表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

山科と京都の間

 不思議な音程に、微睡みから目覚める。

 外の風景は、うみから灰色の町へと変わっていた。

 もうすぐ、あと五分ほどで、あの街に着く。そっと視界を通り過ぎた『山科』の文字を確かめる。あの人が暮らす街に着く。……あの人に、逢える。


 山間の田舎町に生まれ暮らしていた自分にとって、大学に通うために居を定めた京都の街は、眩しいほどに都会だった。その街でずっと暮らしていたという、同い年のあの人も。賑やかにしか見えない窓の向こうに、息を吐く。

 出会った時からずっと、あの人は私の前を走っていた。それは、今も変わらない。同じ道を進んでいたはずなのに、北陸の田舎町で地味に生計を立てている自分に対し、あの人は、この落ち着いた街でキラキラと働いている。

 嫉妬や羨望は、確かに、胸の中にある。だが、その昏い想いよりも強い、『愛しさ』という感情が、この胸で疼いているのも、確か。だから、少し長い休みが取れる度に、私は、北陸から関西へと向かう特急列車に飛び乗ってしまう。……あの人に、会うために。


 窓を流れる町並みの速度が、落ちる。

 考え事をしているだけで、五分は瞬く間に過ぎ去ってしまう。


 もうすぐ、着く。あの人がいる、場所に。


 妬心に歪んだ、見苦しい顔をしていないだろうか? 車窓に僅かに映る自分の顔を確かめる。大丈夫。あの人に会える、顔だ。


 少し大げさに揺れる車内で立ち上がり、忘れ物がないかどうか、座っていた座席を確かめる。

 顔を上げると、連絡した覚えはないのに、何故か駅のホームに佇んでいるあの人の影が瞳に映る。ホームに滑り込んだ特急列車を認め、そして再び俯いたその影に、私は小さく口の端を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ