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End Of Days  作者: Van
序章
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【神と王】

 遥か昔 【9人の来訪者】が世界レヴァリスに降り立った。それが何者でどうして世界レヴァリスにやって来たのか知る者も知ろうとする者もいない。そんな事はどうでもいい事なのだから、人は誰も知らない地から訪れ、人ならざる能力ちからを持つ異形の生命体を【神】 と呼んだ。




 それは歓喜で迎えられた新世界の始まりだった。だから、人々の耳に届くはずがなかった。破滅と言う名の時計の針が混沌と虚無に覆われた未来へゆっくりと時を刻み出した事に...




 かつて世界レヴァリスには神の数と同じ九つの大陸があった。神々は九つの大陸に別れて降り立ち、人ならざる能力ちからと叡智を用いてその地に住む人々を導き、大きな国を築き上げた。街や村は何処を見ても楽しげに談笑する声や活気で溢れ、それが何世紀にも渡って続いていた。人は繁栄する国に生まれ幸せに暮らしその生涯を終える。だから誰一人として知らない。それは有限の時を生きるからこその喜びであると、同じ世界で無限の時を生きるのがどうゆう事なのか


     永遠の時   悠久の世界


それは最初、一柱の神のなかに芽生えた小さな感情のうねりだった。幸福感に満たされ限られた時を謳歌する人々をただ何百年と眺め続けるだけの日々

「変化」ただそれだけの欲求が増していく...

それは永い時間のなかで徐々に抑えきれない大きな渇望の渦へとなっていき、ついにその時が訪れてしまった。


【終焉の時】


 そう語り継がれる神々の戦争は、永遠と続く変わらない世界を呪い、変化を求める渇望の渦にのみ込まれた神と変わることのない悠久の世界を望む神々の数百年に及ぶ戦いで、言葉では言い表せない無い程、熾烈を極めた。空には分厚い暗雲が広がりその中を雷光が走ったかと思うと耳を貫く雷鳴が轟く、海は荒れ狂い大津波があらゆるものを呑み込み、大地は激しく揺れ大きく裂けた。今まで当然のようにそこにあった幸せや喜びが遠い昔の事に思える程全ては一変した。街はその形を失い、瓦礫が散乱した廃墟では犯罪が横行する。現実から逃げるように心を壊した者が昼夜関係なく徘徊し、耳を覆いたくなる泣き声や叫び声も響いている。いつ終わるとも知れない戦争で人々は知った。悲しみ、恐れ、怒り、憎しみといった感情を


 荒廃していく世界レヴァリスで何百年と続く戦争は無限の時を生きる神々にとっては刹那の時間だったのかもしれない。だが人にとっては永遠にも感じられる時間だった。分厚い雲に遮られ陽の光りも地上に降り注がなくなった闇のなか、耳に聴こえるのは激闘を物語る音と雷の轟音だけの日々、戦いの激しさに耐えきれず崩壊していく世界レヴァリス、この世界はもう永くない人々がそう悟った時だった。


───世界レヴァリスから音が消えた


急に訪れた不気味な程の静寂、意を決した者が立ち上がり歩みを進める。それに従うように、一人また一人と立ち上がりその後に続き、恐る恐る隠れ潜んでていた場所から暗く静まりかえった世界レヴァリスに出た。


 ただ茫然と立ち尽くし荒廃した世界を見渡す人々、次の瞬間、そんな彼らを目を覆う程の激しい「光」が包み込んだ。それは一瞬で世界レヴァリスを明るく照らしたが太陽と呼ばれていた星の光で無いことは太陽を見た事のない彼らにもすぐに分かった。遠くで何かが消し飛んだような爆発音がして、爆風が分厚い雲を吹き飛ばし大地を吹き抜ける。それは八神が反逆者である神をその領土である大陸ごと消し去った瞬間の「光」だった。空を覆っていた暗雲が払われ世界レヴァリスに本当の太陽の光が降り注いだ時、かつて繁栄した国も街もなくなっていた。


 いつ終わるとも知れなかった神々の戦いが終わり、世界の崩壊が止まった。世界レヴァリスは辛うじて形を残し、多くの犠牲を出したが人々も生き残った。戦いに勝利した神々はまた元の何も変わる事のない悠久の世界を創り直せると確信していた。しかし戦争の代償は八神が思うよりも遥かに大きかった。世界レヴァリスには永遠に消える事のない大きな戦いの爪痕を刻み、そして人々には今まで抱いた事のない不の感情を植え付けた。


 「変化」を求めて戦い、敗北した【イリュージア】戦いには敗れたが図らずしも世界レヴァリスにそして人々に「変化」は起こった。だがそれを求めた【反逆の神(イリュージア)】はもういない


いや彼はこうなる事を予見していたのだろうか....


 反逆の神(イリュージア)は八神を同時に相手取っても戦える程強く、戦闘に長けていた。戦争には勝利したものの、激しい戦いにより深い傷を負った神々は決断を迫られていた。それはおよそ人の理解できるものではなかったが、人と神とでは当然の事なのかもしれない。各々の統治する国に戻った八神は自国の民から一人を選別し、その者に王となり国を治めるよう言い渡し己の能力ちからの一端を与えるとその事を国民に告げた。そして最後に自分の神意を王となる人間に伝え残すと、自らは浮遊する漆黒の巨石へと姿を変え永い眠りについた。その宝石の様な光沢を放つ神の巨石は【神柱石オルタル】と呼ばれるようになり、ほぼ(・・)全ての大陸で国の中枢となる都市を神柱石オルタルを中心として築き、その中枢都市は神々の戦いが物語のように語られるほど長い年月が過ぎても、神の在る場所として神都しんとと呼称される事もあった。


 ベルキア王国 / 王都 ヴァルハン


 魔導大国ロダ / 魔法都市 ウルカ


 永世中立国オルデラ / 商業都市 カルビナ


 聖ミネルヴァ神国 / 聖都 アラトリア


 バルト帝国 / 帝都 グラ・ザルバトラス


 閉鎖国家ジンゼン / 神都 ジゼル


 レイアード大陸 / 移動都市 グスターン


 カイレン連邦 / 悦楽の都 ユリアナ


八つの大陸に神々の名を冠した八つの神都、国を統治するのは神より能力を与えられし人の王、その身体には【神印アルカナ】と呼ばれる紋様があり、ただ一つ聖ミネルヴァ神国を除いて代々、神の能力ちからと共に血族の一人へと受け継がれていった。


 その能力ちからの一端を残し神々は永い眠りついた。世界レヴァリスと人が戦争で変わり、神から王へと国のあり方が変わった。神々の思惑とは逆に時の流れで全てが変化していく世界、【反逆の神(イリュージア)】が望んでいたであろう世界



破滅と言う名の時計は変わらず時を刻み続けていく...



誰にも気づかれる事なく、静かにゆっくりと...ゆっくりと...


そうして二千年余りの時が流れていった。



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