第4話「盗人の能力」
俺は逃げ回った。
知り尽くしたいつもの街が違う街のかのようだった。
街ごとゲームのために作ったかのようだった。
盗人とはどんな能力なのか分からない。
試したいという気持ちはある。
そのためにはあいつに色々と聞く必要がある。
まず勝つためにはこの世界での戦場を見つけなければならない。
自分に有利な戦場だ。
「どこかないのか…」
レインと十分な距離を保ちながら走り続ける。
「こんなとこで陸上が役立つとはな」
俺は中学からずっと親の言いつけで陸上を続けてきたが高校に入る数ヶ月前から辞めたくて仕方がなかったのだ。
角を曲がると数百メートル先に廃工場らしきものが立っていた。
俺は昔から走るのと隠れるのは得意だった。
廃工場に入ると一気に三階まで駆け上がった。
一回で物を吹き飛ばす音が聞こえる。
「やばいだろ!」
俺はヘルプを求めるかのようにReaperゲームの送信者に続きの説明をお願いするメールを送った。
返信が来るかもしれない、こんなことを俺は考えていた。
「いつまで逃げるつもりよ!」
「戦いなさい!」
レインは苛立っている様子だ。
このままじゃやばい。
「とりあえず打開策を考えなければ…」
訳も分からないことが起こりすぎて何も考えれない。
考えろ、考えろ、考えろ…
俺はカバンへ手を伸ばした。
すると手がすり抜け何かに触れた。
それを引っこ抜くとカバンの中に入っていた水筒が取れた。
「な、何だこれ」
俺は動揺したがそれと同時に打開策がひらめいた。
「中身の物を取れるというのが盗人の能力なのか!」
「これはなかなか使えるかもしれないな…」