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汝ウサギなれど鷹が如く  作者: ふーろう/風楼


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巣にいたそれは……


 休憩と整備を終えて、そうして俺達はケスタ島を飛び立ち、ワイバーンの巣があるという島の方へと針路を取った。


 昔は陸地として繋がっていたのではないかと思うような、一本の線のように点在する島々。

 ケスタ島をその始点とするなら、ワイバーンの巣は終点ということになる。


 海を渡りいくつかの島を通り過ぎ……そうして見えてきたその島は、島全てがワイバーンの巣と化していた。


 ガルグイユの時もそうだったが、魔物達はそこにある自然全てを破壊して、自分達が好む形へと作り変える習性があるようで……島の木々全てがなぎ倒され、島全体が掘り返され、むき出しの土肌となった地面に、数え切れない程の木材や船の破片でもって大きな円を作り出した、という感じだろうか。


 ……その中心にワイバーン達の寝床とも思われる一帯があり、孵化場があり……そこに遠目でも分かるほどに異形のワイバーンがそこにいた。


「突然変異ってやつか……?」


 それをにらみながら俺がそう呟くとアリスが言葉を返してくる。


『なぁにあれぇ……長い首が4つもあって、翼が6枚。

 すっごく大きくて、ワイバーンじゃないみたいで……でも、翼の未熟な感じから見るに、子供なんだよね……アレ……』


 ワイバーンを大きくし、太らせて、首と翼を付け足して、出来上がったというかなんというか……もはやワイバーンとも呼べない化け物がそこにいた。


「……周囲に他のワイバーンの姿はなし。

 というか奴の足元の破片……あれ、ワイバーンの翼だよな?

 もしかしてあいつ、仲間を食ったのか……? 孵化場がある割に他の子供がいないのはもしかして……。

 ……俺達が遭遇したワイバーン達はアレから逃げようとしていたのか……それかアレの餌を調達するために必死になっていたのかのどちらかのようだな」


『……ラゴスは巣の護衛とか色々言ってたけど、多分必要ないよね、護衛。

 アレ、ワイバーンより絶対に強いもんね……?』


「……どう、だろうなぁ。

 そもそもあれ、飛べないだろう? 体はやたら大きい割に翼はよれよれで未熟で小さくて……。

 魔力で飛ぶことは出来ても、姿勢制御なんて出来ないんじゃないか?」


『……で、どうするの?

 皆にはなんて送る?』


 そうアリスに言われて俺は……少しの間悩んで、ぐっと操縦桿を握りながら言葉を返す。


「『駆除』とそう送ってくれ。

 油断はせずに、全力でいくぞ……!」


 そう言って俺は、機首をゆっくりと下げ、ワイバーンの巣に鎮座するそれへと狙いを定める。


 そうしてアリスが光信号を送り終わるのを待ってから……速度を一気に上げていく。


 空は飛べないのだろうがあの異形の姿……一体何をしてくるのやら、どんな攻撃をしてくるのやら分かったもんじゃない。

 出来ることなら速攻で、一度の接敵で倒しきりたいもんだが……と、そんなことを考えながらトリガーへと親指をかける。


 距離を詰めていって、しっかりとスコープの中央に巨体を捉えて……トリガーを一気に押し込む。


 硬い装甲で激しく弾丸を弾いたガルグイユとは全く違う、鈍い着弾音が響いてくる。

 回避も何もなく、発射された弾丸全てが直撃し、弾かれることなくその体を貫き……だが、ソレは全く気にした様子もなく、悠々と構え続ける。


 確かに命中し、確かにその体を引き裂いているはずなのに、ダメージが無いのか余裕の態度を見せつけてきて……そうして首の一つがくわりと口を開き、そこから炎弾を吐き出してくる。


 すぐさま機体を回転させ、回避行動を取り……そのまま高度を上げて一旦ソレから距離を取る。


 するとそんな俺に続く形でアンドレアとジーノが攻撃を仕掛け、だいたいここらで反撃されるだろうというタイミンで回避行動を取り……クレオが続いて攻撃を仕掛ける。


 相手は全く攻撃を回避しようとせず、その全弾が命中しているのだが、しかし全く怯まず、揺るがず……。


 もしかして機関銃が効いていないのだろうか? と、そんなことを考えているとアリスが声を上げる。


『効いてる! 効いてはいるよ! ちょっとだけだけど血が吹き出てたのを見たし、効いてるはず!

 ただアイツ、回復っていうか、再生速度が凄まじいんだよ、あっという間に傷がふさがっちゃってる!

 でも確かに血は出ていたから……攻撃は全く無意味じゃぁないはず!』


「そうか……そうか!

 ならアリス、光信号で皆に『有効』『続行』と繰り返し送ってくれ!

 こっちを見ている余裕があるかは分からないからな、一度ではなく二度三度頼むぞ!」


 と、そう言って俺は機首をソレの方へと向ける。


 血が出ていたなら、何度も何度も出血させてやれば良いはず、再生だってそれなりの体力を使うはずで……体力も血も無尽蔵な化け物なんて存在しないはずだ。


 そう考えて俺は、操縦桿をぐっと握り、機体を震わせながら直進し、そいつに再度の攻撃を仕掛ける。


 するとそれを見ていたのか、読んでいたのか、別方向の別角度にかまえていたアンドレアとジーノとクレオが、俺の攻撃にタイミングを合わせての同時攻撃を仕掛けてくれる。


 4方向からの轟音が響き、数え切れないほどの弾丸が発射され……ソレの体をどんどんと引き裂いていく。


 するとソレは、流石に同時攻撃は堪えるものがあったのか、


『ギュォォォォォォ!!』


 との凄まじい方向を上げ、4つの首をバラバラに動かし……一機に対し首一つ、俺達全員に狙いをつけて炎弾を吐き出しての攻撃を仕掛けてくる。


 そんな攻撃を受けて俺は回避しながらの攻撃を続けて、クレオも同様の動きを見せて……機体性能に難があるアンドレアとジーノは攻撃を中断し、余裕を持っての回避行動を取り始める。


 4つの首は確かに驚異だが、その動きは緩慢で、炎弾攻撃も回避しやすいくらいに真っ直ぐで……全く俺達の動きを読んでいないというか、ただ適当に炎弾を吐き出しているだけというか、まだまだ戦い慣れてない感じがある。


 そんな有様を見てこれならば勝てるだろうと、そんなことを俺が思った瞬間―――ソレはまさかの行動に出てくる。


 体内の魔力を使い、空にぷかりと浮かび上がり……よれよれの小さな翼を振り回し、デタラメな姿勢制御を行い、空中でくるくると回転したり、意味のわからない挙動をしたりとしながらデタラメに炎弾を吐き出してきやがったのだ、


 それはまさに赤ん坊の駄々こねというか、子供の癇癪が爆発したような有様で……あまりにデタラメすぎるそんな攻撃を受けた俺とクレオは攻撃を中断しての回避行動を取る。


 その身体そのものが回転している上に、全く狙いをつけていないせいで軌道が読めず、4つも首があるせいで攻撃はいつまでも連続し……そんな攻撃を安全に避ける為に俺達は、炎弾の射程外まで一旦引くことになるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

次回はこの続きです。

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