ねがいごとふたつ
だいじんたちのやまいがなおっても、いっけんらくちゃくとは、いきませんでした。
おうさまたちは、やまいでやつれたからだが、ばんぜんでないからと、おうじさまがぎょくざを、ゆずらなかったのです。
さらに、おうじさまはティアにめいじます。
くすりがつくれるというなら、やまいにくるしむひとびとすべてに、くすりをつくってあたえろ。できないというのならば、おまえははりつけだ。
おうぼうだと、だれもがおもいましたが、やはりいさめられはしません。
やまいがなおったといっても、まだおうさまたちは、ベッドからおきあがれもしなかったからです。
ティアはいずみのほとりで、あかいはなをさがしまわりました。みつけたはなの、はをつみとっては、くすりにしましたが、くにじゅうにくばるには、とてもたりません。
はなをさがしまわり、くすりをつくりつづけたティアは、すっかりやせほそり、やわらかかったはだは、きりきずとやけどでぼろぼろになってしまいました。
けれどそれでも、くすりはたりません。
そくひさまがくすりをもっている。
くすりをくれ。
たすけてくれ。
たすけをもとめる、ひとびとのこえが、ティアをあせらせ、おいつめます。
けれど、はながなければ、くすりはつくれないのです。
とほうにくれたティアは、じぶんのへやでひとり、かなしく、なまえをよびました。
「ルーン」
「よんだかい?」
「もりをあらしてごめんなさい、ルーン」
うつむいていうティアの、きずだらけのからだに、ルーンはひどく、かなしいかおをしました。
「あなたが、そんなにくるしむひつようは、あるのかい?」
ルーンのうつくしいてににぎられると、ティアのては、あまりにみすぼらしくやせ、あわれなほどにぼろぼろな、みにくいてでした。
「わたくしのくるしみなんて」
じぶんのてのみにくさに、おどろきながらも、ティアはくびをふりました。
「やまいでくるしむひとびとの、くるしみにくらべれば、とるにたらないものよ」
ルーンがかなしげなまま、あきらめたようにわらいます。
「やさしいティツィ。ねがいがあるのでしょう?」
こんなふうに、ルーンをかなしませることは、ほんとうにただしいのかしら。
ルーンをりようすることを、くるしくかんじながら、ティアはルーンのきんりょくのひとみをみつめました。
「くすりが、ひつようなの。でも、ざいりょうがたりなくて」
ティアのてをなで、ルーンはこたえました。
「このゆびわをくれるなら、ほしいだけくすりのざいりょうをあげる」
ルーンがしめしたのは、しんだおかあさまのゆびからぬいた、きんのゆびわ。りょうしんのけっこんゆびわで、おかあさまのかたみです。
まようこともなく、ティアはじぶんのゆびから、ゆびわをぬきとりました。
「だいしょうはわたすから、やまいでくるしむひと、すべてにいきわたるよう、くすりのざいりょうをください」
「うけたまわったよ」
ルーンがうなずいたとたん、へやがみどりのかおりでみちました。へやをうめつくすように、かわいたくさがつみあげられます。
うれしいはずなのに、ティアはかなしくなりました。
「ありがとう、ルーン」
くるしむひとびとが、たすかることが、うれしいのに。
ただのティツィとルーンでなくなっていくことが、かなしくてしかたない。
ほほえむこともできないティアを、ルーンはいたいたしくかおをゆがめて、だきしめました。みどりのなかで、おひさまとキャラウェイがかおります。
「かわいいわたしのおひめさま。だいじょうぶ。なにがあろうと、わたしはあなたのみかただから」
「ありがとう。ごめんなさい、ルーン」
「あやまらなくていい。また、いつでもおよび」
ルーンのくちびるが、ティアのまぶたにふれ、ティアがめをとじた、そのすきに、ルーンはきえていました。
のこったのは、たいりょうのくさだけ。
「くすりを、つくらないと」
ティアはあたまをきりかえて、まえをむきました。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
自分で書いているのですが
読み返して思います
ティツィアーナさんの状況が辛過ぎると
ティツィアーナさんが幸せになれるよう祈りながら
続きも読んで頂けると嬉しいです