからも空で


 グレアスから魔導に関する話を聞いて警察署を後にして……夕食時。


 俺は屋敷にアンドレアとジーノを招いての、夕食会を開催していた。

 ルチアに頼んでいつもよりもちょっと豪華な魚料理を作ってもらい、庭にテーブルやらを用意して、いくらかの酒も用意して。


 そうして皆でテーブルを囲い、乾杯を済ませ、ある程度食事が進んだのを見計らって、件の新聞の話と魔導の話をし始める。


 最初は新聞の記事をただのデマと考えて笑っていたアンドレアとジーノも、警察署長が情報源である魔導の話となると真剣な表情をするようになり……俺が話を終える頃には俯き、うんうんと唸りながら考え込むようになっていた。


「―――まぁ、魔導って技術が確立されても、既存の技術も負けてはられないと改善努力をするんだろうし、あっという間に取って代わるってことはないんだろうが……それでもいつかは時代が変わる時が来るんだろうな。

 思えば島にやってきた時の王様も、空の上に思いを馳せていたっていうか、冒険したがっていたっていうか……何か大きなことをしてやろうと企んでいるような様子だったからな……。

 もしかしたら魔導の研究、普及を主導しているのは王様なのかもしれない。

 だからまぁ……今の段階からそのつもりで、未来を見据えて仕事をする必要があるだろうって話をしたかったんだ。

 最近色々儲かってるからって飛行艇の買い替えとかも考えていたかもしれないが……大きな買い物をするならそれなりの覚悟の上でするか、これから魔導がどうなるのか、その動きを見定めてからでも良いかもしれないな」


 と、そう言って話を締めた俺は、アリスの顔を見てクレオの顔を見てアンドレアとジーノの顔を見ながら、香草たっぷりの焼き魚にナイフを入れて、その白い身を切り分け始める。


 ふんわりと香草の香りと魚独特のなんともいえない良い香りがふんわりと漂ってきて……その香りを堪能していると、大きなため息を吐き出したアンドレアがワインのグラスを手に取りながら口を開く。


「いやー、アニキ達と組むようになってから驚くようなことばっかりでしたけど、今日のは特別インパクトがありましたねぇ。

 魔導……魔導かぁ。

 昔、科学ってもんが出始めた時の、魔法使いたちもこんな気分だったんですかねー?」


 その言葉を受けて、隣の席のジーノもワイグラスを一息に空にしてから口を開く。


「いや、でも早めにこの話を聞けたのはありがたい。

 ……ラゴスさんやクレオさんに負けてられないと、新型飛行艇のパンフレットを睨む毎日だったから……改めてかみさんと相談しないと。

 今の飛行艇でも十分に仕事はできてるんだし、使い潰すつもりで様子を見るべきなんでしょうな」


 二人の言葉に頷いた俺がクレオの方へと視線をやると、クレオは魚を切り分けることもせずに、頭と尾を掴んで持ち上げてかぶりついてから……自分に視線が向いていることに気付いて一生懸命に咀嚼し、飲み下してから口を開く。


「あー、自分は特に何もないですよ?

 軍属ですし、機体に関しては軍が決めることですし、決定事項に従って対応し、その魔導とやらに順応するだけのことです。

 ……ただまぁ、そうですね、軍人として言わせてもらうなら……あの新聞に書いてあった空中軍艦が本当に出来上がったとしたら、空の戦いは一変するでしょうね。

 あの大きさのミスリルの塊とかワイバーンとかの炎じゃぁ、びくともしないんでしょうし、そもそも火力が段違いですし、もっと大きくしたなら飛行艇……じゃなくて飛行機の搭載なんかもできるでしょうし……空中での補給、出撃ができる空中港の出来上がり、なんて話にもなるかもですし」


 そう言って再度魚にかぶりつくクレオ。


 その様子を微笑ましげに眺めたアリスは、微笑みながら俺の方へと視線をやってきて「ラゴスは?」と短い問いを投げかけてくる。


「俺はまぁ……変わらないだろうな。

 あの飛行艇と一緒に稼げるだけ稼いで、稼げなくなったら別の仕事をするか、何か趣味でも作って貯金生活をしたら良いわけだし……。

 今回の金が振り込まれたら貯金も結構な額になるからなぁ、いきなり明日から魔導の時代ですってなっても……まぁ、困ることはないだろうな」


 と、俺が返すと、周囲の皆が「いくらなんだ?」と、そんな問いを視線で投げかけてくる。


 その視線を受けて少し悩んだ俺は……まぁ、こいつらなら言っても良いかと心に決めて、支払通知書に書いてあった金額を口にする。


「1000万リブラ」


 ぶはっ。


 と、俺の言葉の直後にそんな音が響き渡る。


 吹き出したのは二人、アンドレアがワイン、クレオが魚の身。


 ジーノは至って冷静な顔をしながらワインの瓶をそのまま飲もうとし始めて、アリスは他人事のようにからからと笑う。


「いや、アリス。

 他人事のように笑ってるがな、これは俺とアリスへの支払いだから、俺とお前の金な訳で……500万ずつ分けるもんだぞ?

 お前の口座を作って振り込んでおくから……本土の学校に行きたいだとか、王様が言ってたように政治家になりたいとか言い出した時に使ったら良い。

 ……まぁ、俺はまだまだいけるとこまで稼ぐつもりだから、もっともっと金額が増えるかもしれないけどな」


 と、俺がそう言うと、クレオとアンドレアとジーノはまだ稼ぐ気なのかという視線を向けてきて……アリスは「なるほど、本当に政治家になれちゃうかも」なんてことを呟き始める。


「金の亡者になりたいって訳じゃぁないが……金はあって困るもんじゃないし、蓄えが出来たから俺達だけお先に引退ってのもちょっとな……。

 正直最近、賞金稼ぎの仕事が楽しくなってきていたりもするし、空を飛ぶのは楽しいし……いけるところまで、身体に限界が来るか、時代遅れになるまでは頑張ってみたいんだよな。

 ……だからまぁ、当分はここにいる皆と空を飛び回る日々を送ることになるだろうさ」


 と、俺がそう言葉を続けると、アリス達はそれぞれの反応を見せてくる。


 アリスは笑顔で、クレオは俺の話よりも魚に夢中で。

 アンドレアは何を思ったか握りこぶしを作りながら気合を入れていて、ジーノは腕を組んでうんうんと頷いていて……。


 そこにルチアが新しい料理を……トマトの香りと魚介の香りがたっぷりとつまったスープの入った鍋を持ってきてくれて、その香りを嗅ぎつけた俺達は、兎にも角にも今は上手い飯だと、テーブルの上に積まれたスープ皿にそれぞれの手を殺到させるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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