第9話 冬が来た
更に数ヶ月が過ぎ冬が来た。
この土地の周りを囲む火口の頂は白一色に染められ、雲が流れ、雪が舞うように吹雪いていることから強い風が上空には流れていると思う。
この土地は巨大なカルデラの中にあり火口底に広がる盆地に位置し、温暖な気候で雪が降ることもなく、地熱の温度が高いのか木々も緑色をしており、そこまでの気温の低下を感じることも無い。
田は二度目の実りを迎え、畑もいろいろな作物が採れた。
もちろん、畑には、元居た世界の知識でいろいろと栄養素を混ぜた。
ぶっちゃけ言うと、魔法があると楽になってすごい!
何がすごいって?
例えば土。
畑にしない土からリン、窒素、カリウムを分解して取り出し畑に混ぜる。
栄養満点な土地ができた。
例えば、日本人大好き、味噌、醤油の菌類。
種麹なんかどうやってゲットすれば良いのかわからなかったけど、米を口に含んで吐き出して放置しておいたら口噛み酒ができるのは知識として知っていた。
なので、大豆や米で口噛みして放置して置いたものでアルコールになったものから、菌類だけを分解して瞬間冷凍。
また麹については、異世界知識から稲麹と言うのを知ったので、稲穂を鑑定しまくって稲麹を見つけた。
後はその菌を培養して異世界知識をフル活用して種麹を作る。
もちろん専用のクリーンルームを魔法でつくり、さらに作業は魔法で簡単、簡潔に。
条件をメモしておき、何種類も作ったらちょうど良さそうなものを鑑定して選定して、良いできのものを大量生産した。
例えば肉や魚。
保存するために岩塩を探索の魔法で見つけ塩漬けにした。
それだけではなく燻製にも挑戦した。
例えば鉱石。
金、銀、銅、鉄、コバルト、ニッケル……探索の魔法によりいろいろな金属の鉱脈が見つかり、それら全てをインゴットにした。
その途中でダイヤモンド、エメラルド、ルビーなどの宝石の原石も手にいれた。
魔法を教えてもらって応用できるようになっておいて良かった。
食料自給率も上がり、余剰食物も出た。
余剰食物を入れるために高床式倉庫を作った。
鉱石、宝石は異空間倉庫に投げ込んでいる。
鉱石が発見されたことにより、これまでの銅や木製だった武器や農具を鉄器へと強化したことによって部族の強化もできた。
綿を育て綿糸にし、それで衣服を作った。
村の人達は、わずか半年ちょっとで俺がいなくても、生活ができるようになったと思う。
だから俺はみんなを集めて言った。
「山の雪が溶けたら、世界を見る旅に出る!」
と。
案の定、村の人達からは反対にあった。
が、黒竜であるポチを残して行くので、魔獣に対する攻守は問題ないと説明した。
それにみんなの力も育っているので不安はないことと、
「たまには帰って来るので、この地を守っていて欲しい。」
と言うことを伝えた。
そうしたらこの地を守る交換条件として、ターニャを一緒に連れて行くことを約束させられた。
ターニャは俺が知らない間に、黒竜の巫女から、俺の巫女になっていたらしい。
解せぬ……。




