戦いを終えて
ハイエナ共との戦いが終わり……ゆったりと飛行艇を流していると、クレオ機から光信号が放たれる。
『えっと……『着水』『二機』『話し合い』かな。
んー……どうする? 着水する?』
「二機というのは……こっちとクレオでってことか。
全機じゃないのは……また敵がやってくるのを警戒してってことか。
よし、じゃぁとりあえずクレオには『了解』と送って、アンドレアとジーノには『待機』と『警戒』って送ってくれ」
『はーい』
そんな会話の後に、アンドレアとジーノの了承を得た俺達は、ゆっくりと島から少し離れた位置に着水し……クレオの着水を待つ。
するとそう間隔を開けずにクレオが着水してきて……ゆっくりと波を立てながらこちらにやってきて、声をかけてくる。
「ラゴスさん! 一旦帰還してグレアスさん達に応援を頼んで貰えませんか!
人質がいるという情報が入っちゃった以上は、あの島の確認をしなくちゃいけませんし……自分達だけであの島を制圧するのは危険です。
警察の応援があれば、自分達との連携でなんとかなると思いますし……兎に角人を集めて来て欲しいと伝えて欲しいんです!」
「それは別に構わないんだが、別に俺達じゃなくても良くないか?
アンドレアとジーノでも……」
そう俺が言葉を返すと、その途中で首を左右に振ったクレオが語気を強めてくる。
「確かに応援を頼むだけなら他でも良いですが……ラゴスさんの機体は被弾した上、アリスちゃんは初めてトリガーを握った『初陣』です。
機体のことを思えば少しでも早く帰還して点検する必要があるでしょうし……アリスちゃんのことを思えば、少しでも早く帰還して日常に戻してあげる必要があるでしょう。
これ以上敵の援軍が来るというのはまず無いでしょうし……後のことは自分達に任せて、先に休んでいてください!」
その言葉を受けて、俺は慌ててアリスの方へと視線をやる。
アリスは至って普通の態度で、いつも通りの表情で小首を傾げているだけで特に変わった様子はない……が、たしかにクレオの言う通りかもしれない。
アリスを子供扱いするわけではないが……流石に今日ばかりは気を使ってやるべきなのだろう。
そうしてコクリと頷いた俺は操縦桿を握り直し……エンジンをスタートさせながらクレオに「後は頼む!」と声をかける。
するとクレオは親指をぐっと上げて任せろと無言で伝えてきて……俺はその姿を横目で見やりながら飛行機を離水させる。
そうやって空に戻り、ナターレ島へと針路を向けて……その途中で、アリスに声をかける。
「アリス……その、大丈夫か?」
『何が?』
アリスを心配しての一言に、あっさりとした即答が返ってくる。
「い、いや、今回俺達は人を殺した訳だろう? そのことについて何か思うことはないのかってな……?」
『無いって訳じゃないけど……そんな心配されるようなことじゃないよ?
あの人達が善人だっていうなら話は別だけど、頑張って働いていた罪のない人達を殺して略奪をしたような連中だもの、そんな連中相手にいちいち気に病んでなんかいられないよ。
それにさ……私達が美味しいご飯を食べているときも、ぐっすり眠っているときもグレアスさんやクレオのような人達が、何処かで皆を守ろうと戦っていて……悪人を殺したりしている訳でしょ?
私達が平和に暮らせるように、安眠出来るように頑張ってくれている人がいて、その人達は私達のために悪人達と戦ってくれている。
……そのことを思ったら、そんなうじうじなんてしてられないっていうか……皆のために戦ってくれている人に失礼かなって』
「な、なるほど……。
そういう考えもあるのか……。
あー……それでも、もし一晩か二晩経って辛いと思うようなことがあったら、クレオとかグレアスとか、奥さんに相談しろよ?
一人で抱え込むのが一番いけないことだからな」
『うん、その時はラゴスに相談する。
ラゴスこそ、何かあったらぐじぐじ悩んでないで、皆に相談するんだよ?
ラゴスって結構神経質っていうか、気にしぃっていうか……ハートがちっちゃいとこあるから』
「ぐむ……」
言い返そうにも言い返せないと言うか、図星を突かれたというか、そんな言葉を受けて俺は黙り込む。
黙り込んで操縦に集中し、そうこうするうちに島が見えてきて……着水した俺は真っ直ぐに整備工場へと向かう。
「親方! すまねぇ、被弾しちまった!
被弾箇所はおそらく翼、穴はあいていないようだが一応確認してほしい!」
整備工場に入るなり俺がそう声を上げると、工場の皆がわっと駆け寄ってきて……、
「このへたくそ!」
「ケツに目をつけて回避しやがれよ!!」
「も、も、も、もし、翼を交換となったら、えらい騒ぎだぞ!!!」
なんてことを言いながら、俺を力づくで操縦席から引きずりだし、アリスをそっと引っ張り出し、慌てた様子で飛行艇の確認をし始める。
そうしてトドメとばかりに親方の、
「こんの半人前!」
との一言と、張り手を背中にバシンと受けた俺は軽く肩を落とす……が、それを見てアリスが「ほら、やっぱりハートが小さい」なんてことを笑いながら言ってくる。
それから手を口で抑えながらくすくすと笑い……そうしながら後ろを見てみろと指でもって示してくるアリス。
それを受けて後ろを……飛行艇の方を見ると、整備工場の皆が、一生懸命に真剣な表情で翼の確認作業を進めていて……特に親方が、ちょっとした損傷なら手出しせずに、どんと構えて作業の様子を見守っているだけの親方が見たこともないような真剣な表情で確認作業をしていて……俺はその光景になんとも言えない感情を抱く。
笑ったら良いのか、泣いたら良いのか。
なんとも答えが出ないまま、とりあえず警察署に行こうと足を踏み出した俺は……アリスと一緒にいつもの坂道を昇っていく。
すると誰かから話を聞いたのか、帰還する飛行艇を見ていたのか、グレアスが坂の向こうから走ってきて……、
「おおおおおい! ど、ど、ど、どうなった!?」
なんてことを凄まじい形相で叫んでくる。
その姿を見た俺とアリスは、お互いの顔を見合い……結局大きな声を上げて笑ってしまうのだった。
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次回は事後処理です。




