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End Of Days  作者: Van
第1章
3/25

【使命....】

王都 ヴァルハン / ウェストエリア第10区 / 貿易港第14ポート



 貨物船【グランバル】の船長である【ダンテ・ゼノスター】は乗組員の居住フロアの通路を脇目も振らずズカズカと進んでいく。がっしりとした体格に褐色の肌そして精悍な顔だちにも関わらず無造作に肩まで伸びた黒髪と顎には短い無精髭という外見は32歳という年齢をいつも5つは上に見られ、ずぼらな性格もすぐにバレる。だが本人は特にそんな事気にしない。


「男は口にした事は死んでもやり遂げる‼人生楽しく大胆に‼」


それが彼のポリシーだ。良く言えば熱血漢で兄貴肌な男、仲間からは時々「親切な筋肉」と揶揄され笑われるがなんだかんだで頼りにされ信頼されていた。今回も約束した仕事を無事に果たしたので顔をニヤつかせながら無駄に堂々としている。足早に目的の部屋にたどり着いたダンテは胸を張り一呼吸入れてからゆっくりと部屋の扉をノックした。



 彼女はこの部屋に入った時、目の前の光景に声を出して驚いた。最初にグランバルは全長142m 横幅36mの貨物船だと船長のダンテからなぜか自慢げに聞かされていたからだ。確かに船に乗り込む時に見た外観も他のコンテナ船とそう変わらず、むしろ旧式でどちらかというと周りの船より少し見劣りして見えてその時はなぜ自慢気なのか分からなかった。しかし、8室あるという客室の1つに案内され扉が開いた先にあったのは豪華旅客船のそれと遜色ないもので驚きと感激のあまり一時ひとときそれまで抱えていた不安や使命感の重圧から解放された。しかし、どこまでも広がる大海原をただひた走る船での時間が長くなるに連れ、忘れていたはずのそれらの感情はより大きなものになって彼女【クラン・フレーミング】の元へと戻ってきた。



 聖ミネルヴァ神国を出航して約一ヶ月が過ぎ、その日クランは物思いにふけりながら客室の船窓から外を眺めていた。つい一時間前までは大海原が広がっていたが今は巨大な倉庫がいくつも建ち並ぶ港で重機などに乗り働く作業員とロボットが見えるだけだ。少しは王都の街並みが見えるかと思ったが目の前の倉庫が視界の全てを覆い隠してしまってる。クランは小さく溜め息を漏らし船窓にうっすらと映る自分の姿を見た。凛とした眉とライトブラウンの大きな瞳、ほっそりとした鼻と薄いピンクの唇、毛先の方が緩くカールした胸まであるダークブラウンの髪を、今は編み込んでトップの髪とまとめて装飾の施された髪留で留めてハーフアップの状態にしている。おかげで小さな顔の輪郭もはっきり分かる。クランは無意識に小ぶりな胸に掛かる垂れてきていた髪を指先に何度もクルクルと巻きつけていた。


(髪..少し伸びたかも)


それが彼女に時の流れを感じさせる。今日は特にそう感じるのかも知れない。クランは昨日貨物船の客室で一人24歳の誕生日を迎えていた。誕生日の事はこの船に乗っている誰にも話していない、ちょうど一年前は友達がサプライズ誕生会パーティーを開いてくれて朝まで楽しく過ごしていた。その時の事を思い出し、強く心を持たなければいけないと分かってはいたけれど涙が頬を伝った。



       コンッ‼ コンッ‼



「入っても?」


扉をノックする音に続いてダンテの声が聞こえてきた。クランは慌てて思い出を振り払い涙をぬぐってから扉の方へ向き直り答えた。


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