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ケモ耳娘妄想しました

あずきと別かれた後、駅についた俺だが、不幸なことに電車が少しばかり遅れてしまい結局ぎりぎりの出勤となってしまった。

しかし、何故あずきはあんなに逃げるように走り去ったのだろうか。

急用か?いや、彼奴に任せたのは家事くらいだし、急ぐほど大事な用はないはずだ。

なら、漫画か?漫画が読みたいから走って帰ったのか?だが、ここ数日間の行動的に、彼奴がそんな礼儀がなってないような事をするとは思えない。彼奴のテンションの高さは異常だが、礼儀作法に関してはしっかりしている。

じゃあ何だ?あれか?色恋い沙汰か?俺惚れられちったか?


「……っは。俺はなに考えてんだよ。クソ童貞が。いい年こいて思春期真っ盛りとか笑えねぇぞ」


誰にも聞こえないような声で呟き、自虐的な笑みを浮かべる。

たく。ケモ耳娘で脳内妄想とか、我ながら虫酸が走るぜ。


「あの、どうしたんですか?全然進んでいませんが、もしかして具合が悪いのですか?」


不意に背後から声がかけられる。

振り返ると、黒のスーツに同じく黒のタイトスカートを身につけた女性だ。その格好だと大抵の人からは自然にクールさがにじみ出てくるが、この人は全く違う印象をしている。

胸元の開いたスーツは白いワイシャツ越しに豊満な胸を主張し、ある意味大人びているのだが童顔でさらに低身長、ポニーテールと言う格好からは大人の女性に憧れて背伸びをしている少女と言う印象しか与えてこない。

そんな少女の立ち位置は、俺の上司に当たる。何でも、高校卒業と同時に正規雇用という実績を持ち、入社二年目、つまり今年には課長という立場をもぎ取ったのである。

どこにでも居るんだな、天才って。

と言うか、周りの男共(上司を含む)からの視線が怖いのだが。


「あ、あの、もしかして集中してたのですか?だとしたら、私は邪魔をしてしまいましたか?ふぇぇ、上司失格ですぅ!」


無言を保っていたら、涙を目頭に溜ながら膝から崩れた。


「か、課長、すみません!色々と考えていたらその……」


「やっぱりです……。私は大切な部下の邪魔を……」


俺が慰めようとして声をかけるが、台詞の途中で割り込まれる。

どうしてこんな人が課長の座に付けたのだろうか。


課長を落ち着かせたときには既に昼時になっていた。

俺は室内に居づらい雰囲気を作ってしまったので同僚と屋上のベンチに避難。隣に腰をおろし、弁当を広げる。


「お、今日は普通なのな。さすがに昨日みたいに身を犠牲にしたボケはかまさないか」


「うるさい」


ハートマークについてはあずきからの仕返しの意が込められていたはずなのでもう無いだろう。

談笑を交えながら弁当を食べていると、同僚が不意に真剣さを帯びた声で呟いた。


「なあ。朝から思ってたんだが、お前今日おかしくないか」


「ふぁっ!?」


思わぬ不意打ちに、口に運ぼうとしていた卵焼きが弁当に落下する。


「……やっぱり何かあったのな。女か?」


く、間違っていないため強く否定できない!

しかし、何故こいつはこんな時に鋭いんだ!?


「て、適当にヤマ張ってみたんだが、無言は肯定って事かよ?」


「お、お前謀ったな!?」


そこまで言い、後悔した。こうも大げさな反応をしてしまえば、あらぬ誤解をされる可能性が大きい。


「なるほどなぁ。女だってんなら、昨日の弁当も今日の遅刻ぎりぎりの出勤も納得いくもんな。今朝の挙動に関してはよく知らんけど」


同僚はケタケタと笑いながら飯を口に運んでいく。

まあ、こいつになら言ってもいいかもしれないな。今、俺が親しく話せる少ない友人だし。


「……実は、女の子と同居してるんだけど」


言葉を放つと同時に同僚は笑顔のまま硬直し、米をつかんだ箸を落とした。

……やべぇ、余計なこと言ったかもしれない。

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