第34話「夢と現実」
「やぁ、いつき」
不思議な少女が俺に話しかけてくる。ここはいったいどこなのだろうか?辺りを見回すが白い空間という以外何もない。
「誰だ?お前」
「えー、ひどいなぁ。相棒を忘れるなんて」
こいつが何を言っているのかは当然俺には理解できなかった。
「俺に相棒なんかいた覚えはないがな」
「リーベンなんてダサい名前つけてたくせに…」
うん?…
もしやこいつは俺の愛用リーベンなのか?だがこんな形をしていただろうか?俺が知っているのは棒の形だ。
「名前…」
「なんだ?」
「リーベンだなんてダサい名前じゃなくてさーちゃんと名前あるんだよねー」
「どんな?」
まさかこんな剣にすら名前があることが驚きだ。それよりも喋れることが不思議で仕方がない。
喋れるんだったら早く喋って欲しかったものだ。
「我が名はプライムだ」
「プライム?」
「そう」
こいつの名前がわかった以上これからはプライムと呼ぶことにしよう。だがいったいこいつは何者なのだろうか?
俺はずっと疑問に思っていた。
「我が何者か気になるって顔してるね」
「あぁ、いったい何者だ?」
俺はプライムに問いかける。
「神さ!」
プライムは自分を神と名乗った。いかにも怪しい奴だ。新手の詐欺かなんかだろうか?
俺は怪しみながら神と名乗るプライムに目をやるがプライムはニコニコしながらこっちを見ている。
「はぁ〜、信じるよ」
「ありがとう。じゃあ特別にレプリカの剣から本物にしてあげるよ」
プライムは俺が信じるというと手慣れた様子で話しを進めていく。
「おい、待て」
「なんだい?」
プライムは呆れた様子で返事を返す。
「レプリカってなんだ?」
「君の使ってる剣だよ?」
「えっ?」
レプリカというとよく飾りとか展示とかに使われているのを思い出すがかなりの切れ味があったようにも思えた。
「本物はすごいよ〜」
プライムはそんなことをいうと自分が乗っていた剣からおり、その剣を俺に投げて来た。
「うわっ!重っ!?」
「当たり前だろ?本物なんだから」
俺は重い剣を持ち上げて軽く振ってみる。
「おっとっとっとっと」
「おいおいしっかりしてくれよ?」
「いや重いんだよ?てかなんで初めからこれくれなかったんだ?」
俺はふと疑問に思ったことを口にした。だがその疑問はごく当たり前のことだ。本物であれば容易に敵を殺すことができるだろう。しかし初めから渡さなかったとみるとあまり信用されていないとも考えられる。なんであれこの剣は今目の前にいる本体といっても過言ではないだろう。
「おいおい、あまり考えてくれるなよ?いつき」
「それは悪かったな」
何をそんなに知られたくないのか俺が推理するのをこいつは嫌っているらしい。
「まぁ頑張れ、いつき」
俺の周りへと黒い煙がまとっていき視界がだんだんと悪くなっていく。プライムが何かを言っているようだがノイズが入って聞き取れなかった。まぁまたいつか会えるだろうと思っていたのであまり気にはしなかった。
目が覚めると俺はベットの上で寝ていたことに気づいた。意識を失ったのは倉庫の中だ。いったいいつのまにここへ来たのだろうか?俺はゆっくりの体を起こしあたりを見回す。
「おっ!目が覚めたか」
「あっ!ナギのおっさん!?」
そこにいたのはナギのおっさんだった。ベットの近くのイスに座りのんびりと本を読んでいた。
「ナギのおっさん!結衣は!?」
「慌てるな無事だよ」
俺は起きた数秒の間で気になっていたことをナギのおっさんに聞いた。無事ということだけ聞ければ俺は安心だった。
しばらくして部屋の扉が開いた。
「あっ!お兄ちゃん起きたんだ!」
部屋に入って来たのは結衣だった。見るからに元気そうだったので俺は少しホッとした。
「心配したよ。なんせ2日も寝てたんだから」
「2日も寝てたのか!?」
「そうだよ。」
俺は2日も寝ていたらしい。通りでさっきから空腹感があるわけだ。だが空腹感よりもレインが気がかりだ。
「おっさん、レインは?」
「ずっと心配して寝ずに看病して30分前くらいに力尽きて寝たよ」
「おいおい、なんだよそれ」
俺は思わず少し笑ってしまった。力が入らない体を無理に起き上がらせ、俺はレインのいる部屋まで向かった。2人は止めようとしたがやれやれとした様子で止めることはしなかった。
「レイン…」
俺はレインの近くに座り手を握って感謝した。
「ありがとうな」
起きるまで俺はずっと待っているつもりだったがレインは部屋に来てから40分程度で目を覚ました。
「…い、いつき!?な、なんで!?」
「ん?目を覚ましたか?」
レインは顔を真っ赤にして慌てている。
「だ、だいじょうぶなの?」
「いやレインこそ大丈夫なのか?ずっと心配してくれて寝てないらしいじゃないか」
「べ、べつにいつきのためなんじゃないんだから!」
レインは恥ずかしがりながら俺の言ったことを否定してくる。ツンデレなのか?少しおちょくってやろうと痛がってみる。
「うっ!心臓が…」
「えっ!?だ、だいじょうぶなの!?」
レインは涙目になりながら俺の方を向いて慌てている。ここで俺は嘘だと自白する。
「嘘だって」
「っ!!!!」
レインは黙ってしまって強く拳を握り下を向く。数秒して俺の方を向いて怒りながらいう。
「バカ!」
「ごめんって」
「もう知らない!」
レインは怒ってまた横になり布団をかぶって反対方向を向いてしまった。
「ごめんってば」
「……」
レインは俺を無視するつもりのようだ。
おーいレインさーん。無視するなんて酷くはないですか?
なんてことを考えながら俺は少し待つことにした。
「…許して欲しかったら私に…」
「あっ!そういえばティナは?」
レインが何か喋ろうとしていたのだが俺はふとティナのことを思い出し口に出してしまった。これが不味かったのかレインはまた黙ってしまった。
「なんか言ったか?」
「知らない!」
ちょっとそれ返事としておかしくないか?普通いや何もないだろ!言うならば。
「おい、ティナを知らないか?」
「へー、分かったわ。」
「えっ?何が?」
「私なんかよりもティナの方が大切なのね。分かってるわ、はいはい。どうせこんな奴なんかよりも可愛らしい幼女が好みなのね?はーい。勝手に頑張ってねー。ロリコンいつき!」
怖い怖い怖い怖い。怖すぎる!レインは何か因縁でもあるのか!?てかロリコンなんかじゃないし!
この後しばらくレインは俺を無視して話してくれなかった。




