ねがいごとひとつ
おしろにもどったティアはまた、そくひとしてけんめいにはたらきました。ただしいこととはなにか、じぶんなりにかんがえながら。
ルーンはかわらず、もりでティアとすごしてくれました。
かわらない、ティアとルーン。
けれどまわりのひとびとは、かわらずにはいてくれませんでした。
やまいがりゅうこうして、ティアのりょうしんがたおれました。ちりょうのかいなくティアのりょうしんはしんでしまい、それでもおさまらないやまいのきばは、だいじんにのび、こくおうとおうひさまにまでかかりました。
やまいにたおれたこくおうにかわって、ぎょくざについたのは、おうじさま。
おうじさまは、ティアにめいじます。
おまえがゆうしゅうだというのならば、おうとおうひをたすけてみせろ。できないというのならば、おまえはうちくびだ。
そんなむちゃなと、だれもがおもいましたが、いさめられるひとも、とめられるひともいません。
ティアはひっしで、やまいをなおすほうほうを、さがしましたが、みつかりません。
このままでは、りょうしんのように、だいじんも、おうさまも、おうひさまも、しんでしまう。
もりへいかせてくれるだいじんも、いなくなってしまったいま、ティアはほんとうにひとりぼっちです。
どうすればいいかわからなくなってしまったティアは、おもわずつぶやきました。
「たすけて、ルーン」
「よんだかい?」
めのまえにあらわれたうつくしいかおに、ティアはぽかんとめをみひらきました。
「ルーン……?」
「なんだい、ティツィ」
「どうして……?」
「あなたがよんだからだよ」
やくそくしたでしょうと、ルーンはほほえみます。
「さて、わたしのかわいいおひめさまは、なににこまっているのかな?」
ほんとうに、たすけてもらえるだろうか。そんなこと。でも、ルーンなら。
うたがうきもちと、きたいするきもちが、すこしずつ。ないまぜのきもちのまま、ティアはルーンにはなしました。
やまいがはやっていること。りょうしんがしんだこと。おなじやまいでくるしむだいじんたちを、たすけたいこと。
「そのひとたちはティツィをくるしめたのに、たすけたいのかい?」
「たすけたいわ」
「やさしいティツィ。そのために、あなたはなにをさしだせる?」
「なにを?」
まるでたすけることができるようなくちぶりに、ティアはめをまたたきます。
ルーンはうなずいて、ティアのてをとりました。
「ねがいごとをかなえることはできる。でも、そのためにはだいしょうがひつようなんだ」
「だいしょう……どんなものなら、だいしょうになるの?」
「ちえをひとつならば……」
ルーンがティアをみて、かたてをむなもとにのばしました。
「このくらい、かな」
ルーンがてにとったのは、ティアがむなもとにさげたきんどけい。ティアがおとうさまのかたみとして、いえからゆずりうけたものでした。
ティアにとって、おとうさまのかわりといえる、とてもたいせつなもの。
じぶんのきもちか、ひとのいのちか。
このくにに、ひつようなものは。
「これをだいしょうにするわ。だから、たすけて」
ティアはくびからきんのとけいをはずし、ルーンにさしだしました。
「いいのかい?」
「しんでしまったら、もうもどらないもの」
じひぶかく、ただしく、きよらかであれと、じぶんにおしえたおとうさまならば、ティアがかたみを、もちつづけることよりも、それがひとだすけにやくだつことを、よしとするでしょう。
ルーンはうなずき、きんどけいをうけとりました。
「うけたまわった。では、あなたにちえを。もりのいずみのほとり、スイセンににたあかいはな。その、はをせんじぐすりにしてのませなさい」
「もりのいずみのほとり、スイセンににたあかいはなの、はっぱ」
「そう。はをよくかわかしてから、あついおゆでじゅうぶんに、にだすんだ。はなとおなじほどに、おゆがまっかにそまるまで、しっかりとね。わかったかい?」
「ええ」
きぼうのひかりに、ティアはめをかがやかせます。
「10まいのはに、おゆは1ガロン。のませるのは、いっかいに1オンス。あさとばんにいっかいずつ、みっかかんのませつづけなさい。いいね?」
「わかったわ。ありがとう、ルーン」
ティアはそっと、ルーンのほほにくちびるをよせ、ちいさくほほえみました。
「あなたがいてくれて、ほんとうによかった」
「どういたしまして、わたしのかわいいおひめさま。また、こまったらいつでもおよび」
ルーンはあらわれたときとおなじく、まぼろしのようにすがたをけしました。
ティアはこぶしをにぎり、ひとをよぶと、すぐさま、もりへとむかいます。いずみのほとり、あかくめだつはなは、すぐにみつかりました。
しろくやわらかなてが、きずつくのもきにせず、つるぎのような、はを、つみとります。
いそいでおしろにもどると、だんろをあかあかともやして、はをかわかします。
はやくかわくようにと、ねるまもおしんで、つきっきりであおぎつづけ、かわくなりおゆでにだしました。
ひろうでふらふらになりながら、せんじぐすりをはこびます。
だいじんも、おうさまも、おうひさまも、まっかなせんじぐすりにおどろきましたが、ティアをしんじてくちにします。
そして、みっかののち、だいじんたちのやまいは、すっかりよくなっていました。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
打ち首の唐突さは原作準拠です
童話すぐ殺そうとする……
続きも読んで頂けると嬉しいです