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第6話 黒竜 2


我の名前……。

名前は無い。

我の主である姫さまは、我を黒竜と呼ぶ。


「我はお前を食料とするために助けた訳ではない。

 たまたま水を飲みに川に近付いたとき、お前を見つけだけである。

 そこでそのまま放っておけば他の魔物の餌か、力尽きて死を迎えたであろうお前であるが、

姫様に命じられているので、命を救ったまでである。」


我は目覚めた少女に話かけた。

その言葉に、


「姫さま?」


と少女は驚いたような声を上げた。


「むぅ……失言であった。

 気にするな。」


揚げ足を取るでない……。


「娘よ。何故このような地にいる?」


「娘って……。

 私の名前はターニャ。

 部族の弓戦士。

 なぜこの地にいるのかと聞かれれば、私の親達が戦に敗れ国を追われて海に出てこの陸にたどり着いたから。」


「そうではない。

 娘、いやターニャよ。

 お前よりもはるかに強い魔獣と呼ぶ生き物が多い森の奥深くに何故いるのかと聞いているのだ。」


「住める場所を探し、村を作ったのですがとても強い魔獣に襲われました。

 そして森の中に入り、私達は身を寄せ合って暮らしていましたが、戦える仲間と食料を求めていたときに、再び魔獣に出会い戦となり、仲間達は……。」


 ターニャの目から一筋の涙が落ちていた。


「長が倒され仲間がばらばらに逃げたところで、私は崖の上に出てしまったのですが、運悪く魔獣が私のところへ来てしまい、恐怖のあまり崖を飛び降りたのです。」


「ふむ。

 命が助かっただけ運が良いのか。

 ところで仲間の元へ戻りたいか。」


「仲間の元へ戻りたいかと言われれば戻りたいです。

 ですが、命を助けていただいた限りは、この命はあなたのもの。

 それが部族の決まりです。そのため、この命をあなたに捧げます。」


ターニャは、そう言うと両手を顔の前に置き頭を下げた。


「顔を上げよ。

 お前の命をもらってどうしろと言うのか。

 折角助けた命を喰らえと言うのか。

 無駄なことを……。

 そんなことよりも仲間のところへ戻りたいのなら戻れば良い。」


「そんなことって……。

 私の部族にとって命の義は、命で返すものと決まっているのです・

 一番尊い決まりです。

 ですから私はあなたの物です。

 この身を食すと言うのでしたら、どうぞお食べください。」


ターニャは目を閉じる。


「人を食すことに興味は無い。

 仲間の元に戻れ。」


「方向もわかりません。

 それに私の力では戻れません。

 きっとたどり着く前に魔獣の餌になります。」 


「ふむ。それでは仲間の近くまで送ってやろう。」


◇◇◇◇◇


我の足元には体長十メートル程の牙虎サーベル・タイガーの死骸がある。

そして我の前にひざまずいているターニャ他、部族の面々。

さらにその辺りには二~五メートル程の体長の牙虎の死骸が転がっていた。


部族の長を筆頭に、部族の命を助けた黒竜を竜神とあがめた。

そして庇護を受ける対価として、黒竜が失った眷属の代わりに情報を集める手伝いを行うことになった。


これにより、黒竜の保護を受けた村が魔の領域内に作られることになる。


ターニャは生涯、黒竜の巫女として黒竜と供に生きた。


ターニャが亡くなると黒竜は村近くの洞くつで眠りについた。


黒竜が眠りについて百年が経過した頃、黒竜の加護が切れ、村が魔物に襲われた。

異変に気付いた黒竜が目覚め、力を振るい村を魔物から救った。


黒竜に巫女を捧げていないために魔物に襲われたと思った村人たちは、新たな黒竜の巫女を選び、黒竜の元へと嫁がせた。


◇◇◇◇◇


それが幾度か繰り返され、現在……。


目覚めた我のところに、供物とともに新たな巫女が献上された。

どことなくターニャに似た雰囲気の娘。

名前もターニャと言った。


そのとき、我は天空から何かが落ちてくるのを感じた。

天空から力が落ちてきていることを見つけた。


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