第3話 能力
「今、最後になんか言ったよね?
笑顔でごまかしてるけど、ぼそっと言ったよね。」
「え~~言ってないよ。」
創造神アハティスの顔は笑顔のままだ。
「ちっ……。」
舌打ちしてるし……。
聞こえてるよ。
「で、異世界物の多くはここでチート能力をもらえることになると思うけど、俺も何かもらえるのかな?」
俺は中学生くらいからライトノベルを読みまくり、社会人となった今も愛読書になっている。
その中で読んだ本にも異世界転移物は多く、その多くがチート能力を神から与えられている。
まあ、中にはチート能力ではないものもあるが……。
「話が早くて助かるけど、どんな能力が欲しいの?」
創造神アハティスが聞いてきたので、これ幸いと、俺は自分で考えていたチート能力を話してみることにした。
「普段の生活では、会話が成立するようにして欲しい。
後は鑑定かな。
それとチートして良いなら、元の世界の情報を得る方法があるとうれしいかな。
情報は大事だからね。
異世界知識検索術とかさ。
それがあると普段の生活する知識も得られると思うんだ。
ああそれと、身を守るためには世界最高の防御力が欲しいです。
さすがにもう一度死ぬのは……。」
「剣による攻撃力や魔法の力とかはいらないの?」
「魔法があるなら欲しいけど、力があると戦争とか巻き込まれない?」
「力がないと守れないものもある世界よ?」
「じゃあ、力が欲しいです。
魔法でも剣でも……。
それとは別においおい、必要に応じて能力が追加できればうれしいな。」
「それ全部だとあたし並みの力が欲しいってこと?」
「それだけあったら、神ですよね。
なので、そこまでは求めていませんよ。
好きなようにとは言え、こちらの世界で暮らすと言う目的があるのですから、会話や鑑定、知識は必要だと思うのです。
防御力については、死にたくないので最高のものが欲しいです。
攻撃力は、まあ、魔素があるってことは、魔法が使えるんですよね。
悪意を減らせるのに役立つ程度であれば良いですよ。」
「き……聞こえていたのね!」
創造神アハティスは一瞬かたまって、でもすぐに気を取り直して、思い出したかのように能力について語り始めた。
「まずは言葉と文字ね。
そうね、自動翻訳能力ってところでどうかしら。
あなたは相手が話している言葉や念和、こちらの世界の言葉で書かれた文字のすべてを理解できるようになるの。
あなたの言葉やあなたからの念和、それにあなたが書いた文字は、あなたが伝えたいと願えば言葉も通じ、文字も読めるようになるの。
伝えたいと願わない相手、つまりはあなたが望まない相手には言葉も文字も通じなくなるの。
ただし言葉や文字が理解できない相手には、言葉も文字も通じないので気をつけてね。
ああ、そうそう。
呪文などの力のある言葉の一部はあなたが知らない言葉なので、変換できないでそのまま聞こえたり書かれたりすることになるわね。
次に、鑑定は万物鑑定能力ってところかしら。
能力を数値化したり、詳しい内容を知ることができるようになるわ。
心のゆらぎとかは数字に出ないことも多いので、数字を信用しすぎると危険なこともあると思うの。
それに相手がなんらかの方法で鑑定ができないようにしている場合には、鑑定防御の存在を明確にした上でその防御の力を打ち破れた分の情報だけを知ることになるわ。
そして、異世界知識検索術。
これはあなたの元の世界の知識、インターネットと言ったかしら?に、魔法によって脳波をつないで、言葉を検索することができるようになるの。
脳波でつなぐので知りたい言葉で検索をするとその言葉から脳の中に文字が浮かんでくるって感じかしらね。
出来れば単語からの検索を推奨で。
あまり長い文書の検索は難しいかもね。
防御力はやっぱり特訓よね。
最終的には世界最高峰にしてあげるわ。
でも世界最高峰って言っても、結局は何でも大丈夫という訳ではないから気をつけて。
防御力を0にする武器とかあったらどんなに防御力が高くてもおしまいよ?
攻撃力は武器操作も魔法も知識は与えるわ。
やっぱりこれも特訓あるのみね。
知識からどうするのかを自分の好きで考えてもらうことになるわ。
そうそう、生活魔法やアイテムボックスは必要よね。」
俺はその言葉に相槌をうつことしかできなかった。
「それよりもまずは体よね。
新しい体を作りましょうか。
年齢はいくつくらいがいいかしら?
これから知識を覚えることも考えると6歳くらいかしら。
前のおっさんではなくて可愛らしい男の子の姿で良いわよね。」
創造神アハティスは楽しそうだ……。
なんやかんやで体ができあがる。
そして創造神アハティスの力で、俺の魂とその体は結合した。
「武器は体の一部として使うのよ!
魔法はイメージよ!」
特訓の度に女神達から言われた言葉だ。
武器の扱いを女神ナティーに。
弓の扱いを女神ハリュイルイに。
癒しの魔法を女神サーシャに。
大地の魔法を女神タラミラに。
攻撃魔法を女神マクロシアに。
武術と肉体強化の魔法を神龍カルミルアに教わった。
その甲斐があってか俺は魔法を覚え、また数種類の武器を使った戦闘を覚えた。
それに、この世界の基本となる魔素と四大聖霊のこと。
そして世界のことを学んだ。
四大聖霊は、火水風土の四種二体ずつ、八体の聖霊のことだ。
そして、魔素は魔法のおおもとになるエネルギーのことだった。
創造神アハティスは星を生み出し、四大聖霊王の力で星を育てた。
そして四大聖霊の力で命を生み出した。
それがこの世界に伝わる創星記。
創造神アハティスの話では、真実らしい。
魔素は今も世界中にただよっている眼には見えない力。
俺も魔法を使えるようになってからは、魔素が濃いとか薄いとかを感じることができるようになっていた。
生物は魔素によって進化していて、かなりの強い魔獣も存在している。
一応最強の魔獣は、神龍の配下である火、水、風、土、氷、黒の六竜らしいけど、それに勝るとも劣らない力を持つものも生まれているらしい。
もちろん六竜は女神達に絶対服従を誓っているとのことだ。
世界には人型種族がいるんだけど、その種類は多く世界各地に国や村を作って暮らしているらしい。
小さいながらも種族や国同士の争いもあるらしいけど、魔獣の脅威と戦っているらしいからとても大きな戦争とかはここ千年起きていないらしい。
また、人型種族の多くは魔素の扱いがあまり得意ではないらしく、一部を除いて魔獣の領域に立ち入ることが困難であるらしい。
魔獣の領域に住む者、魔獣の領域を切り開いた者、冒険者として暮らす者。
それらは数少ない例外であるらしい。
魔獣は世界中の至る所に存在する魔素の強い森などに住み、その領域からは滅多に出てくることはない。
魔獣が領域から出ることになるのは、領域の王が死した場合や領域内に魔獣が増え、領域の王が領域を広げるのを命じた場合や領域が切り開かれ居場所がなくなった場合、人型種族に攻め込まれ報復に出る場合などに限られる。
人型種族にしろ、魔獣にしろ魔素を体に取り入れて、体を強化したり魔法を使ったりしている。
それがこの世界の常識である。
そんな学びが楽しくて女神たちの元での修行は数年続いた。
そして四年の月日が流れ、俺は十歳になっていた。