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山科と京都の間 2

 不思議な音程に、微睡みから目覚める。

 外の風景は、うみから灰色の町へと変わっていた。

 もうすぐ、あと五分ほどで、あの街に着く。そっと視界を通り過ぎた『山科』の文字を確かめる。あの人が暮らす街に着く。……あの人に、逢える。


 あの人に会って、どうするのだろう? 混雑していく町並みに、息を吐く。

 大学に進学するためにあの街に降り立った時からずっと、あの人は私よりずっと前を走っていた。既に、その背は遠い。それなのに、私は何故、安くない特急列車に乗ってあの人に会いに行くのだろう? 途切れることなく回る思考に、私は思わず頭を抱えた。


 その時。

 窓を流れる町並みの速度が、落ちる。

 もう、着いたのだろうか? 静寂に包まれた、動きのない車内で顔を上げる。いつもより、速い。しかし窓の外には、駅がある。降りなければ。膝の上の荷物を手早く掴むと、私は座席から立ち上がった。


 だが。

 通路に出た時点で、違和感を覚える。……特急列車の停車駅なのに、降りる人が、一人も、見当たらない。何故? 胸騒ぎを覚え、震えながらもう一度窓の外を見る。濃い灰色の靄がかかったように見える駅に、人影は無かった。

 この駅は、あの人がいる街の駅ではない。震えるままに、座席へと戻る。

 乗り過ごした覚えはない。あの人に会うために何度もこの特急列車に乗っているが、この駅は、……知らない。呆然と見つめた窓の向こうは、少しずつ、灰色を無くしていった。

 そして。


 顔を上げると、連絡した覚えはないのに、何故か駅のホームに佇んでいるあの人の影が瞳に映る。

 ホームに滑り込んだ特急列車を認め、そして再び俯いたその影に、私は誰にも気取られないようにそっと、首を横に振った。

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